太田安彦先生からの2通目の返事を紹介する前に、スパークプラグに火が飛んで、圧縮された混合気が燃焼し始めるまでに、プラグとその周辺でどういうことが起きているかを整理しておきたい。 1)容量放電:火花間隙(プラグギ ャップ)を挟んだ電極にイグニッシ ョンコイルの二次側に生じた高電圧がかかって“絶縁破壊”が起き、電気が流れやすい状態になる。 2)誘導放電:絶縁破壊により、電極間の混合気がイオン化され、抵抗値が下がった状態で放電が続く。 3)火炎核の生成:放電によってエネルギー(熱)が与えられた部分の混合気が燃焼を始め、火炎核と呼ばれる炎の玉(直径2〜3mm)ができる。 4)火炎核の成長:誘導放電による加熱/成長と、電極に熱を奪われることによる冷却/衰退のバランスが崩れ、火炎核が成長を始める。 5)火炎伝播:火炎核に接した部分の混合気に熱が伝わって燃焼が始まり、それによって生じた熱と圧力が次々と周囲の混合気に伝わりながら燃え広がっていく。 …と、大きく4段階に分けることができる。燃焼の終わりにもまた、何段階かの現象があるのだが、それにはここでは触れない。 で、太田先生の返事によると、プラグギャップの大きさが影響するのは、1)から4)までで、ギャップを広げた場合は、1)の絶縁破壊電圧が上昇し、a)エネルギーの配分が誘導成分減少/容量成分増加となる。加えて、b)火炎核形成期間における電極 |
| への熱損失が減る。 a)はデメリット、b)はメリットであり、一般的にはb)が優勢。ただ、ギャップを広げすぎると絶縁破壊電圧が高くなり、そこまで電圧を高める能力が点火系にない場合は火が飛ばず、ミスファイアとなる。 もうひとつ、容量成分の増加/誘導成分の減少により、グロー持続時間が短くなりすぎた場合は、火花が飛んでいても火炎核ができず、こちらもミスファイアと呼ばれる。 以上のようなことから、プラグギ ャップの大きさは、火炎核形成に大きな影響を持つので、単に“時間的な差”と表現するのは適当ではありません…と書かれていた。 そして“径で3mmくらいの火炎核が形成されれば、それ以降の火炎伝播は点火系の影響を脱し、混合気そのものと混合気流動依存に移行します。そこは、おおまかには回転速度依存です”…と続いている。 ギャップの大きさの違いは、単に “時間的な差”と表現するのは適当ではない(つまり、点火時期を変える以上の効果がある)が、径で3mm程度以上の火炎核形成後の火炎伝播には影響を与えていない…と理解して良さそうである。 太田先生は、さらに、私が添付したブリスクとNGK BP7ESの写真(3月17日に使用)をご覧になったうえで “混合気流動が大きく、点火プラグに対する点火時の混合気流れの主流方向が不確定であるような条件では有利であるとのこと…”とお答えのうえ、ブリスクのような沿面放電プ |
| ラグの特徴として、さらに次のように書かれている。 混合気流動が強い場合には火花放電スパーク/グロー共に流されて直線経路を飛ばず、弓形になり、しばしば放電経路が千切られて多重放電になります。そうしたとき、火炎核は電極間隙では形成されず、流れの下流側に火炎が生じます。 沿面放電式では基本的に電極間隙で火炎核が形成されるという形式ではありませんので、これに近いことになります。火炎核が、層流の球形や卵形ではなく、早くから乱流火炎らしきものであるということです。 このとき、その後の火炎伝播が急速で、燃え終わりも早期という良い効果が出る場合と、乱流火炎伝播が途中で吹き消える(この場合もミスファイアと呼ばれます)悪い効果が出る場合とに分かれます。 点火プラグの形式が大きく違えば運転のフィーリングが大きく変わるのは、このようなことに依ります。最初に述べた、同一プラグでギャップを変えるのとは格段の差があってしかるべきです。 これで私の疑問は解決した。太田先生は、早く着火し、速く燃え広がるのが良い…というふうに書かれているが、これは、私のような素人にわかりやすくするためだろう。とにかくこれで、弊害が出ておらず、フィーリングも気に入っているブリスクを、今まで以上に安心かつ納得して使うことができそうだ。 TPS対応のウオタニ・SPIIフルパワーキットとの組み合わせが楽しみだ。 |