XJ900の爽快チューン
2009年6月10日 - フロントフォークのオイルレベル(油面高さ)に関する考察(その1)
     
 フロントフォークのオーバーホールやオイル交換をしたあとは、オイルレベル(油面高さ)の調整が欠かせない。通常は、フォークスプリングを入れずに全屈状態にしたときのフォーク上端面〜フォークオイル油面間の距離を、サービスマニュアルに記載された油面高さに合わせるだけだから、悩むことはない。
 ところが、フロントフォークセッティングの一要素として、コイルスプリングのレートに加味されるエアばねの特性を考えはじめると、単に油面の高低では捉えきれない、非常に難しい問題に直面する。
 正立フォークであれ倒立フォークであれ、筒内には、油面よりも下側にはオイル、上側には空気が入っている。で、フォークが縮むと(正立フォークの場合は)油面よりも下側に入り込んだインナーチューブの体積分だけ油面が上昇し、上側の空気が圧縮されて体積が減少する。
 油面高さとエアばね特性の関係を考えるときは、インナーチューブを基準にアウターチューブが上下すると考えるよりも、フォークオイルが入ったアウターチューブを基準にインナーチューブが上下(出入り)すると考えたほうがわかりやすい。
 気体の体積と圧力は反比例する。

つまり、体積が半分になれば圧力は2倍になる。これは容易に想像できるが、問題は、このときの“圧力”
というのが、何を基準にしたものなのかということだ。専門用語でいうところのゲージ圧なのか絶対圧なのか…。まずはそこのところをはっきりさせておかないと、エアばねについて考えることはできない。
 圧力の単位には、単位面積あたりにかかる力の大きさを表すkgf/cm^2や lb/in^2のような表記もあれば、それをSI(国際単位系)にした bar
(バール)やPa(パスカル)、そして標準大気圧を元に、その何倍に当たるかを示す atm(気圧)などがあり、ただでさえややこしいのに、これらのそれぞれについて、絶対真空(0Pa)を基準とする “絶対圧”と標準大気圧 (101.33kPa)を基準とする“ゲージ圧”の2通りがあり、初心者を混乱させている。
 先に書いた“気体の体積と圧力は反比例する”などという純粋に学問的な文脈中では、圧力=絶対圧なのだが、一般産業界では、圧力といえば、大気圧を基準に圧力を測定する圧力計の数値=ゲージ圧であることが多く、単純にこの数字を元に計算したのでは“気体の体積と圧力は反比例する”に当てはまらない。

 このため、フロントフォーク内に閉じ込められた空気の、圧縮前(大気圧)と圧縮後の圧力と体積には、“圧縮前圧力×圧縮前体積=圧縮後圧力×圧縮後体積”という比例関係があるのだが、この式を成り立たせるためには、圧縮前と後の圧力の数値を、ゲージ圧+1.0332kgf/cm^2にしなければならない。
 いっぽうで、エアばねのレートを考える場合には、圧縮された空気がどのようにフォークを伸ばす力を発生するかを求めなければならず、それには“力=内圧×受圧面積”という式が必要で、エアばねの反発力=(圧縮前ゲージ圧+1.0332)×圧縮前体積/圧縮後体積−1.0332)×受圧面積…と表すことができる。
 さらに、圧縮時の空気室体積は、圧縮前の空気室体積から進入したインナーチューブの体積を引いたものであるから“圧縮後体積=圧縮前体積−(円周率/4×インナーチューブ外径^2×ストローク”と表すことができ、受圧面積は円周率/4×インナーチューブ外径^2であり、これらによって、全屈〜全伸までの間の各ストローク位置におけるエアばねの反発力がわかり、これをコイルスプリングのレートに加算すれば、総合スプリング反力を算出できる。


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