今、鈴鹿のプレスルームにいる。この本より先に出る臨
時増刊『鈴鹿8時間』の取材中なのだ。ボクがいるのはコ
ントロールタワー下(グランドスタンドから見て表彰台の
右隣)にあるインターナショナルプレスルームと呼ばれる
部屋。となりではスペイン・ソロモト誌のカメラマン兼ラ
イターのジャンペレが、バルセロナの編集部から送られて
きたファックスを見ながら、マックのパワーブック150
に向かって原稿を打っている。
ボクの1つ前の机には、プレスルームには珍しく、デス
クトップの富士通FMタウンズ2・フレッシュTVとマッ
キントッシュ・クアドラ950がデーンと構えている。ま
わりにはA4カラー・フラットベッドスキャナーやプリン
ターなどが所狭しと並べられ、この机だけはまるでどこか
のオフィスのようだ。
それらのデスクトップ機の前に座っているのは、日本最
大手の商用パソコン通信ネットワーク・ニフティサーブ内
のオートバイフォーラム(FBIKE)の運営メンバーだ。
彼らは、オフィシャルリザルトやプレスリリースをはじめ
ピット、パドック、観客席、サーキットランド、駐車場な
どで撮った写真や自らキーボードを打ったレースレポート
などを、ニフティサーブを通じて会員に提供するという新
しい試みのためにプレス申請し、プレスルームにOA機器
を持ち込んだのだ。
港区青山にあるホンダ本社のショールームにもマッキン
トッシュのクアドラ950が2台とカラーモニターが2台
それにカラーインクジェットプリンターが運び込まれ、ニ
フティサーブのオペレーターがFBIKEにアクセスし、
次々とデータライブラリーに登録される文字や画像データ
をダウンロードし、モニターに表示したりプリントして、
集まったお客さんに提供することになっている。
文字データはともかく、デジタルカメラで撮った映像が
画像データとして登録され、それをダウンロードしてプリ
ントするまでの時間は最短約5分。何だ、TVだったらリ
アルタイムじゃないか…、ということなかれ。新聞に載っ
ている写真の多くは、撮影後、現地でフィルムを現像し、
それをスキャナーで読み込んで画像データに変換し、電話
回線で送ってから製版されるのだから、少なくとも、カメ
ラからフィルムを抜き取り、現像器に入れて水洗、現像、
定着、乾燥などをする時間のぶんだけ、デジタルカメラの
ほうが速いのだ。
それに、TVや新聞とは違い、ホンダ本社のショールー
ムでオペレーターがしているのと同じことを、ニフティサ
ーブの会員で、FBIKEに登録している者なら誰でも簡
単に、自宅に居ながら、好きな時間にできるのだ。この号
の発売日(8月24日)以降でも、FBIKEのデータライ
ブラリーにはこのときのデータが残っているはずだから、
興味があれば覗いてみてほしい。
ついでの話になって申しわけないが、実はこのプロジェ
クトを後援するニフティ社は、TEAMヴァイタル&カン
ズの福田照男/長谷川嘉久組のスポンサーでもある。FB
IKEの会議室(会員の発言を登録する部屋)には、8耐
に向けての準備中のレポートが福田照男の名で登録されて
いるし、それに対するコメントなどもある。これらもまた
会員なら誰でも、データのダウンロードと同様(いや、そ
れよりも本当は簡単)に読むことができる。
ついでに言うと、ボクがGPに取材に行ったときは、デ
ルタ・トレというGP全戦の計測とデータ管理をする会社
からデータをもらい、その一部を、現地からタイムネット
(国際的な公衆パケット交換データネットワークのひとつ)
経由でFBIKEの会議室に登録している。
元をただせば、原稿を書いたり保存したりするのに便利
で買ったコンピューターと、書いた原稿を編集部に送るの
に便利で始めたパソコン通信だったが、これはこれでオー
トバイいじりに負けず劣らず奥が深いのだ。
フロッピー1枚あれば、GPのフリー走行から決勝まで
の全クラス・全ライダーの全ラップタイム、区間タイム、
最高速、ラップチャート、ポイントランキングなどのデー
タをもらって保存し、必要なときに読むことができる。
いろんなチームのリリースがフロッピー化されるのは近
そうだし、そのうちプレスルームにLANが張りめぐらさ
れ、自分のコンピューターをつなぐだけでいろんな情報が
得られるようになるだろう。デルタトレのデータは、来年
からインターネット経由で読めるようになりそうだし、マ
ールボロは、すでにその種のサービスを始めている。
どんな分野でも、そこで仕事したり遊んだりするために
は、コンピューターと英語の勉強が欠かせないと痛感する
今日このごろである。
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