リエカからザグレブへ向かうルートは
クロアチア国内の重要幹線道路だ。
リエカ周辺の10kmほどと
カルロヴァッツから先の約50kmが高速道路になっている。
リエカの街を出、急斜面を登ると、段丘状の平地が広がり
その平地の一番奥の河原に
かつてGPが開催されていたサーキットがある。
高速道路が開通しているのは、当時も今もここまでで
ここから先、かなり標高差のあるもうひとつの斜面を登って
そこからしばらく続く高原を越え
その先・カルロヴァッツまでの約100kmは
細く曲がりくねった一般道を走らなければならない。
だが、この区間の高速道路も間もなく完成しそうだ。
標識はすでに用意され“ZAGREB”の文字がテープで隠されていたし
終点から先にも、ま新しい舗装路面が延びていた。
隣国との戦争がなければ、すでに開通していただろう。
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リエカ〜カルロヴァツ間は約130km。
同国最大の港湾都市・リエカから
首都・ザグレブに至る道は
リエカ近郊の数kmと
カルロヴァツ〜ザグレブ間が
片側2車線の高速道路で
その間は片側1車線の一般道路。
ディナルアルプスの支脈を越えるため
アップダウンとカーブはきつく
地図で見た感じよりも
実際の距離は長い。
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サーキットを左に見ながら高速道路を下り、一般道に入る。
リエカの街中では“RI”ではじまるリエカナンバーの車ばかりで
ザグレブやカルロヴァッツナンバーの車を
見かけなかったので心配だったが
この道では“RI”に混じって
“KV”や“ZG”ナンバーもたくさん走っていた。
対向車の中には、オーストリアやドイツナンバーもいる。
オーストリアナンバーは
山を越えてザグレブ経由で来たに違いない。
“だとすれば…、通行に支障はないはずだ”
やはり、紛争は、セルビアとの国境に近い海ぞいと
山岳地帯だけなのだろう。
段丘を登り、狭い山道を走っていると
道の両側の林がとぎれて急に右側の視界が開け
下のほうに、川に沿った小さな町が見えた。
町の中心には教会があり、そのまわりに民家が集まっている。
教会の尖塔と民家の白い壁が、夕日を受けて
ダークグリーンの樹海の中に浮かんでいた。
写真を撮りたくなったので
クルマを停められる場所を探していたら
うまい具合にレストランの駐車場が見つかった。
駐車場に停まっていた10台くらいの車は
みんなクロアチアナンバーだ。
クルマを停め、写真を撮ってから中を覗いたら
日曜日の夕食時間だったためか、レストランは満員の盛況。
“知らない土地で何か食べるとき
なるべくはやっている店に入る”ってのは
美味しい料理にありつくための鉄則だ。
ここで夕食をとることにした。
昼はチョコレートケーキしか食べていなかったから
食べ物のことを考えた途端、無性に腹が減ってきた。
店の奥にはテラスがあり、その下は崖になっている。
テラスに座ると、さっきの教会の塔が見える。
まわりのクロアチア人には何でもない景色だとしても
ボクは、それが見えるというだけで
何も食べないうちにここが気に入ってしまった。
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樹海の中に見つけた教会。
クロアチアは、クロアチア人が
人口の78%を占めるカトリックの国だ。
後方の山は、ディナルアルプスの
支脈の一つ・ベレビト山地につながる。
大きな木が生えず、石灰岩が転がる
アドリア海岸の山々とは違い
内陸の山は緑に覆われている。
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おばちゃんがやってきて、ボクに向かって何か言った。
もちろん、何もわからない。
ボクは、手で本を開く動作をし「カルテ?」と言ってみた。
意志は通じた。おばちゃんは、すぐにメニューを持ってきた。
おっと! クロアチア語でしか書いてない。
ひととおり目を通したが、何もわからない。
メニューをにらみつけていて、ふと顔を上げると
向こうの席の女の子と視線が合った。(^_^)
思わず頬がゆるんだが、とっさに首を傾げて困った顔を作ると
その子はボクのテーブルまでやってきて
ひとつひとつのメニューを英語に翻訳してくれた。
ゆっくりした話しかたで、明晰な発音だった。
チーズとハムのオムレツと
グリーンサラダが美味しそうに思えた。
それと「ヴァイン アウス ディーザーゲーゲント ビッテ」だ。
クロアチアに限らず、東欧諸国では
英語よりドイツ語のほうが通りがいい。
グリーンサラダと、カゴに盛ったパンがやってきた。
日本のサニーレタスと色あせさせたような葉っぱに
かなりオイリーなドレッシングがかかっただけの
ドイツ的なサラダだ。
やや間があって、オムレツがきた
これは美味い! モツァレラ風のチーズと
ハムの角切りがたっぷり入っている。
直径30cmくらいの皿の半分が隠れそうな、半月形のオムレツ。
これだけでおなかがいっぱいになった。
食べ終わって
クロアチアの通貨を持っていないのを思い出した。
おばちゃんに会計をお願いし
隣国・スロヴェニアのお札を出したら、断られた。
イタリアリラを見せたら、おばちゃんは困った顔をした。
ところが、ドイツマルクを出すと態度が変わり
うれしそうな顔になった。
10マルク札を出したら
おばちゃんはそれを持ってさっさと行ってしまった。
“釣り銭を取りに行ったのかな?”と思ってしばらく待ってみたが
おばちゃんはそれっきり、ボクのテーブルには戻ってこなかった。
ま、いいや。1マルク68円で替えたんだから、夕食代は680円。
この国としては高いが、釣りを請求するほどじゃない。
食事中、いろいろ話しかけてきたまわりのみんなにあいさつして
ボクはザグレブに向かった。
またひとつ、クロアチアでの楽しい思い出が増えた。
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