XJ900の爽快チューン
2009年3月11日 - フロントフォークセッティング(その1)ゆっくり走っても楽しめるセッティング
     
 ずいぶん前から誌面で予告していたのに、一向にレーステックのカートリッジエミュレーターとフォークスプリングを装着しなかったのは、XJ900のSTDフロントフォークのセッティングが気に入っているからだ。衝撃吸収性と路面追従性が高く、そのおかげで乗り心地が非常に良い。
 とはいえ万能であるはずがなく、今どきのスポーティーなマシンと同じようにブレーキをかけると凄まじい勢いでノーズダイブをする。実はその先に、しっかりコシのあるストローク後半部分が存在するのだが、そこまでの姿勢変化があまりにも急激なため、試乗して驚いたり、怖い思いをした人もいるようだ。

 オーナーの私は、もちろん、怖い思いはしない。いきなり強くブレーキをかけるとダメなのがわかっているから、どんなに強いブレーキングのときも常に、レバーを引きはじめてから望む初期制動力が得られるまでの間、時間にして0.2〜0.3秒ほどではあるが、フロントフォークと相談しながら、ブレーキレバーの握り具合で急激な沈下を抑えている。
 メタリカのブレーキパッドとベルリンガーのマスターシリンダーの組み合わせを選び、キャリパーのメンテナンス(清掃と給脂)を頻繁にしているのも、この部分の(もちろんそれだけではないが)コントロールしやすさを追求しての結果である。

レーステックのカートリッジエミュレーター。スプリングで押さえられたバルブの開き具合によって圧側減衰力をコントロールする。
だ。余分なことに集中力を割かず、スパッと、その時点で許容される最大制動力が得られるまでブレーキレバーが握れなければ話にならない。加速と減速を効率良くするのがラップタイム短縮の決め手だから、効率の悪い部分を削っていくのは、極めてまっとうなセッティング方向だ。
1G、乗車1G、全伸、全屈の他に、どんな走りをすればどれくらいストロークするかがわからなければセッティングはできない。 ついでに言うと、そこから先は、フロントタイヤとの相談である。タイヤの摩擦力は、あるところまで、荷重の増加とともに大きくなっていくから、荷重が充分にかからない状態で強いブレーキングをすると容易にロックする反面、しっかり荷重をかければ、低荷重時よりもはるかに大きな制動力を受け止めてくれる。
 だからここでは、握り増して前輪荷重を増やしつつ、荷重が増えた分だけ大きくなった摩擦力に合わせてさらに握り増して制動力を高め、それによってまた荷重が増える…という好循環を生かす制御が必要だ。
 話を沈下速度に戻すと、0.2〜0.3秒の短時間とはいえ、フロントフォ
ークの動きと相談しながらブレーキをかけるなどというのは、レースの世界では“あってはならないこと”
 ところが、街乗りでは、常にフルブレーキングをするわけではない。むしろそれは例外で、弱めの制動が多い。問題は、そのときにフロントフォークがしっかり沈まず、荷重の高まりが体感しにくかったり、コーナーに向かってマシンを倒し込みにくかったりすることである。
 スポーツ性を捨てる気はないが、ゆっくり走っても楽しく味わいあるマシンを目指すのが爽快チューンの目標のひとつ。低荷重時の動きやすさと高荷重時の動きすぎにくさを両立できない場合に低荷重時の動きやすさを優先するのは、私にとって極めて自然の成り行きである。
 が、ひょっとするとカートリッジエミュレーターには、これを両立させてくれる可能性があるのではないかと考え、テストに着手した。


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