事情によりエンジンの組み立てを明日に回したので、4月25日の最後に書いた“秘策”について、このあたりで書いておこうと思う。 当HPのリンク集(RESOURCE)に、電気粘性流体という項目があり、そこに出ている4つのリンク先を参照していただくとおわかりのように、流体の中には、電圧をかけると見かけの粘度が変化するものがあり、それらの流体は、電気粘性流体、あるいはER流体と呼ばれている。 電気粘性流体には、分散系と均一系の2種類があり、分散系というのは“ベースオイルに微粒子を混ぜたもの…”と、産業技術総合研究所のHPに書かれている。ここを読めば、もうおわかりだろう。ベースオイルに微粒子を混ぜたものが電気粘性流体(分散系)になるのなら、ベースオイルに添加剤を加えたエンジンオイル、フォークオイル、ダンパーオイルなどは、いずれも電気粘性流体としての性質を持っている…と断言できる知識も経験も私にはないが、そういう性質を(弱いとはいえ)持 っている可能性は高いと思う。 で、ほとんどの電気粘性流体は、電圧をかけると、粘度が増加する…と、産業技術総合研究所のHPに書かれており、同志社大学工学部ではすでに、この特性を利用した電子制御ダンパーの研究をしている。 |
| ところで、通常のオイルダンパーは、中のオイルが仮に電気粘性流体としての性質を持っていても、電圧をかけているわけではないから、粘度は増加していないのだろうか。 電気粘性流体の存在を知ったのと同じ頃、私はフューエルタンク、キ ャブレター、エアクリーナー、シリンダーヘッドなどの吸気経路の電位差をなくすチューニングを試しており、流体の流れによる摩擦帯電、噴出帯電などに興味を持っていた。 ダンパー内のオイルが、狭い通路を勢いよく流れたり、細い穴から吹き出したりすれば、そこにも静電気は発生するはずだし、シリンダー内でのロッドの動きによっても、摩擦帯電を起こしているのではないかと考えた。これらによって、ダンパーの固定側と可動側(シリンダー側とピストン側、リアショックでいえばフレーム側とスイングアーム側)の間に電位差が生じれば、その間にあるオイルの粘度が増加しても不思議ではない。だとすれば、両者を短絡し、電位差をなくしてやれば、粘度が下がり、動きやすくなるのではないか…。ここまでが仮説だ。 幸か不幸か、 わがXJ900のリアシ ョック(XJR1200用純正オーリンズ)は、上下のマウント部にラバーブッシュが入っており、フレームとダンパー本体の間も、スイングアームと |
| ダンパーロッドの間も、どちらも電気的に絶縁されている。また、金属同士が直接接触しているわけではないダンパー本体とダンパーロッドの間も絶縁されているから、電気の逃げ道がなく、電位差が生じる。 そこで、ダンパーロッド〜スイングアーム〜フレーム〜ダンパー本体の4点をリード線で結び、電位差をなくして(帯電を除去して)みたところ、低速作動時には明らかに動きやすくなった。それでいて、しっかり減衰が効いてほしいような状況での動きすぎは感じない。 フロントフォークにアッシュのフ ォークオイルを入れたとき、減衰力と摩擦抵抗は別物であり、摩擦抵抗の低減による動きやすさは、フォークオイルの本来の仕事である減衰力のじゃまをするものではないと気づかされたのと同じである。リアショ ックもまた、本来の減衰力を弱めない作動性の向上は、減衰が不要なときにはよりスムーズに動き、減衰が必要なときにはちゃんと効く…という、メカニズムとして望ましい方向のチューニングではないだろうか。 さっそくやってみよう…という人に、老婆心を承知でひとつだけアドバイス。アルマイトは非導電性なので、リード線の取り出しは、アルマイトされていない部分にするか、アルマイトを落とすのを忘れずに。 |