カーブを抜けると、いきなり視界が開けた。 |
忽然と姿を現わした瀟洒なホテル クレルモンフェランの先でオートルートを下りた。 どこかに行くアテはまったくない。 今日、明日の2日間で、パリからバルセロナまでの 1000kmちょっとの区間を移動すればいいから 時間にはずいぶん余裕がある。 新しく完成したオートルートに車の流れを奪われたのか 並行して走る一般道[N9]を取り巻く景色は 午後の光の中に惰眠をむさぼっているように見えた。 イゾワール(Issoire)やサン・フルール(St. Flour)といった フランスらしい名前の小さな街を通過すると 道は徐々に曲がりくねり 標高は低いが、ふところの厚い高原に登りはじめた。 夏のヨーロッパでは、クルマは断然サンルーフ付きに限る。 今日はもちろん全開だ。 ついでに運転席側の窓も全開にし ドアに肘をかけてフレンチ気取り。 ときおり、うぐいすの鳴き声が聞こえてくる。 |
宿泊施設は星2つのツーリストクラスだが…。 |
フランス人は英語がじょうず? ホテルの建物は、真ん中がレセプションで 右側がレストラン、左側がカフェだった。 カフェにはテラスがあり、森に囲まれた湖が見える。 地図で調べると、大西洋に注ぐガロンヌ川の支流・Lot川の水源だ。 土曜の午後の小学校のようにがらんとしたカフェに入ったボクは そこにいた愛想のいい兄ちゃんに 「カフェノワ グランデ スィルヴープレ」と注文した。 「ウィ ムッシュー。スピーク イングリッシュ?」 あはは…。それは都合がいい。(^_^) 英語が通じるとわかって ボクの気持ちは泊まるほうに大きく傾いた。 コーヒーを飲みながら部屋代を聞いたら200フランだった。 即、部屋を見せてもらうことにした。 田舎のホテルにありがちなアンティークムード漂う部屋。 ベッドも、いかにもフランスの安宿的な 仰向けに寝ると猫背になりそうなものだった。 電話は…? と、見ると、ちゃんとしたのが備わっている。 ちょっと早いがチェックインした。 |
味も、眺めも、サービスもマルのレストラン |
午後8時半、レストランに入った。 そんなに腹は減っていなかったので軽い食事にしたかった。 メニューを見ると、80フランで メインディッシュが1皿のコースがあった。 迷わずそれにした。 飲み物は、例によって地元のワインだ。 いつも、これを頼むのに苦労する。 ドイツでは「ヴァイン・アウス・ディーザーゲーゲント・ビッテ」 …で通しているが、フランスでは何と言うのか忘れてしまった。 試しに「ローカルワイン プリーズ」と言うと 「White one or red one?」と聞き返された。 ウェイトレスのお姉さんはボクより英語が達者だった。 オーリリャック風ディナー ここCantal県中心地は、湖の向こうのAurillac だ。 メニューにはナントカのオーリリャック風というのが多い。 ボクが頼んだ80フランのコースのメニューは アントレー2種、メイン2種の中から好きなほうを選べる。 アントレーはオーリリャック風サラダ メインはオーリリャック風ステーキにした。 |
壁には各種旅行団体の推薦プレートが…。 |
しばらくしてやってきたオーリリャック風サラダは 大きな皿からはみだしそうに、青々としたレタスが盛られ その上に、小さなサイコロ形に切ったブルーチーズと まるごとのクルミの実をどっさり乗せたもの。 ペパーミントグリーンのドレッシングはピリッと辛く 心地よく食欲を刺激する。 続いてメインディッシュがきた。 ヨーロッパのレストランとしては異例の早さ。 200gくらいのステーキに、これといった特徴はない。 付け合わせは、焼き茄子と焼きトマトとフライドポテトだった。 細かく刻んだ焼き茄子は、まるで何かの佃煮のように見えた。 焼き茄子以外、どれもとても美味しかった。 次はデザート、じゃなくて フランスでは何と言うのか忘れてしまったが、最後のコースだ。 メニューには『チーズまたはデザート』と書いてあった。 となりの席の中年夫婦は、そのチーズをパンに塗って食べていた。 ボクは、もちろんデザートだっ! いろいろあるが、大好物のクリームキャラメルを頼んだ。 出てきたのは、直径12cm、高さ6cmくらいのカスタードプリン。 タマゴがしっかり入っているのだろう 底に、目玉焼きを作ったときにできるような 卵白が固まった薄い膜ができていた。 味は…、シャルルドゴールのなんかと比べちゃ失礼だ。 最後にコーヒーを飲んで、この日のディナーは終わった。 フランス人のお姉さんに「メルスィ〜 ムッシュ〜」と言われるのは 何度聞いても気分がいいものだ。(^_^) |
このときのアシはフォード・モンデオ。 |
バターの他、パンにつけるものは アプリコットジャムしかなかった。 ドイツと比べるとかなり見劣りするが、しかたない。 ミルクをたっぷり入れたコーヒーと 焼きたてのパンは、さすがに美味しかった。 部屋に戻って荷物をまとめた後 レセプションで精算すると アクセスのためのリヨンやトゥールーズはいいとして スペインに何度も国際電話をかけたのに 電話料金のトータルは37フランにしかなっていなかった。 しばらくホテルのまわりの景色を撮り 兄ちゃんと姉ちゃんに出来損ないのフランス語であいさつをして まずは湖に沿って走りだした。 Chaudes-Aiguesへの道 ホテルから延々と下った道が湖面に達するあたりに 観光バスが何台も停まっていた。 脇を見ると、湖岸の林の中に、風格のあるホテルが見えた。 ホテルの背後には、かなり大きな遊覧船が停泊している。 |