40 ウィーンの森のノヴォテル


ヨーロッパでは
お花屋さんやスーパーマーケットの店員さん
ホテルの部屋掃除のお姉さんなど
なぜか白衣を着て仕事をしている人が多い。
化学の先生が着ているような、あのダボッとしたヤツだ。
このガソリンスタンドの売店の
おばちゃんとお姉さんもそうだった。
最初にヨーロッパに行ったときは奇異な感じがしたものだったが
最近では、これを見て“あぁ、ヨーロッパだな”と感じる。

ガソリンスタンドの売店の一角で
コーヒーを飲みながらゆっくりして
“東欧の観察者”から“オーストリアの滞在者”に
気持ちを切り替えたボクは
おばちゃんたちにあいさつをしてパーキングに向かった。

人と人の“あいさつ”に関しては
ヨーロッパの中でも
オーストリアから南ドイツを通ってフランスの中部まで
つまり、アルプスの北縁あたりの緯度に位置する地域が
最もていねいだと感じる。
これらの地域では、初めての客や
ただの冷やかしで店に入った客に対しても
最後に必ず“ありがとう”と“さようなら”を欠かさない。
「メルスィ〜ムッシュ〜 オルヴォワ」もいいけど
「ダンケ」「ヴィダシャ〜ン」も耳に心地良い。


ブリュック〜ウィーン間は
アウトバーン[A4]で約40km。
Schwechat空港をすぎると交通量が増え
しばらく走ると市街地に入る。
市街地部分のアウトバーンは
複雑に分岐、合流、屈曲を繰り返すが
円の中に丸い点が入った
Zentrumマークを頼りに進めば
やがて道はドナウ運河に寄り添い
Schuettelstrasseにつながって
インナーシュタットに達する。


ウィーンに向かう[A4]は
市内から空港へのアクセス道路でもある。
空港をすぎると交通量は倍増し
その後も次々と合流する車で、最後にはかなり混雑する。
ウィーンには高速の環状道路がない。
“壁”が厚かった頃、各国のスパイが暗躍したらしい
プラター(Prater)公園を右に見て
市内に導かれたドナウ運河の左岸をさかのぼれば
アウトバーンは自然に街路につながり
インナーシュタット(Innere Stadt)に達している。


高速の環状道路がないため
アウトバーンでウィーンに入り
目的の方向に進むには
標識を見落としてはならない。
ヨーロッパではどこでもそうだが
目的地が進行方向の左手でも
右に分岐してからそこに行く場合は
標識には右向きの矢印が出ているから
自分の方向感覚に頼るよりも
素直に標識に従ったほうがいい。
(たまにはだまされることもあるが
それはそれで楽しいものだ)


市内に入って驚いたのは
走ったり道端に停まったりしているクルマの
グレードが上がっていることだ。
ウィーンは、ボクが知っているヨーロッパのどの都会よりも
メルセデス率が高かった。
さすがに最高級のSクラスはほとんど見かけないが
(Sクラスを一番よく見るのは日本の都会である)
ミディアムとコンパクトは、いっぱいいる。

上下に2本づつ赤の線(国旗の配色)が入り
都市コードと番号の間に州の紋章がついた
オーストリアのナンバーだというだけで
飾り気のないドイツナンバーのような
威圧感を感じないから不思議だ。




1990年頃から後
オーストリアのナンバーは
白地の上下に赤の2本線が入り
間に地名(都市略号)で始まる
黒文字が入ったものになった。
(それまでは黒地に白文字で
都市名ではなく州の略号が入っていた)
上の『W』で始まるナンバーは
通常のウィーンナンバー。
下の『SZ』で始まるのは
よく見かけるが、どこのだか知らない。
(TirolマークだからSchwaz?)
こっちは通常の続き番号ではなく
特に指定して取ったのだろう。
(日本でも近々、希望の番号を
取れるようになるらしい)
都市名略号と番号の間には
州名と紋章が入る。


インナーシュタットで標識を見落として道に迷ったが
適当に走りまわって[A1 LINZ →]の標識を探し当てた。
それに従って走ると、シェーンブルン宮殿の前を通過する。
このあたりには、思わずクルマを停めて泊まってみたくなるような
古めかしく、格調高いホテルがいっぱいある。
それらを眺めながら、川沿いの道を西に進むと
[A1]の乗り場にある巨大なロータリーに出た。

ロータリーに面して、ノヴォテルがある。
オーストリアに入ったときから、泊まりはノヴォテルに決めていた。
真っ昼間から遠慮なくチェックインできて
車でのアクセスが楽で、駐車場が完備していて
確かめなくても、客室の設備や雰囲気がどんなものか見当がつくから
旅情は薄いし、部屋代も安くはないが
徹夜明けの身体を休めるにはちょうどいい。
ロータリーから少し入ったところにある駐車場にクルマを停め
レセプションで「今すぐチェックインできるか?」と聞くと
「シュアー!」との返事。
“あぁ、これでやっと横になって休憩できる”