XJ900の爽快チューン
2010年12月15日 - バイクに香りがあってもいいじゃないか(そのうちやるかも)   
     
シャネルのアンテウス・アフターシェーブローション。そっち系の人に愛用者が多いのがアレだが、ブランドで選んだわけではない。
さいとうたかをさん、である。
 で、まあ、そんな話は横に措いといて、初めてのヨーロッパで眠りを覚まされた私は、香水の売り場にテスターがあれば必ず手につけて、いろんな香りを楽しんだ。が、ただでさえ少ない男物の中で“これ!”というのは見つからなかった。
 そんな中、渡欧して4カ月あまり経ち、スウェーデンGPから北アイルランドのインターナショナルレースに直行すべく乗ったフェリー(デンマークのエスビャウ〜イギリスのハウィッチ間の国際航路)内の免税店で“これ!”に出会ってしまった。
 以後、少なくとも20年間は、ほぼ毎日これをつけていた。香りというのは面白いもので、皮膚表面の分泌物・付着物や周囲の環境臭と混じって、さまざまに変化する。現役メカ時代はオイルやアブガスの香りと混じって独特の香りを楽しませてくれたし、取材者に転じてからは、汗とタバコとケロシンとアンテウスが混ざったのが自分の香りだった。
 いったん決めた“自分の香り”はころころ変えるべきではない。五感の中で特に記憶に結びつきやすいから…というのが、私がそう考える理由だ。久しぶりに会ったときに「ああ、やっぱりこの香りだね」と、意識の下で思い出したり思い出されたりするのがいいではないか。
 なので、アンテウスを見つけてからは、男性用の香水に対する興味が急激に薄れ、代わって女性用に興味が沸いてきて、ヒマさえあればテスターを嗅いでいた時期がある(笑)。
 で、お気に入りは、以前BS誌にも書いたように、ニナリッチのレールデュタン、エスティ・ローダーのプレジャーズ、資生堂のインウイあたり。逆に、苦手なのは、ゲランのサムサラ、ラルフ・ローレンのポロ・スポーツなどである。何となく好みがわかっていただけたかな(笑)。
 知人がブログに香水の話を書いていた。最近もらった香水の香りと容器のデザインが、どちらも“めまいがするほど感動的”なのだそうだ。聞けば、 ラリック(Lalique)のアメジスト(Amethyst)とのこと。
 ラリックなら、容器に“めまい”
がしても不思議ではない。ガラス工芸品の老舗だからだ。残念ながらアメジストの香りはまだ知らないので
“めまい”がするかどうかは、試させてもらわないとわからない(笑)。
 香水の話を読んだせいで、このところしばらくアンテウスをつけていなかったのを思い出した。アンテウスとはいっても、香水ではなくアフターシェーブローションである。ヒゲを剃ったあとにコイツ叩きつけると、ひりひりした刺激と気分が高揚する香りの両方が気持ちいい。
 昔は、アンテウスをつけたいからヒゲを剃る…みたいな感じで、毎朝ちゃんと剃っていた。ところが、最近は夜に風呂でヒゲを剃るようになり、すっかりご無沙汰である。
 香りに興味を持ったのは、高校生のころ。初めて買ったのは資生堂ヴ

ィンテージ・オードトワレだった。しかし、その後バイクに乗るようになって、香りとは縁がなくなった。
 ところが、1984年の世界GP転戦で眠りを覚まされた。覚まされたのは香りに対する関心ばかりではなかったようだが(笑)、そっちに話が転ぶと収集がつかなくなるので、ここでは香りに限って話を進める。
 とにかく、ヨーロッパじゅう、どこに行っても地酒ならぬ地香水があり、その土地のポプリがあり、そうした香りの文化の頂点に、有名ブランドの香水が君臨している。
 もちろん、それらの香水をつけている人は多く、つけすぎの人も少なくない(笑)。だが、ヨーロッパかぶれだからというわけではなく“ちょ
っとそれは…”と敬遠したくなる例は日本のほうが多いようだ。
 そういえば、ゴルゴ13に、娼婦を装った女スパイを“香水の香りかたが初めてつけたっぽい…”という理由で見破ったシーンがあった。さすがゴルゴ13、カッコええなあ…(笑)と思うと同時に、これは香水の何たるかを知らなければ書けず、さすが
ラリックのアメジスト。さすがフランスのガラス工芸の老舗ならではの容器。今世紀の作品なので、売ってるのを見たことはない。ニナリッチのレールデュタン。L'Air du Tempsとは“時の流れ”といった意味の仏語。私の最もお気に入りの香水のひとつ。1990年代半ばに大キャンペーンを展開したエスティローダーのプレジャーズ。バラの蕾を連想する、若々しく爽快な香り。
 は〜、やっとツカミが終わって、ここからが本題である(笑)。あれは確か、 XJ900に乗りはじめて間もないころ。“爽快チューン”というくらいだから、香りのチューニングもしてみたい…と、真剣に考えた。
 バイクの香りのもとは、たいていの場合、2ストの場合はガソリンに混ざったエンジンオイル、4ストの場合はバルブステムかピストンリングから漏れた微量のエンジンオイルが燃焼したときの匂いだ。
 私が好きなのは、混合給油の2ストで カストロールのR30やシェルのスーパーMなど、菜種油ベースの植物性エンジンオイルを焚いたときの香りである。多くのレース関係者やファンも同様だと思う。
 4ストの場合は、ガソリンに直接混ぜるわけではないから、2ストほど強い香りはしない。その中で、カストロールのRSの香りは印象に残っている。 TX650に乗っていたころ、あの香りにあこがれて何度か(高くて常用できず)使ったことがある。
 だが、あの香りは、実際のところはともかく、何度も嗅いでいると、わざとらしい感じがする。ゴルゴ13なら「わざとつけた香りなんじゃないか」と見破るかもしれない(笑)。
 XJ900には、最初、 モチュールの5100、 続いてニューテックのNC-50

やNC-51を使ってみて、 性能はともかく、匂いが不満だった。
 そこで、アロマオイルを混ぜればひょっとするといい香りがするのではないか…と、ペパーミント、バニラ、ジャスミン、ラベンダーなど、いろんなエッセンシャルをエンジンオイルに混ぜてみたことがある。
 大量に混ぜて潤滑性能が低下すると大変…と思いつつ、これだってオイルの一種だから、溶剤や水ほどの害はないはず…と、調子に乗って、最大100ccあたりまでテストした。
 だが、残念なことに、まったく効果はなかった。もっとオイル消費の多いエンジンなら、少しは効果があるかもしれないので、古いフラットツインに乗っていて、探求心旺盛な
ken'sガレージ”の オカケンさんあたりに、ぜひテストしてもらいたい。突然リンク張ってごめん(笑)。
 エンジンオイルに混ぜて効果がないとわかってもあきらめきれなかった私は、次に、エンジンの熱を利用した香炉の設置を思いついた。
 シリンダーヘッドかどこかに専用の容器をマウントし、その中にアロマオイルを入れて焚くのである。
 よくある、皿のような形の香炉では、入れたオイルが走行中に漏れてしまうから、鶴の首みたいな容器を作って、胴部をシリンダーヘッドに

取りつけ、首をトップブリッジあたりまで伸ばして開放すれば、香りを楽しみながら走れるかもしれない。
 だが、それでは自分にしかわからず、あたりに香りを漂わせることができない(迷惑なやっちゃ(笑))。
 ならば、鶴の首を排気ポート直後の排気管に結合し、二次エアの代わりにアロマの香りを吸わせてみてはどうだろう? 問題は、量的に足りるのかということと、香りの成分が排気管内でどのように変化するかということである。こればかりは、や
ってみないとわからない。
 幸い、二次エア導入は、今回の電装系大改造の“次のテーマ”として候補に上がっており、材料の調達も少しずつ進めている。このシステムのエアフィルター〜バルブ間の配管を鶴の胴体経由にすれば、結果はともかくテストは簡単にできる。
 オイルの補充をどうするか、無駄なオイル消費を減らしつつ効果を高める方法はあるか…などの技術的課題とともに、どんな香りを漂わせるのか…といった楽しい悩みもある。
「やっぱりあのひと変態よ…」とい
った声が聞こえてきそうなので、この件は、新たな展開があればまた報告させていただくとして、そのためにも、今回の電装系大改造の仕上げを急ぐことにしよう。


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