クロアチアからハンガリーに入ったところで書いたように
ヨーロッパでは、国境を越えたからといって
まわりの景色や人々の話す言葉
ときには通貨だって、急には変わらないことが多い。
ところが、ここバーゼルでドイツからスイスに入ると
それまで走ってきたドイツと
これから走るスイスとの、あまりの違いに驚かされる。
他の陸続きの国境では急変しないはずの自然景観が
スイスに入った途端に大きく変わってびっくりする。
ボーデン湖から流れ出たライン川が
バーゼルで直角に流れの向きを変えているのが主な原因だ。
ライン川に沿ってさかのぼってきた道路や鉄道は
バーゼルに来て道しるべを失い
目の前に迫る山に行く手を阻害されて四方に分散する。
アウトバーンは急に起伏の多い道になる。
川沿いの狭い土地にあるバーゼルの街中では
丘を越え、鉄道をくぐり、水路をまたぎ…、と
まるで首都高のようにカーブとアップダウンを繰り返す。
起伏が多くなるのに反して、舗装の表面は平滑になる。
ドイツに多い、継ぎ目のあるコンクリート舗装ではなく
目の詰まったアスファルトっぽい舗装になるからだ。
このスイスのアウトバーンの舗装はしかし
日本のアスファルトとはずいぶん違う。
日本の舗装はタール分の多い軟質な感じがするのに対し
こっちのは、気温の違いを差し引いても
かなり硬質な感じのだ。
色は、ドイツより濃く日本より薄い。
そして、最も違うのは、ガラスか雲母のような
キラキラ輝く物質が舗装材の中に散りばめられている点である。
アウトバーンの道路標識も、スイスに入ると色が変わる。
ドイツでは青が基調なのに対し
スイスではライムグリーンが多い。
その標識の、まずは
[↑ Zuerich Bern Luzern]方面に向かって走る。
クルマの種類もドイツとはかなり違う。
トヨタ、スバル、ホンダ
マツダ、ボルボなどが目立つようになり
メルセデスやBMWの高級車の割合は低くなる。
[← Zuerich] [Bern Luzern →]の分岐を
ルツェルン方面に進むと
道はぐんぐん山に登りはじめ
やがて1車線規制になってトンネルに入る。
トンネルを出ると、すぐに[← Luzern] [Bern →]の分岐。
ここからしばらく、高原の上という感じの土地を進む。
まわりの麦畑や牧草地は
うねうねと起伏しながら、山に向かって徐々に高度を上げ
山麓の針葉樹林に達したところで
濃淡2種類の緑色が入り組んだモザイク模様を描いて終わる。
そこから上は、黒々とした森がしばらく続き
やがて青い岩肌のところどころに
雪渓を散りばめたピークとなって空に抜けている。
実は…、ボクはスイスの田舎の景色があまり好きではない。
人の手によって美しさを保たれ
見る者に妙に媚びているように感じるからだ。
あまりに美しく、平和なため
見ていて飽きてしまうのかもしれない。
一見して“人間によって保護された自然”であることがわかるのに
それを行った人間の存在や
そこを舞台に繰り広げられた人の営みの歴史が感じられないのだ。
水槽に入った熱帯魚の美しさよりも
田圃の用水路の生態系のほうに
より興味をひかれるのと似ているかもしれない。
ベルンの市街地で、アウトバーンは一旦終わっている。
[↑ Lausanne]の標識にしたがって走っていくと
自然に街中を通り
街外れで再びアウトバーンに乗ることができる。
ベルンの町は、ドイツよりは
フランスの町に近い雰囲気を持っている。
通りの幅と建物の高さの関係や建物の外壁の色合いなどが
そう感じさせる原因だろう。
ベルンを過ぎると、道はまた山に向かう登り坂になる。
このあたりから、アウトバーンの出口を表わす標識が
それまでの[Ausfahrt →]から[Sortie →]に変わる。
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スイスに入って道なりに進むと
10kmほどで[N2]と[N3]の分岐がある。
そこで[N2]に針路をとって
南に向かうと、30kmほどで
今度は[N2]と[N1]の分岐。
ここからベルンとルツェルンを経て
ジュネーブまで[N1]は通じている。
モントルーの直前に峠があり
そこまでがライン川の流域だ。
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ゆっくり、だが確実に高度を上げていくと
手前の山の稜線のはるか向こうに
万年雪をかぶったモンブラン山群が見え隠れするようになる。
なおも高度を上げると、次第にその裾の広がりが明らかになり
やがて、眼下にレマン湖が姿を現わす。
ここから湖畔までは、久しぶりに走る
本格的なワインディングロードだ。
逆光に浮かび上がるレマン湖の湖面に向かって駆け下りて行くと
[← Montreux] [Lausanne →]の分岐。
われわれはモントルー方面に進路をとり
レマン湖を右手に見て進む。
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モントルーあたりでは
レマン湖北岸の
南に面した斜面に
ブドウ畑が広がっている。
スイスにブドウ畑があるのは
意外だったが
確かに、夏の日中は暖かく
ドイツやオーストリアに
ワインの産地があるのだから
ここでブドウが栽培されていて
不思議はない。
スイス産のワインってのには
一度もお目にかかったことはないが…
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Wさんもボクも、そろそろおなかが減ってきた。
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