18 アングロ人の散歩道


6月19日。
猫背ベッドだったので寝苦しかったが
朝はちゃんと7時半に目が覚めた。
手動ドアのエレベーターで1階に下りると
宿のマダムが「プチデジュネ ナントカカントカ…」と言って
裏庭に案内してくれた。

まわりを白い壁で囲われた、小さな庭だった。
壁にはつる草がからまり
見たことのない紫色の花をつけている。
ここでも、やはりフランスふうの朝食だ。
どうやら、泊まり客の半数はイギリス人の団体さんみたいで
覚えたてのフランス語をおもちゃにして遊んでいる。

中庭のテーブルは、客の数の半分もなかったので
早目に朝食を切り上げて表に出た。
海岸通りの朝は
アルプスから下りてくるひんやりした空気に包まれて
昼の暑さからは想像できない爽やかさ。
ジョギングしている老人や
犬を連れて散歩しているご婦人が多い。


3月のPromenade des Anglais。
なぜかニースでは
マトモな写真を撮ったことがない。
iさんがいるから
いつでも来れるという
気の緩みが原因だろうか。
何度も行っているのだが
そういえば、カメラをブラ下げて
ニースの街を歩いたことがない。
次に行くときは
しっかりと写真を撮ってこよう。


“Promenade des Anglais”とは
アングロ人の散歩道というような意味。
昔、ニースにやってきたアングロ人は
好んでこの海岸沿いを散歩したのだろうか?
陽射しが強くなってきたので部屋に戻り
コンピュータに向かった。

こういう時間の使いかたができるホテルはありがたい。
チェックアウトは正午までだから
連泊しなくても
部屋に荷物を置いたままでかけることができる。
その気になれば、半日観光だってできる。
ま、午前10時チェックアウトだって
荷物を預けて出かければいいのだが
それとこれでは、気分の自由度に大きな差がある。
12時ぎりぎりまで部屋でねばってアクセスし
レセプションでキーを渡したときには12時15分になっていた。

パーキングから車を出し、荷物を積んで、いざ出発。
おっと、ガソリンがない!
1ブロックぐるっとまわってプロムナードに出
ビルの1階にあるガソリンスタンドに入った。

ガソリンにはいろんな種類がある。
国によって呼びかたもさまざまだ。
ヨーロッパでは、まだ
有鉛ガソリンを必要とする車も走っているから
無鉛と無鉛ハイオクの他に
有鉛ハイオクや軽油を置いているところが多い。


ドイツ語で無鉛はbleifrei。
写真のポンプは、左から順に
日本でいう無鉛ハイオク
無鉛(レギュラー)、有鉛ハイオク。
無鉛ガソリンのホースは
ヨーロッパじゅうどこに行っても
緑色に統一されているので
セルフサービスでも
間違える心配はない。
さらに言うと
無鉛のクルマの給油口は小さく
ノズルの太い有鉛ガスは
入れようとしても入らない。


無鉛はフランスでは“Sans-Promb”だ。
鉛がないという意味である。
オクタン価を示す数字がそれに続き
スタンドには“Sans-Promb 95”とか
“Sans-Promb 98”と書かれたポンプがある。

ボクは今まで“95”を使っていた。
日本でいうレギュラーってやつだ。
トヨタだって、無鉛ハイオクが出はじめた頃
“ウチの車はレギュラーで
十分な性能を発揮するように作っています”
なんてアナウンスをしていたから
(今は無鉛ハイオク指定の車種が増えている)
ドイツフォードの中堅クラスには
“95”で十分だと思っていた。

ところが、ガソリンスタンドで見ていると
もっと安物の車なのに
“98”を入れている光景をよく見かける。
こういうことに関しては異常に細かいドイツ人だって
“98”を入れていたから
性能は変わらなくても
ひょっとすると燃費が良くなるのかもしれない。
ここで初めて、ボクも“98”ユーザーになった。