04 パリのホテルで切れまくる


パリには14日の朝1時に着いた。
予約してあった“HOTEL ibis ROISSY AIRPORT”に着くと
満室なので、近所の“ARCADE”に行ってくれと言われた。
“そんなバカな!”
午後7時以後も部屋を確保し、不泊でも料金を支払うため
クレジットカードの番号を知らせてあったのに…。
(これを旅行業界用語ではギャランティーリザベーションという)
ACCOR JAPANからの予約確認のファックスを見せたが
向こうは“I'm sorry”の一点張り。

日本時間の朝10時(つまり、こちらの午前3時)
必着の原稿を抱えていたボクは、気が気ではなかった。
時間に余裕があったら、ここで暴れまくっていたかもしれないが
とにかく、どこでもいいからチェックインして
原稿を書いて送らなければならなかった。
向こうの言いなりに“ARCADE”に行き
大急ぎでチェックインし、原稿を書きはじめた。

超特急で原稿を書き終え
壁から配線を引っ張り出してアクセスしようとしたら
外線につながっていなかった。
“バカヤロ〜!”と叫びたい気持ちをグッとこらえて
ホテルの交換台に電話した。
外線にかけるためには、レセプションでクレジットカードを示し
接続手続きをしてもらわなければならないとの返事だった。
(最近、3つ星以下のホテルでは、このシステムが多い)

“ばかやろ〜!”
チェックインのとき“部屋に電話はあるんだろうな?”って確認したら
「オフコース」って言ったじゃねーかよ!
が、ここでももめているヒマはなかった。
レセプションに行き、クレジットカードを見せて
外線を接続してもらった。

部屋に戻ってアクセスを試みるが
パリのINFONET経由だと
なぜか文字化けして、途中でハングしてしまう。
パリのTYMPASは、電話番号が変わったらしく、使えない。
仕方がないからフランクフルトのINFONETに国際電話をかけ
やっと原稿を送ることができた。
どっと疲れが出て
ログアウトして間もなく、深い眠りに落ちた。

翌朝、8時に目が覚めた。
熟睡できるからか、旅先では睡眠時間が短い。
9時に、向かいの部屋のWさんが荷物を抱えてやってきた。
彼は今日の夜、ホテルのとなりの
シャルルドゴール空港から日本に向かう。
ボクは、昨日までのドイツGPの原稿を書くために
ここにもう1泊するので
夕方までWさんの荷物を預かることになっていたのだ。

Wさんの荷物を部屋に入れて
いっしょに朝食を食べに行った。
ホテルの地下の朝食室に行ってびっくりした。
トレイがない、コーヒーカップがない、フォークがない…
バゲットの切り身やクロワッサンを直にテーブルに置き
スープ皿でコーヒーを飲んでる客も多かった。
しかし、こんな不満はまだ、氷山の一角にすぎなかったのだ。

Wさんは、チェックアウトすると
そのまま市内に買い物に出かけた。
ボクは部屋に戻って原稿を書きはじめた。
すると、いきなり壁をノックする音が…。
よく聞くと、ノックではなかった。
下のフロアーが工事中で、壁に穴を開けたり
床を剥がしたりしている音が
建物全体に響きわたっているのだった。

人の手で作業しているうちは何とか我慢できたが
そのうち削岩機で“ダダダダダッ…
ダダダダダッ”と、やりはじめた。
“バカヤロ〜!”こっちは部屋で仕事してんだぞ!
あまり腹が立ったので壁を蹴り返してやった。
足が痛いだけだった。

激怒したボクは、レセプションに電話をかけ
「静かな部屋に替えてくれ」と頼んだ。
答えは「うるさいのはどの部屋も同じだから替えられない」だった。
もう我慢できなかった。レセプションに走って行った。
「テメーらの勝手な都合でホテルを替えて
連泊する客をあんなにうるさい部屋に泊めるとは何ごとだ!」
英語まじりの日本語で騒いでいると
マネージャーふうの女性が出てきて
別館の部屋のキーを渡してくれた。

静かな別館の部屋で
やっと仕事を始めることができた。
夕方、Wさんが戻ってきた。
おみやげに稲荷寿司を買ってきてくれた。
が、それは夜食にまわして
Wさんを見送りがてら、空港のレストランに入った。
食後に二人揃ってクリームキャラメルを頼んだら
こいつが超美味!
この次シャルルドゴールに来たら、また食べよう。
ホテルに戻ったボクは、再び原稿を書きはじめた。