6月30日水曜日。
朝6時半に、窓から射し込む朝日に起こされた。
われわれの部屋は5Fの道路側だった。
外を見ると、正面のパブリックパーキングの
向こう側は崖になっており
はるか上のほうに
何だかよくわからない大きな石造の建物がある。
ホテルの前のメインストリートは
右に向かって急な下り坂になっている。
下り坂が終わり、再び登り坂になるあたりが
一番賑やかなショッピング街らしい。
Wさんが起きたので
いっしょに食事をしながら
この日一日の戦略を練ることにした。
ホテルの1F奥にあるレストランには
どこのホテルにもあるような
セルフサービス方式の朝食が用意されていた。
甘くて小さくて軟らかいパンの多さに
“ああ、やはりここも南欧なんだな”と思った。
コーヒーは“カフェ・アメリカーノ”だ。
アメリカ的に量は多いが
濃さは日本のヨーロピアンコーヒーと変わらない。
ゆっくり食事を終えたわれわれは
「じゃ、12時にホテルで…」ということになり
“激安の国アンドラ・ショッピングツアー”の午前の部が始まった。
坂の上のほうには何もなさそうな気がしたので
二人とも、申し合わせたように坂を下っていく。
われわれのホテルを出てすぐのところから商店街が始まっている。
まだ9時半なので、半分くらいの店は開店準備中だ。
Wさんはしっかりと“靴と時計”に的を絞って
スポーツ用品店と時計・貴金属店を片っ端から覗いている。
とくに買いたいものがないボクは
しばらく彼のあとについて、値段の研究をする。
ナイキのジョーダン8は、ここでは●●ペセタだが
USAでは××ドルで
日本で買ったら**円は下らないだろう…、と
さすがにスポーツシューズと腕時計の値段には詳しい。
ホテルから500メートルほど下ったところに
T字路(というよりはト字路)があり
まっすぐ進むと道は再び登り坂になり
それまで以上に賑やかな商店街に入る。
T字路を右に曲がると
郵便局や銀行、官庁などの集まるオフィス街だ。
Wさんは脇目もふらずにまっすぐ坂を登っていき
ボクは右に曲がってオフィス街に入っていった。
オフィス街といっても、小国アンドラの小さな首都だから
200〜300メートル四方そこそこの広さしかない。
もちろん、オフィス街の中にもおもしろそうな店はある。
何だかわからない獣の毛皮でできた民芸品などを売る怪しげな店や
地元の人が毎日のパンを買いに来そうなパン屋さん
雑誌、新聞、タバコ、地図、絵ハガキを売るスタンドなどだ。
アンドラに来た証拠に絵ハガキを買ってからメインストリートに戻り
今度は何軒かあるスーパーマーケットに入った。
スーパーマーケットはどこも
酒やタバコを歩道上に並べて叩き売りしている。
マールボロが1カートンで1,000円ってのは驚きだ。
(日本で普通に買うと2,500円、ドイツだったら3,000円を超える)
5カートン買うとバッグがおまけについてくる。
中に入ると、食料品やら衣料やら、とにかく何もかもがメチャ安!
だいたい、近隣ヨーロッパ諸国の平均的価格の半分〜2/3程度だ。
ボクは1リットル瓶に入ったオリーブオイルと1足150円程度の靴下
それに0.25リットル瓶6本パックの
“Vichy Catalan”という天然炭酸水を買った。
スーパーから出てVichy Catalanを飲みながら坂道を登る。
10時をすぎ、ほとんどの店が開店したというのに
買い物客の姿はまばらだ。
タックス天国とはいえ、いわゆるブランドものの店が少なく
日用品、酒・タバコ、時計・貴金属、スポーツ用品、電化製品など
庶民的な安売りショップがメインだから
遠い国からわざわざツアーを仕立てて来る客は
少ないのかもしれない。
坂道を1kmほど登ったところで商店街は終わっていた。
ここから先は峠道になり
クルマ屋や新しい高層ホテル、住宅地を通って
フランスやスペインとの国境方面に達している。
クルマも、フランスやスペインよりは安いみたいで
アンドラでは走っているのを見たことがないような
ヨーロッパ各国のメーカーの新車が展示されている。
スペインのバスク地方と同じく、このあたりのクルマ屋は
フランスから買い付けにやってくる客を相手にしているのだろう。
ひととおり商店街を歩き終えたボクは
またウィンドウショッピングをしながら、ホテルに戻った。
Wさんはすでに部屋に戻って、買ってきたものの整理をしていた。
「昼はどこで食べましょう?」
「向こうの坂の上のほうに何軒かあったレストランにしましょうか」
…というわけで、荷物を置いたわれわれは
再びホテルを後にして坂道を下り、そして登っていった。
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