XJ900の爽快チューン
2012年9月23〜24日 - 三重〜滋賀の農道〜林道でdb1srとツーリング&交換試乗
     
 以前、リンドバーグ京都店(2010年8月に閉店)で、 毎週日曜日にメンテナンス相談員をしていたとき、db1srで来店されたのが、 歯科医のSさん。20数年前から、三重県にある“ヤマギシズム社会実顕地”内の診療所で歯科を担当されている。
 その後ご自分でエンジンオーバーホールをされたときに、ミッションのファインチューニングやドッグクリアランスの調整、クラッチレリーズの対策パーツの製作などについて相談を受け、バラバラのパーツを持
ってウチに来られたこともあった。
 そのdb1srは、 めでたく路上復帰し、夏には北海道を往復されてきたそうで、9月に入って、リフレッシ
ュしたマシンの試乗と実顕地の見学をセットにして、23〜24の1泊2日で豊里実顕地にお誘いくださった。
 ヤマギシズムについて書き出すとキリがないし、誤解が誤解を生む恐れもあるので、私のスタンスだけ書いておくと“知らないことには目と心を開け”である。要するに、ヤマギシズム豊里実顕地がどんなところなのか、先入観を持たず、ニュートラルな気持ちで(ほとんど興味本位で)覗きに行ったにすぎない。
 初日は、夕方に来いと言われていたので、お言葉に従い、16時ごろに

出発し、名阪国道を関で降りて県道を南下。伊勢自動車道の芸濃ICをすぎて1つめの信号を右折するとすぐに、豊里実顕地の正門が現われた。
 正門と言っても、両側に門柱があるだけ。ゲートや遮断機はなく、開けっ放しである。出迎えてくださったSさんの指示により、バイクを屋根つき駐車場の一角に停め、まずはSさん宅へ。住居エリアに並んだ2階建て長屋の1階に診療所があり、彼の住まいはその2階にあった。
 各家庭に台所、風呂場、洗濯場はなく、それらはすべて共同である。Sさんの案内で施設内を見学し、そのわけがわかった。食事は食堂(大企業でいうところの社員食堂のような感じのところ)で、施設内のメンバー全員が食べているらしい。
 食堂には専属の料理人がいて、メニューは日替わり。その日の料理が嫌だったり足りなかったり、時間外に食べたい人は、長屋の端にあるキ
ッチンで好きな料理を作って食べたり、売店で惣菜を買って食べたりできるようだ。食堂の脇には高級レストランの個室みたいな部屋があり、前もって注文しておけば特別メニュ
ーを用意してもらうことも可能。私はそこで、Sさん&Sさんの奥さんといっしょに夕食をいただいた。

 メニューは鉄板焼き。素材は豊里実顕地で生産されている牛肉と野菜で、ここの牛肉はヤマギシブランドで販売している他、いわゆる松坂牛として OEMもされているとのこと。その美味しい特上牛肉の鉄板焼きをたらふくいただき、お腹がいっぱいになったところで温泉に向かう。
 各家庭に風呂場がないのは、24時間、好きなときにこの温泉に入れるからだ。“豊里温泉”の看板を掲げた立派で清潔な建物に入ると、そこには、よくある温泉旅館のと変わらない、広く立派な大浴場があった。
 温泉を出てSさん宅に戻る途中、ランドリーの前を通った。洗濯物はみな、ここのカゴに入れ、名前を書いて出しておけば、専属の洗濯屋さんが洗ってくれ、翌日には仕上がってくるそうだ。だから各家庭に洗濯場がなくても困らないのである。
 Sさん宅に戻り、お酒好きの彼の相手をしながら、バイク歴、職歴、ヤマギシに入った動機とここでの生活、 db1srのメンテなど、夜更けまでいろんな話をした。そして「明日は施設内と私のガレージをご案内しましょう」ということになって、Sさん宅を出て、50メートルほど歩いたところにある外来者専用宿泊棟に向かい、そこに泊まった。
伊賀市上野の市街地を通る大和街道に面した上野天満宮の前でしばし休憩。大きさも性格もまったく異なる2台である。エンジンオーバーホールを終えたdb1sr。製造後四半世紀を経ても、各部、非常に良好なコンディションをキープしている。
 2日目。Sさん宅で朝食の後、施設内を見学した。伊勢自動車道の両脇に広がる“豊里実顕地”の広大な敷地内を、住居地区に近いところから順に歩いて回る。乳牛の牛舎、搾乳所、肉牛の牛舎、廃校になった施設内の高校、養豚施設、ミカン畑、ブドウ園、ブルーベリー畑、イチゴ園、かつては高校野球の県大会にも使っていた立派な(今も手入れは完璧な)野球場、ハーブ園…と、ぐる
っと一回りしたあと、工場地区へ。
 ここは全国各地にある実顕地の中でも最重要施設であるらしく、大型トラックの車検整備もできる整備工場や、各地の施設の建設や営繕を担当する部門などがあり、この一角はまるで工場地帯のような眺めだ。鉄工所の中には、大きなプレス機や溶接機、シャーリングマシンなどに混じって、汎用旋盤やフライス盤などもあり、 db1srの補修用パーツの何点かは、ここで専属の職人さんに頼んで作ってもらったらしい。
 興味津々のSさんのガレージは、その鉄工所の裏手にある、今は使われていない倉庫棟の一角にあった。10坪程度のガレージファクトリーである。中には再生中のDUCATI DIANA
Mark3 250もあり、これとdb1srが現在のSさんの愛車である。

 ガレージ見学はそこそこにして、昼食後、近場を軽く走りに行くことにした。コースは、とりあえず安濃ダムまで行って、あとは気分次第…ということにして、Sさんの後ろについて出発。ところが、すぐにSさんはマシンを停め「このバイクは後ろが全然見えないから、前を走ってください」とのこと。安濃ダムまでは走ったことがあるし、その先も、このあたりの道はたいてい一度は走ったことのあるところばかり…というわけで、私が先導することに。
 db1sr にはちょっとキツいかなと思いつつ、安濃ダムから先の舗装林道を経て国道163号へ。 そして青山あたりで右に曲がって名阪国道御代ICへ。名阪に乗ったら渋滞していたので、すぐに降りて県道を北に向かい、阿山の道の駅で休憩。ここでマシンを交換し、県道674〜国道422〜県道138のルートで 多羅尾温泉の近くを通り、御斉峠(おときとうげ)を越えて伊賀盆地に降り、上野市街を通り抜けて国道25号で大内へ。
 3年ぶりに乗せてもらった db1srは、以前よりもはるかに扱いやすいマシンに変身していた。フロントフ
ォークがちゃんと動くようになったのが効いているが、それだけではなく、クラッチやミッションの調子が

良くなっているので、細かなことを気にせず、エンジンと車体の性能を味わうことができる。以前のような市街地ではなく、県道674〜国道422のような高速ワインディング区間では、まさに水を得た魚のごとし。
 XJ900とは対極的な、 低いロール軸/軽い車重/コンパクトな車体によるコーナリングは、進入時はまるで ロングホイールベースの125ccといった感覚。それでいて立ち上がりでは、ロングな減速比と、回転を上げれば上げるほどストレスなく軽やかに回るエンジンのおかげで、延々と気持ちよく引っ張って行ける。
 御斉峠の下りでは、さすがに2速に入れたくなることはなく、ほとんどロー。しかもフロントブレーキの効きがイマイチだったので充分に楽しめなかったが、軽やかな身のこなしのおかげで持て余す感じはなく、ギアさえ合えば(あるいはもっとゆ
っくり流せば)決して不似合いなシチュエーションではないと感じた。
 大内でSさんと別れ、家に向かいながら考えていたのは、 XJ900も、7000rpm以上の回りっぷりを、 もう少しスムーズにすることができるのではないだろうか…ということだった。そして、冬になる前に、メインジェットを絞ってみようと決めた。


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