昼食を済ませたわれわれは 
バーゼルまでのアウトバーンを飛ばしに飛ばす。 
120km/h 制限のオランダで溜まったフラストレーションは 
ドイツに入って間もなく解消。 
自国内ではおとなしいオランダ人も、負けていない。 
ドイツナンバーのクルマに混じって 
国境を超えた途端に 200km/h 近いスピードで爆走する。 
 
フランクフルト近くで南に進路を変え 
[A5-E35]に入ってしばらくは 
ドイツのアウトバーンでも最も道幅の広い区間だ。 
片側5車線のその区間で 
190km/h+しか出ないモンデオでは 
端から4車線目を走るのがやっとのこと。 
最も中央寄りの車線は、250km/h を超えそうな 
高性能車の専用レーンだ。 
 
メルセデスのSやSLクラスをはじめ 
一目でチューニングしてあるとわかるBMWの5シリーズなど 
この区間でしかお目にかかれないクルマが 
あっという間に近づいたかと思うと 
瞬時にわれわれを抜き去って行く。 
 
真ん中から一つ右の車線は 
アウディやプジョーの上級機種、ミディアムクラスのメルセデス 
BMWの5シリーズなどが主流で 
それより遅い大衆車であるモンデオは 
彼らが後ろにいないのを確認して 
ちょっとだけ走らせてもらうといった感じ。 
しかし、そんなテストコースみたいな区間も 
ハイデルベルクまでで 
そこから先はほとんど片側2車線のままバーゼルに達している。 
 
“Reisen nicht Rasen”=旅は疾走ではない 
という標語の看板とともに 
渋滞する追い越し車線と 
空いている走行車線の絵とともに 
“und Sie?”という問いかけが書かれた 
ポスターが立っている。 
 
  
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当時のアウトバーンで 
よく見かけた『Und Sie?』ポスター。 
片側2車線の区間で 
交通量が多いときなどは 
あのドイツでさえ 
この絵のような状態になることが多い。 
しかし、どんなに追い越し車線が混み 
走行車線がすいていても 
走行車線から追い越していく 
悪質なクルマは1台もいない。 
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前者はもちろん、スピードの出し過ぎを 
たしなめるキャンペーンだが 
後者は“用もなく追い越し車線を走るな” 
といった意味合いであり 
日本の高速道路にもぜひ設置してもらいたい。 
 
シュヴァルツヴァルトに連なる 
うっそうとした森の中を抜けたかと思うと 
教会の尖塔やなだらかな山をバックに 
小麦色の畑が波打つ、ライン川沿いの 
平和なドイツの農村風景の中を走る。 
 
何度かこれを繰り返していると 
やがて右側からライン川が近づき 
まわりの畑や民家の数が減り 
替わって果樹と思しき樹木が増えてくる。 
そして、遠景の山々がしだいに輪郭を 
くっきり浮かび上がらせる頃 
アウトバーンはドイツの南西端の町 
ヴァイル・アム・ラインに入る。 
 
  
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オランダ/ドイツ国境から 
ドイツ/スイス国境に行くには 
いろんなルートがあるが 
このときは最も走り慣れた 
[A3]、[A5]を走った。 
どちらも、10〜20kmの間隔を保って 
ライン川に併走しているが 
[A3]は、なだらかなカーブと 
アップダウンが多く 
[A5]は、直線的に、ライン川と 
シュヴァルツヴァルトの間の 
農村地帯を突っ切ってゆく。 
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バカンスシーズンには 
激しい渋滞が起きるのだろう。 
何kmも手前から、赤い丸の中に黒の横棒が入り 
その上下にドイツ語で[ZOLL] 
フランス語で[DOUANE]と書かれた標識と 
赤い▽の中に“I”の文字が入り 
[STAU]と書かれた標識が現われる。 
 
さらに進むと、スイスの“高速道路年間通行料”を 
すでに払った車を左側車線 
まだ払っていない車を右側車線に誘導する標識がある。 
 
われわれはもちろん右側車線だ。 
お姉さんが近づいてきて 
30スイスフランまたは40ドイツマルクを徴収し 
フロントガラスの内側に 
高速道路のマークと年度を示す数字が入った 
5cm四方くらいのステッカーを貼ってくれる。 
これを貼っていれば、翌年の2月末まで 
スイス国内の高速道路を何度でも自由に走れるシステムだ。 
 
通行料を払うと同時にドイツからの出国とスイスへの入国が完了。 
税関の建物を過ぎたところには、どこの国境にもあるように 
ガソリンスタンド、レストラン 
インフォメーション、銀行などが並んでいる。 
売店に入って、水とおやつを買ったわれわれは 
休む間もなくスイスのアウトバーンを走りだした。 
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