50 デュッセルドルフでの昼食


アウトバーンの出口から中央駅までの道順は簡単だった。
[←Hauptbahnhof]の標識を頼りに走れば
誰だって駅にたどり着ける。
問題はクルマを停める場所。
駅のまわりをぐるぐるまわって
やっとのことで1時間の制限付き駐車スペースに空きを見つけた。
そこから“パタパタ”まではすぐだった。
最近になって改築したらしく
デュッセルドルフ中央駅の駅舎は大きく、新しく、明るかった。

パタパタの下でしばらく待つと、12時ちょうどに
目印の黄色い紙袋を持ったKさんが現われた。
デカい! 背が高いとうわさには聞いていたが
まわりのゲルマンを圧倒する巨体だ。
160cmに満たないWさんがますます小さく見える。
挨拶もそこそこに、Kさんの案内で表に出た。

「デュッセルドルフには日本人が多いですから
美味しい日本料理でも…」
Kさんはそう言うと、駅前に停めていたBMW320にわれわれを乗せ
駅を背にしてシュタイン通りを進み
日本総領事館の角を曲がった。
「ここが、良くも悪くも、日本人街と呼ばれているところです」
…なるほど、ホテル日航や日本料理屋が目につく。
Kさんの慣れた運転でホテル日航の地下駐車場に入ったわれわれは
その2Fにある日本料理屋“弁慶”に向かった。

駐車場から弁慶までの通路で会った人間の
半数以上が日本人の顔をしていた。
みんな、黒っぽい色のズボンに白のワイシャツ+ネクタイ姿だ。
日本で会ったら普通のサラリーマンなのに
こっちの食べ物や気候のせいか
在欧日本人ビジネスマンは
日本国内で見るよりカッコ良く感じる。
服装のセンスはもうちょっと何とかしてほしいが
それでも、ボクとWさんのカッコよりはこの場に合ってるから
若干の気後れを感じてしまう。

席に着くなり、昼休み中だというのに
何の抵抗もなくビールを頼むKさん。
これなども在独期間の長さの現われだろうか。
カンジンの料理は…、忘れてしまった。(^_^;
ボクとWさんが幕の内弁当みたいなヤツで
Kさんがナントカ定食だったような気がする。
前の日に日本から着いたばかりなのに
日本食が大好きなWさんは、本格的な日本食にご満悦のようす。

写真やカメラに興味のあるKさんは
職業カメラマンのWさんもびっくりするほどカメラに詳しく
そういった話が決して嫌いじゃないボクも仲間入りして
楽しい昼食は昼休みの時間を大幅に越えてなお続くのであった。

Kさんからは
奥さんを連れてチェコにドライブに行って
国境を過ぎた途端にヒッチハイクを装った商売姉ちゃんに
声をかけられて困った話
日本の休日とドイツの休日の両方が休みで
おまけにバカンスはドイツ人なみに取るようにしている話
ヨーロッパの陶器の里めぐりの話
Wさんからはヨーロッパ各地への
スキー撮影旅行の話などが次々と飛び出し
1時半ごろになってようやく弁慶を後にしたわれわれは
再びKさんの運転で駅に向かった。
駐車時間の制限を大幅に越えていたが、モンデオは無事だった。

オランダに向かうアウトバーン[A3]の入り口まで
Kさんが先導してくれることになった。
デュッセルドルフの古い街並みを抜け
15分ほど走ったところに[A3]の入り口はあった。
「またどこかでお会いしましょう」
…と、再会を約束してKさんと別れたわれわれは
一路オランダのアッセン目指して走りだした。