なおも同じような海沿いの街が延々と並ぶ[SS1]を進むと 
やがて道は、白い岩肌むき出しの 
入り組んだ海岸線に沿って走りだす。 
海面からの高さは20メートルくらいだろうか。 
こんなところにも、停められそうな空き地には 
隙間なくクルマが停まっている。 
バカンスのピークには、さぞ激しい渋滞が起きることだろう。 
 
ちらっちらっと、エメラルドグリーンの海を見ながら走っていると 
素掘りのトンネルがあった。それを抜けると景色が急変した。 
海岸まで迫っていた山が後退し、海沿いには平地が広がる。 
ノリ(Noli)という町を通過し 
ヴァド・リッグ(Vado Lig)にさしかかったとき 
ラジオから遂に“ラ・ピョージャ”が聞こえてきた。 
ボリュームを上げ、なつかしい調べに聴き入った。 
 
ほどなく、サヴォナの町に着いた。 
サン・レモからちょうど100km。 
ここから先の海沿いは、去年の5月の末 
フィレンツェからバルセロナに向かう途中に走破済みなので 
一般道[SS1]をやめて、アウトストラーダ[A10]に乗った。 
 
またしても山が海に迫り、ここからジェノヴァまで 
そしてジェノヴァからミラノに向かう途中まで 
アウトストラーダはサーキットのごとく曲がりくねり 
アップダウンを繰り返す。 
ついつい“地元のヤツに負けてたまるか!” 
…って気になって飛ばしてしまう。 
車の性能がいいから、道を知らなくても勝負はできる。 
でも、老若男女を問わず 
全ドライバー平均アクセル開度はイタリアが一番だ。 
みんなギンギンに、古ぼけたちっちゃなクルマで激走している。 
 
こういうところで目立って速いのはフォルクスワーゲン・ゴルフだ。 
エンジンをチューニングし足まわりを固めたGTIなんかが 
イタリアの若者にはぴったりだ。 
ヤツらには、どう頑張ってもついていけない。 
BMWの3シリーズも、走り屋に人気があるようだ。 
イタリア車は、エンジンはともかく足まわりで負けているのだろう。 
 
  
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コートダジュールから 
ミラノに行くには 
ジェノヴァまで海沿いを走り 
そこから山を越えた後 
パダナ・ベネタ平原を 
突っ切るのが最短ルート。 
ジェノヴァ付近の 
アウトストラーダは 
高速道路とは思えないほど 
屈曲とアップダウンを繰り返し 
クルマのドライブは 
スポーツだと再認識する。 
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ジェノヴァの町をかすめて北に向かい、いくつものトンネルを抜け 
ティレニア海側とアドリア海側 
つまりイタリア半島を左右に分ける分水嶺を越えた。 
ここからはゆるやかに、ロンバルディア平原に向かって下りていく。 
ポー川を渡ると、ミラノまで、延々と続く直線区間だ。 
このあたりののどかな田舎の景色の中も 
いずれ、ゆっくり走ってみたい。 
 
ミラノが近づくと通行料を払わなければならない。 
イタリアでもフランスでもスペインでも 
高速道路が有料の国には大都会に入る手前に料金所がある。 
そこで料金を払った後 
郊外にあるチケットゲートまでの間は無料なのだ。 
高速道路がしっかり環状線になっていて、しかも無料! 
これらの国々では、高速道路が 
都市の交通網として、ちゃんと機能している。 
 
ゲートにいたのはイタリア娘だった。 
金額は電光掲示板に表示されるから 
それを見て払えばいい。 
問題は領収書。こちらから頼まない限り 
たいていは出てこない。 
ボクが「レシーボ ペルファボーレ」と言うと 
イタリア娘が笑った。 
笑いながら「リッチェブ〜〜タ〜〜」と、歌うように言った。 
 
  
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これがアウトストラーダの 
リチェブータ(Ricevuta)。 
入口で(たいていは自動発券機の 
赤く大きなボタンを押して) 
もらったチケットに 
出口で料金を印字するだけ。 
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そうだった…、今の今まで“レシーボ”がイタリア語で 
“リチェブータ”がスペイン語だと勘違いしていた。 
スペインにいる間じゅう、ボクは 
イタリア語で“領収書”って言ってたのだ。(^_^;  
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