XJ900の爽快チューン
2009年10月5日 - 冬支度がバルブクリアランスの点検を経て腰上オーバーホールに発展   
     
バルブクリアランスを測定中。前回の測定からは18000km、最後の調整からは23800kmほど走っているが、調整不要だった。
い。つまり、吸気側/排気側とも、1ランク薄いシムに交換すれば0.10
/0.15mmになるわけで、中間サイズのシムを持っていない限り、測定値がマニュアルの指定範囲内なら、それ以上細かな調整はしなくてかまわないということなのである。
 18000km走っても 調整の必要がなく、前回も5800kmほど走った後だったにもかかわらず無調整で問題なか
ったから、おそらく今後数万kmは調整不要に違いない。そういえば、このマシンを入手してから初めてバルブクリアランスを測定したのは、自分の手に渡ってから5万km以上走行してからだった。そのときの測定結果も、合わそうとしてもなかなかこうはならないというほど、ピタリと吸気側0.15/排気側0.20mmに揃っていたから、このマシンと私の使用状況の組み合わせでは、何万km走ろうと、バルブクリアランスの調整など不要なのかもしれない。
 さて、ここまで終われば、あとは苦手のシリンダーヘッドカバー/キ
ャブレター/排気系パーツを取りつけるだけである。気の進まない作業を前に、吸排気系パーツが外れ、おまけにシリンダーヘッドカバーまで開いた状態のエンジンを眺めていると、あとわずかでシリンダーヘッドが外せることに気がついた。
 バルブクリアランスの点検は難しくない。だが、私はこの作業が嫌いだ。最後にシリンダーヘッドカバーを取りつけるのに、あのぐにゃぐに
ゃのゴム製ガスケットがズレないようにセットするのが大変だからだ。4連キャブの脱着やピストンのコンロッドへの装着と並んで、整備における嫌いな作業の代表格である。
 しかしまあ今回は、勢いに乗ってやってしまえば、数日後にクラブXVの全国オフ会が控えているから、嫌でもさっさと組み立てるはずだ。

 で、前回の点検(カムチェーンテンショナー修理のついで)から14カ月/18000kmぶりのバルブクリアランス測定の結果は、シックネスゲージを引き抜くときの抵抗の大きさに多少のバラツキがある程度で、吸気側は0.15、排気側は0.20mmに揃っており、調整の必要はなかった。
 サービスマニュアルによるバルブクリアランスの指定値は、吸気側が0.11〜0.15、排気側が0.16〜0.20mmである。これに対して調整用シムは0.05mm厚ごとにしか用意されていな
側圧のかかる前後方向の側面を中心に目視で摩耗状態をチェック。細かな縦傷は多いが、継続使用に問題なしと判断。
シリンダーヘッドを外し、現われたピストンヘッドの焼け具合を見て驚いた。いったん付着したカーボンが剥離したのがわかる。
ピストンの裏側(スカート部のクラックの有無)とピストンピンも点検。どちらもまったく問題なく、掃除のみで継続使用できた。
 確かに、カムスプロケットを外してカムシャフトを取り外せば、あとは M6、M8、M10合わせて19個のナットを緩めるだけでシリンダーヘッドとシリンダーを外すことができる。
 キャブレター/エキパイ/シリンダーヘッドカバーの3点が同時に外れているなど、めったにあることではない。外してすぐに取りつけるだけなら、大して時間はかからないだろう…と、安易な気持ちでシリンダ
ーヘッドを外してしまった。
 外した途端、大変な物を見てしま
った。ピストンヘッドの異様な焼け具合だ。まるでサーキット走行直後のような感じである。点火時期が早すぎるのかキャブセットが薄すぎるのか、ともかくこれは異常である。見てしまった以上、何らかの対策が

必要だ。最初はシリンダーヘッドだけ外すつもりだったのに、こんな状態のピストンをそのままにして組むわけにはいかず、結局シリンダーとピストンも外すことになり、ただの冬支度が、この期に及んで腰上のオ
ーバーホールに発展してしまった。
 ピストンのカーボン落としには、今まで、スクレッパーとサンドペーパー以外の道具を使ったことがなか
った。だが今回は、2007〜08年にかけてのエンジンフルオーバーホール後、初のピストン継続使用であり、せっかく美しく WPC加工(セラミックショットの後、二硫化モリブデンショット)されている表面に傷をつけたくなかったので、薬剤+真鍮ブラシによる掃除にしたかった。
 で、どんな薬剤が良いかを、ブル

ーカフェの稗田クンに聞いてみた。彼の話では「ガスケットリムーバーが最高です。吹きつけてしばらくしたらカーボンが浮き上がってきて、軽く擦るだけで簡単に取れます」とのこと。さっそく近所のコーナンに行って「パッキンはがし」という名のスプレーを買ってきて、そいつをピストンヘッドに吹きつけ、真鍮ブラシで軽く擦ってみた。
 が、吹きつけてすぐだと全然うまくいかず、吹きつけてはしばらく放置することを繰り返し、6時間後あたりに、やっと稗田クンの言う“浮き上がった”状態になった。
 ピストンヘッドの次は、ピストンリング溝の掃除である。こちらは、ただ溝の底に汚れが溜まっているだけなので、絶対にリング溝の側面に
ガスケットリムーバーを吹きつけて6時間ほど経ってから真鍮ブラシでカーボンを落とすと、新品のように美しい肌が現われた。
ガスケットリムーバーを噴射し、変化が起きるのを待っているところ。噴射直後の細かいムースが、しばらくするとこのようになる。
薄手のボール紙を2つ折りにし、リング溝に嵌め込んでスライドさせると、溝の底に付着しているカーボンがめくれ上がってくる。
傷をつける心配のない道具を用い、リング溝に嵌め込み、ピストンを回転させながら掘り起こすような感じで汚れを取り除く。 TZ250のピストンリング溝の掃除に、当時吸っていたショートホープの紙箱を使っていたのを思い出し、今回も薄手のボール紙を使った。ちなみにこの作業はYZR250のときにはしたことがない。100kmごとの交換だったから 掃除などする間がなかったのだ。
 ここに汚れが溜まるのは、ピストンとシリンダーの間の気密性を保つピストンリングの動きを考えれば理解できる。リング溝に嵌められたピストンリングは、張力によってシリンダー内壁に押しつけられるから、ピストンリングの内側とピストンリング溝の底の間には隙間ができて当然である。ピストンリングの上下面とリング溝の側面が密着することによって気密を保っているのだから、リング溝の底部というのは、たまたま入り込んだカーボンの微粒子にと
って、なかなか抜け出せない袋小路の奥のような場所なのだろう。
 さて、こうしてリング溝の底の汚れを取り除いた後は、全体をパーツクリーナーで洗浄し、三角形断面のオイルストーンを用いてピストンリング溝の縁に、軽く、気休め程度に面取りを施した。こんなこと、しな

くてもいいのはわかっており、やりすぎると良くないのも百も承知だ。
 しかし、ピストンをシリンダー内壁に強く押し当てる側圧がかかる前後方向のピストン側面は、側圧によ
って組織が沈み、そのぶんだけリング溝に向かってせり出している可能性がある。2ストロークのレーサーなどでは、実際、これによってピストンリングのサイドクリアランスが部分的に詰まり、リングがスティックして気密性が低下するなんてのは日常茶飯事である。程度の差こそあ

れ、同じことが起きていない保証はないので、気休め的に、見てもわからない程度にオイルストーンでなぞ
っておいたというわけである。
 上死点時のトップリング位置よりも上のシリンダー内壁に固着したカ
ーボンは、スチールウール(商品名ボンスター)で削り落とした。シリンダー内壁には、リングのストップ位置の痕跡や縦縞が目立つものの、指先でなぞった限りでは傷も段付き摩耗もなく、このまま継続使用しても何ら問題なしと判断した。

上死点時のトップリング位置よりも上に、厚く硬いカーボンが付着。下のほうにはホーニング時のクロスハッチも残っている。


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