街路にあるカフェテラスは素敵だ。 
どこも、4×6メートルくらいの 
四角い帆布張りのパラソルを歩道上に並べ 
近所の店から飲み物や食べ物を運んでくる。 
夜は、パラソルの骨に取り付けられたハロゲンパンプが帆布を照らし 
下のテーブルを間接光がやわらかく包む。 
 
脈拍が正常に戻ったボクは、いったんホテルに引き上げた。 
眠たくなったのでベッドに横になると、すぐに寝てしまった。 
気がついたら午後8時だった。 
時計を見てあわてたが、外を見ると真っ昼間だったので安心した。 
写真はもういいので、今度は手ブラで外に出た。 
カメラを持たずに歩くと 
持っているときには見えないものが見えてくる。 
 
このときもそうだった。 
感じのいいパティオを発見した。 
ランブラス通りに面した建物の隙間をくぐった中にある 
150×50mくらいの大きな中庭だった。 
真ん中に噴水があり、まわりにはヤシの木が植わっている。 
パティオに面した建物にはアーチ形の屋根のアーケードがあり 
そこにレストランのテーブルが並んでいる。 
“夕食はここにしよう” 
 
  
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ランブラスは、夜もまた美しい。 
蛍光燈ではもちろんなく 
白熱球や水銀灯でもなく 
ハロゲンランプ(ヨーソ球)が 
照明の中心になっているのと 
やはり、照明に関して 
ハイセンスな街だからだろう。 
そういえば、例年、夏の宵には 
音楽に合わせて 
ライトを浴びた噴水が踊る 
Expo H'ogarというイベントが 
市民や観光客で賑わっている。 
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しばらくランブラスをブラついてからパティオに戻り 
さっきのレストランに入った。 
日本語のメニューが出てきてびっくりした。 
“カタルーニャ風そら豆の煮込み”と 
“ナントカ風ナントカのナントカ”という(忘れた)魚料理を注文した。 
飲みのもは白ワイン。 
英語が通じるのにスペイン語で頼もうとして 
「ヴィーノ ビアンコ ペルファボーレ」と言ったら 
「それはイタリア語だぜセニョール」と笑われた。(^_^;  
 
そら豆の煮込みは、何となく日本的な味付け。 
ナントカのナントカは、鱈みたいな魚のトマトソースがけだった。 
どちらもちょっと塩っぱかったが、なかなか美味しかった。 
ワインもうまく、下戸のボクには珍しく、おかわりをした。 
しばらくすると、酔いがまわってきた。 
あたりはようやく暗くなりかけていた。 
どこからともなくやってくるひんやりした風が 
酔った身体に心地良い。 
ギターを抱えた流しのオヤジや、花売りの老婆がやってくる。 
 
日がとっぷり暮れてから、パティオを出た。 
ランブラスは、相変わらず賑わっていた。 
最後の一軒の花屋が店じまいをしていた。 
その脇で、ハープを奏でているオヤジがいた。 
南国に特有の、哀愁を帯びた調べ。 
何曲か聴かせてもらって 
帽子の中に100ペセタ硬貨を放り込んだ。 
少し歩くと、今度はリコーダーを吹いている青年がいた。 
そいつの足元にはシェパードが仰向けに転がり 
そのお腹の上で鳩が寝ていた。 
奇妙な取り合わせだが、それだけじゃあ金はやれない。(^_^;  
 
  
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カタルーニャ広場から港まで 
約1.2kmのランブラスの 
中央よりやや海寄り 
地下鉄のリセウ駅から 
リセウ劇場あたりの区間にも 
カフェテラスが集まっている。 
昼もいいけど 
暑い夏の日、ここで 
行き交う人々を眺めながらの 
夕涼みはまた格別。 
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歩道のカフェは、まだまだ宵の口。 
レストランで頼まなかったデザートとコーヒーがほしくなったので 
そのうちの1軒で“タルタ デ マンツァーナ”と 
“カフェ ソロ グランデ”を頼んだ。 
去年、スペインのどこかで教えてもらった 
薄切りのリンゴのタルトと 
大きなカップに入ったブラックコーヒーを意味するスペイン語だ。 
夜のランブラスがすっかり気に入ってしまったボクは 
そこでまた、行き交う人を眺めながら 
宵っ張りのスペイン人に溶け込もうとしていた。 
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