シャモニーからブリュッセル郊外のアールストへ向かうには 
ジュネーブからディジョンに出て 
ナンシー、メッツ、ルクセンブルク経由のルートと 
来たときのコースを逆にたどってドイツに入り 
ストラスブールからメッツに向かうルートの2通りがある。 
前者のほうが40kmほど長い代り、全区間高速で、国境もない。 
しかし、フランスの高速は有料区間が多いので、後者を選んだ。 
 
本格的なクルージングに移る前に 
シャモニーの街の最も奥(スイス寄り)にあるガソリンスタンドで 
給油とオイルの点検を行った。 
1リットル当り5.19フラン(約101円)のSans-Promb 98が 
55.30リットル入って287フランスフランだった。 
オイルは、レンタル開始以来交換も補充もなしで 
7000kmほど走っているのに 
量にも色にもまったく問題なし。 
いよいよ長距離連続走行の始まりだ。 
モンデオの積算計は12788kmを示していた。 
 
シャモニーを出てすぐに峠を登り、スイスに入って急坂を下る。 
来たときの薄暗かった景色が、夏の太陽に照らされてまぶしく光る。 
空をバックに偏光フィルターを使って撮れば 
色彩とコントラストが誇張された 
ドイツの絵葉書のような写真が撮れるに違いない。 
1時間弱のドライブでマルティニーに到着。 
ここからストラスブールの対岸でライン川を渡るまで 
約350kmの区間、アウトバーンはつながっている。 
 
  
 | 
シャモニーからベルギーへは 
来た道を引き返して2つの峠を越え 
マルティニから高速に乗った。 
スイスのアウトバーンを220km 
ドイツのアウトバーンを128km走り 
オッフェンブルクでの先で 
ライン川を渡って 
ストラスブールから 
再びフランスに入り 
オートルートを220km走ると 
ルクセンブルクに入る。 
 | 
 
 
 
バーゼルからドイツに入り 
通い慣れたアウトバーン[A5]をOffenburg まで行き 
そこで一般道に降りてライン川を渡る。 
バーゼル〜ストラスブール間は 
ライン川が独仏国境になっているため 
橋の手前でドイツを出国し、向こう側でフランスに入国する。 
 
クルマを停めたりすると渋滞するので 
国境警察官も税関の職員も、小屋から出てこようともしない。 
橋を渡ってすぐのところからオートルートに乗り 
ストラスブールの市街地を迂回してメッツ方面に向かう。 
 
何トンまでの船が航行できるのだろう…。 
オートルートから見下ろすストラスブールの港には 
遠洋に出かけるのではないかと思うほど 
大きな船が停泊している。 
EC(EU)のルーツとなった欧州石炭鉄鋼共同体発祥の地 
ストラスブールは 
多くの共同体機関が置かれる、ECの重要な町だ。 
ここからからルクセンブルクを経てブリュッセルとは 
まさにECの中枢を行くルートではないか… 
 
しかし、ひとたびストラスブールの町を外れると 
オートルートはアルザス、ロレーヌ地方の 
のどかな農村風景の中を進む。 
ブドウ畑の緑と小麦畑の肌色が交錯する地表には 
ところどころにヒマワリ畑の黄色が彩りを添えている。 
 
  
 | 
初夏のヨーロッパのけしきに 
いろどりを添えるヒマワリ畑。 
空から見て、地表が黄色いのは 
たいていこれだ。 
飼料と搾油がメインだが 
スペインなどでは 
人間も好んで、種の中の 
米粒より小さな胚を食べる。 
 | 
 
 
 
ライン川と並行するヴォージュ山脈を越えると 
景色はやや変わり、肥沃な田園地帯にさしかかる。 
ブドウ畑に代って緑の森が姿を現わし 
やがてメッツの工場地帯が見えてくる。 
 
メッツはこの地方の交通の要衝だ。 
東西南北のオートルートが交差し 
北に向かうとルクセンブルクを経てブリュッセルへ 
東に向かうとストラスブールを経てドイツへ 
西への道はまっすぐパリへ向かい 
南はナンシー、ディジョンを経てリヨンへとつながっている。 
地名が白文字、道路番号が赤印で書かれた紺色の大きな標識に従って 
ボクはルクセンブルクへ向かう[A31-E25]に乗り換えた。 
 
  
 | 
オートルートの標識も 
アウトバーンに負けないくらい大きい。 
行き先や出口の案内だけでなく 
沿線の景勝地や特産物を 
茶色地に白一色で描いた標識が 
単調になりがちな 
連続高速ドライブを 
楽しくしてくれる。 
 | 
 
 
 
メッツあたりでガソリンの残量がわずかになってきた。 
[A31]に入る頃には 
残り10リットルを切ったことを示す赤ランプが点灯するが 
ガソリンの安いルクセンブルクまで我慢することにした。 
16時40分。シャモニーを出てから6時間。 
610kmを走ったところで 
ルクセンブルクに入って最初のパーキングエリアで給油した。 
 
59.00リットルで1333.4ベルジャンフラン。 
1リットル当り22.6ベルジャンフラン(約71円)だから 
フランスはもちろん、スイスやドイツと比べても20円程度安い。 
ルクセンブルクのガソリンスタンドや 
パーキングエリアの売店にある 
酒やタバコ売り場がいつも混んでいるのは 
この税金の安さが原因だ。EC統合でこれもなくなるのだろうか? 
 
ガソリンを入れ終わって、M嬢に電話した。 
すると「予定が変わって 
今日これからカタルーニャに向けて出発する」 
…と言うではないか。つまり、今夜のデートは中止である。 
ガ〜ン! ここまでの610kmは何だったんだ…。 
ルクセンブルク〜ブリュッセル間は200kmちょっとしかない。 
彼女の出発が“すぐ”ではないことを確認して 
ボクはブリュッセルに向かうことにした。 
 | 
 
 
 |