アウトバーンの出口から中央駅までの道順は簡単だった。 
[←Hauptbahnhof]の標識を頼りに走れば 
誰だって駅にたどり着ける。 
問題はクルマを停める場所。 
駅のまわりをぐるぐるまわって 
やっとのことで1時間の制限付き駐車スペースに空きを見つけた。 
そこから“パタパタ”まではすぐだった。 
最近になって改築したらしく 
デュッセルドルフ中央駅の駅舎は大きく、新しく、明るかった。 
 
パタパタの下でしばらく待つと、12時ちょうどに 
目印の黄色い紙袋を持ったKさんが現われた。 
デカい! 背が高いとうわさには聞いていたが 
まわりのゲルマンを圧倒する巨体だ。 
160cmに満たないWさんがますます小さく見える。 
挨拶もそこそこに、Kさんの案内で表に出た。 
 
「デュッセルドルフには日本人が多いですから 
美味しい日本料理でも…」 
Kさんはそう言うと、駅前に停めていたBMW320にわれわれを乗せ 
駅を背にしてシュタイン通りを進み 
日本総領事館の角を曲がった。 
「ここが、良くも悪くも、日本人街と呼ばれているところです」 
…なるほど、ホテル日航や日本料理屋が目につく。 
Kさんの慣れた運転でホテル日航の地下駐車場に入ったわれわれは 
その2Fにある日本料理屋“弁慶”に向かった。 
 
駐車場から弁慶までの通路で会った人間の 
半数以上が日本人の顔をしていた。 
みんな、黒っぽい色のズボンに白のワイシャツ+ネクタイ姿だ。 
日本で会ったら普通のサラリーマンなのに 
こっちの食べ物や気候のせいか 
在欧日本人ビジネスマンは 
日本国内で見るよりカッコ良く感じる。 
服装のセンスはもうちょっと何とかしてほしいが 
それでも、ボクとWさんのカッコよりはこの場に合ってるから 
若干の気後れを感じてしまう。 
 
席に着くなり、昼休み中だというのに 
何の抵抗もなくビールを頼むKさん。 
これなども在独期間の長さの現われだろうか。 
カンジンの料理は…、忘れてしまった。(^_^;  
ボクとWさんが幕の内弁当みたいなヤツで 
Kさんがナントカ定食だったような気がする。 
前の日に日本から着いたばかりなのに 
日本食が大好きなWさんは、本格的な日本食にご満悦のようす。 
 
写真やカメラに興味のあるKさんは 
職業カメラマンのWさんもびっくりするほどカメラに詳しく 
そういった話が決して嫌いじゃないボクも仲間入りして 
楽しい昼食は昼休みの時間を大幅に越えてなお続くのであった。 
 
Kさんからは 
奥さんを連れてチェコにドライブに行って 
国境を過ぎた途端にヒッチハイクを装った商売姉ちゃんに 
声をかけられて困った話 
日本の休日とドイツの休日の両方が休みで 
おまけにバカンスはドイツ人なみに取るようにしている話 
ヨーロッパの陶器の里めぐりの話 
Wさんからはヨーロッパ各地への 
スキー撮影旅行の話などが次々と飛び出し 
1時半ごろになってようやく弁慶を後にしたわれわれは 
再びKさんの運転で駅に向かった。 
駐車時間の制限を大幅に越えていたが、モンデオは無事だった。 
 
オランダに向かうアウトバーン[A3]の入り口まで 
Kさんが先導してくれることになった。 
デュッセルドルフの古い街並みを抜け 
15分ほど走ったところに[A3]の入り口はあった。 
「またどこかでお会いしましょう」 
…と、再会を約束してKさんと別れたわれわれは 
一路オランダのアッセン目指して走りだした。 
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