ピストンとシリンダーの点検と掃除が終わるまで、シリンダーヘッドのことは忘れていた。そもそも今回のオーバーホールは、しなくても良いのに“ついで”または“はずみ” にしてしまった作業だし、忙しい時期でもあったので、できればシリンダーヘッドには手を加えず、軽く掃除するだけで組み立てたかった。 で、予定どおり、軽く掃除をしようとしてシリンダーヘッドを裏返した途端、ピストンヘッドを見たときよりもさらに激しく驚いた。こんな色のバルブを見たのは初めてだ。だが、点火時期とキャブのセッティングをちゃんとすれば、焼けすぎは解消するはずだし、カーボンの付着は少ないから、このまま組み立てても |
| 問題はなさそうな気もする。 そこで私は、とりあえず1セットだけ、吸排気バルブを外し、当り面やバルブステムの状態を観察したうえで、そこからさらに手を加えるかどうかを決めることにした。 外してみたところ、吸気バルブ裏面にカーボンが厚く堆積していた。だがこれは、2007〜08年のフルオーバーホールの前と大差なく、きれいに落とせばそれなりの効果があっても、またすぐに同じようになるのは目に見えている。排気バルブのほうは、焼けたカーボンが灰のようにな って固着し、やや赤っぽい色をしていた。どちらも、正常とは言えないにしても、どうしても掃除しなければならないほどの大問題ではない。 |
| しかし、当り面のほうは、とくに排気側に、カーボンを噛み込んだ跡が多数見つかり、これを何とかすれば圧縮漏れが減り、トルクが回復するのは明らかだった。で、もうすでに1セット外れているから、あと3セット外し、掃除をし、軽く擦り合わせをしても大して時間はかからないと考え、8本のバルブを外した。 4バルブや5バルブとは違い、 2バルブのエンジンは楽でいい。外したバルブは、脚立に固定した電気ドリルにセットし、回しながらサンドペ ーパーを押し当ててカーボンを落とした。バルブシートの修正をする気はなかったので、当り面周囲にはサンドペーパーをかけず、あとで軽く擦り合わせをして完了とした。 | |