フランスの地中海沿い、といっても 
 ニースやカンヌなど有名な観光地が連 
 なるコート・ダジュール(紺碧海岸) 
 ではなくスペインに近い地方は、昔か 
 らカタルーニャ人の居住地だった。  
  フランス最南端の都市ペルピニャン 
 からスペインとの国境をなすピレネー 
 山中の独立国アンドラへの道は、そん 
 なわけで、今なおカタルーニャ人の住 
 む集落を縫うようにして走っていく。 
  プラタナスの老木が立ち並ぶ並木道 
 を進み、間もなく収穫の時期を迎える 
 葡萄畑を抜け、雪溶け水に白く濁った 
 急流に沿って高度を上げていくと、不 
 意に、行く手に石積みの城壁が現われ 
 た。最初はただの城跡に見えたが、ク 
 ルマを停めて近づくと、中に集落があ 
 ることがわかった。         
  ヴィリュフランシュ・ド・コンフラ 
 ン。自由都市という名を冠した小さな 
 集落だった。フランス、スペイン両大 
 国の侵略に抵抗し、民族独立のために 
 闘った歴史を持つ城塞都市だ。    
  風がぱたりと止んだ夏の午後、城壁 
 内にはカタルーニャ人よりも観光客の 
 姿が目立っていた。けだるく平和なけ 
 しき。その中で、カタルーニャ語を含 
 む各国語で描かれたレストランの看板 
 だけが、静かに、この地の複雑な歴史 
 を語りかけていた。         

撮影地:
Villefranche de Conflent
(フランス・北カタルーニャ)



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