XJ900の爽快チューン
2009年3月12日 - フロントフォークセッティング(その2)2段スプリングのレート計算
     
 手元にあるのは、レーステックのカートリッジエミュレーターと、同社のXJ900用推奨スプリング(単一レ
ート)である。 STDのスプリングが気に入っているから、最初にテストしたかったのはエミュレーターなのに、これを普通に(フォークシリンダーとスプリングの間に挟んで)装着すると、エミュレーターの厚さ分だけプリロードが増えてしまう。
 カラーが入っていれば、そいつを切って容易に調整できる。ところがXJ900のSTDフォークはカラーを使わず、 556mmという長いスプリングをキャップで圧縮して装着している。エミュレーターの厚さの分だけプリロードを減らす余地はない。
 そうとわかれば、全長がうんと短いレーステックの単一レートスプリングを使い、まずはそれ単独でセッティングを出し、続いてエミュレーターを装着すればいい…と、このときはけっこう気楽に考えていた。
 そうと決まれば、まず、2種類のスプリングのレートを求め、それとともにSTDスプリングを入れた 現状のフォークの乗車1Gにおける沈下量を測定し、それらを元に乗車1Gの荷重を求め、レーステックのスプリングに何mmプリロードをかければ STDと同じ乗車1Gの沈下量が得られるか(乗車1Gの姿勢を同じにできるか)を計算しなければならない。
 レーステックのスプリングには、もちろんレートが表示されており、XJ900用の推奨は 0.8kg/mmである。だが、2本のスプリングを比較し、乗車1Gの姿勢を合わせるのに、片方に公称値、もう一方に計算値を用いるよりも、両方とも計算値を使ったほうが良さそうだと考え、まずは計算しやすい単一レートのレーステック製のばねレートを求めた。
 使った計算式は以下のとおり。

    横弾性係数×線径の4乗
K=−−−−−−−−−−−−−−
  8×有効巻き数×中心径の3乗

上がXJ900のSTDスプリング。全長の1/3以上がピッチの細かい、俗に言う“2段レート”だ。下はレーステックの単一レート。
 横弾性係数は、一般的なばね材料の8000、 線径は実測値の4.5、有効巻き数は実測巻き数から両端の座巻き(1×2)を引いた35.7、中心径は巻き外径から線径を引いた24.5として計算すると、0.78kg/mmとなる。
 続いてXJ900のSTDスプリングである。こちらは2段レートなので少々複雑だ。ここで間違ってはいけないのは、ピッチがどうであれ、コイルばねを圧縮したときのたわみは均等だという点だ。つまり、細かいピッチのところが1巻き当たり1mm縮めば、粗いピッチのところも1巻き当たり1mm縮むということである。
 そして、細かいピッチの部分の隙間がなくなり、線が密着した後は、残った部分(粗いピッチの部分)のみの単一レートとなる。
 で、まずは全体を計算してみた。先の式に、横弾性係数の8000、線径の4.5、有効巻き数の57、 中心径の24.5を代入すると0.49kg/mm。 これがいわゆる1段目である。
 続いて、何mm縮んだところでピッチの細かい部分が密着するかを求めた。これにはまず、ピッチの細かい部分の長さ(205mm)と、 そこに線が何本含まれるか(30)を調べ、線

径×本数(4.5×30)から 密着時の寸法を135mmと算出。 これがわかれば、伸び切った状態での隙間の合計は205-135=70mmとわかる。隙間の数は本数より1少ない29だから、70÷
29の答え2.4mmが、 伸び切った状態での隙間の大きさというわけだ。
 2段ばねでも最初は全体が均等にたわむから、 57の隙間が2.4mmずつ縮むためには、 全体で136mm縮めばよいことになり、そこから先は、残りを単一レートとみなし 1.08kg/mmと算出した。XJ900のSTDスプリングは、 伸びきりから136mm縮むまでは0.49kg/mm、そこから先は1.08kg/mmの2段レート…ということになる。これに61mmのプリロードがかかっているから、装着時のばねレート遷移点は、フォークの伸びきりから75mm沈下したところ…と判明する。
 一方、乗車1Gの沈下量は、実測で45mmだから、 0.49kg/mmのスプリングを 45+61=106mm縮める荷重は、0.49×106=51.9kg。 これを0.78のスプリングで釣り合わせるために必要なたわみ量は66.5mm。フォークが45mm沈下したときに66.5mmのたわみを得るためは、プリロードを21.5mmかければ良いと考えた。


<  ひとつ前 ・ 目次 ・ 最新 ・ ひとつ先  >
 
ARCHIVESARCHIVES TUNINGTUNING DATABASEDATABASE HOMEHOME Network RESOURCENetwork RESOURCE    DIARY