8耐に行こう! 行ってあの雰囲気に浸ろう!
(ライディングスポーツ 96年9月号)

                         
  GP取材のためにヨーロッパに来て、サーキット 
 に向かってクルマを走らせているとき、いつも感じ 
 るのは、オートバイでやってくるファンの多さだ。 
 ほどんどがリッターバイクに2人乗りをして、数百 
 キロから、ときには2千キロ近い道のりを走ってく 
 る。もちろん、高速道路でも2人乗りはできるし、 
 制限速度も普通のクルマと同じ。木曜の夜や金曜の 
 夜など、集まってくるオートバイやライダーの姿を 
 見ているだけでも飽きない。最寄りの高速の出口な 
 どでは、本当に、朝まで続くんじゃないかと思うほ 
 ど多くのツアラーたちの姿を見ることができる。  
  サーキットに集結した観客のうち半数以上は、決 
 勝日までキャンプ生活を送っている。ヘレスには、 
 サーキットのゲートの向い側に大きなキャンプ場が 
 あるし、ムジェロなどは、コースを見下ろす丘の斜 
 面全体がキャンプエリアだったりする。もちろん、 
 その他のサーキットにも必ず、近くまたは内部に、 
 キャンプをするための場所と設備がある。     
  で、そうやってキャンプをしてまでサーキットに 
 集まってくる客が、全員熱心なGPファンかという 
 と、そうではない。さすがに決勝日の昼前あたりか 
 らは観客席に陣取り、大声を張り上げたり旗を振り 
 回したりしているが、予選のときなどは、ただキャ 
 ンプ場で騒いでいたり、土産物屋を覗き歩いたり、 
 近所の街に遊びに行ったりしている。       
  こうした、レースは好きだけどストイックではな 
 く、オートバイに乗るのは好きだけど、ただ走るだ 
 けよりも遠出をしてキャンプをし、飲んで騒いで、 
 ときには暴れるのが大好きなファンの数が、そのま 
 まヨーロッパのGP観客数の多さにつながっている 
 のではないだろうか。              
  日本のレース、とくに日本GPや8耐は、このと 
 ころ、かつての半分以下しか観客が集まらない。そ 
 れにはいろんな理由があるだろうし、ヨーロッパで 
 も、昔と比べれば観客は減っている。だが、決定的 
 に違うのは、ただツーリングにやってくる人数の差 
 ではないだろうか。マニアックなファンの数自体は、
 むしろ日本のほうが多いような気がする。     
  コースやピットで行われていること自体は、どこ 
 のレースでも変わらない。問題はその周囲。観客席 
 や駐車場やキャンプエリア、さらには高速道路の出 
 口から近所の街中といったサーキットを取り巻く部 
 分に、どれだけツーリングの目的地としての魅力が 
 あるかにかかっている。             
  ライディングスポーツやサ●クルサウ●ズではな 
 い一般のオートバイ誌では、人気のない企画の代表 
 がレースものだという話を聞く。とくに、ツーリン 
 グ好きや旧車マニアなどに、レース嫌い、あるいは 
 レースに無関心な人が多いらしい。……というボク 
 自身、一歩間違うと、じゃなくて一歩も間違えなか 
 ったら、レースなどに興味を持たないまま、ただの 
 ツーリング&オートバイいじり大好きライダーに留 
 まっていたかもしれない。それが、初めてレースを 
 見に行った途端に変わってしまったのだから、サー 
 キットというところは、恐ろしく影響力の大きなと 
 ころなのだと思う。               
  オートバイは好きだけどレースには興味がない人 
 たちを、どうやってサーキットに集めるか……。日 
 本のレースを盛り上げるためには、やはり、頂点に 
 立つ8耐がしっかりしていないとダメだ。8耐が盛 
 り上がれば、GPや全日本にも波及するはずだ。  
  とくに何かがあるわけじゃないけど、オートバイ 
 好きを行こうという気にさせ、また来ようと思わせ 
 る雰囲気……。そう、GPウィーク中のヨーロッパ 
 のサーキットが持っているあの雰囲気は、たくさん 
 のオートバイ乗りが集まらなければ出てこない。  
  この号の発売から8耐決勝まで4日。まだ間に合 
 う。みんなで8耐に行こう! 8耐に行って、レー 
 ス見るだけじゃなく、いろんなところでサーキット 
 の雰囲気に浸ってみよう。そうすれば、きっとまた 
 来年も来たくなるに違いない。          
                         


MAIN MENU
雑誌リスト
前ページ タイトル一覧 次ページ