エミュレーターに関しては、構造と作動は理解しているものの、何しろ初心者だから、どこをどういじればどんな変化が体感できるか、あれこれやってみないとわからない。 で、まず最初に試してみたかったのは、リリーフポートの流量アップだ。最初から1個開いている小さい丸穴は、これによって“漏れ”を作り、圧縮/伸長とも、作動速度がごく低く、かつ、ストロークが短い場合に、あたかも“遊び”のように、減衰という名の縛りを緩め、動きやすくしているのではないだろうか。 だから、たぶん、ここの流量を増やせば、遊びが増えて、超低速/微小ストローク時の作動性が向上するはずだ。しかし、いきなり穴径を大きくしたり穴の個数を増やしたりはしたくない。やめたくなったときの復元が容易で、しかも流量の微調整が可能な方法があるではないか。 …というわけで、リリーフバルブ本体とプレートの間に隙間を設け、その隙間の大きさで流量を調整してみようと思い立った。これに使ったのが、左上の写真にある花弁型のストッパーと、その上に入れるワッシ ャである。花弁型のストッパーは、薄手のワッシャをリューターで削って製作。これなら真鍮製のプレートに穴を開けるよりも簡単だ。 |
| 上に入れるワッシャの厚さと直径を変えれば、流量調整も簡単にできる。とりあえず、0.75mm厚のワッシ ャを入れて様子を見ることにした。 続いて、強めのブレーキングなど中速作動時の圧側減衰力強化を狙って、リリーフバルブのスプリングを1ランク、レートの高いもの(青ペイント)に交換してみた。 エミュレーターを使いはじめて以来、ずっと気になっているのは、実際にリリーフバルブがどれだけ開いているか(プレートのリフト量)である。これを知るために、最初はスプリングを貫通するボルトの円筒部に輪っかを嵌めることを考えた。よくある、インナーチューブに巻くストロークセンサーと同じ方法だ。 ところが、これを正しく機能させるには、スプリングの上側にも偏心防止のガイドを設けなければならない。それを言うなら、真っ先にすべきはクラッチスプリングだが…。 ともあれ、傾いたスプリングに引 っかかるのがコワかったので、巻きつけるタイプのストロークセンサーの装着は見送り、ボルトの円筒部に色を塗ってみた。バルブが開き、プレートがリフトすれば、その分だけ色が剥げるはずだから、取り外したときに色の剥げた部分の長さを測れば、リフト量がわかるはず。 |
| こうして、第二段階のセッティングを施したエミュレーター(青いスプリングのプリロードは0)を装着してフォークを組み立て終わったところで、娘が通学定期券の購入と駐輪場の月極め契約に行くのにつきあうことになった。つまり、VINOと併走である。これは都合が良い。加減速を抑えた50km/h以下の走行が主体だから、超低速/微小ストローク領域での作動性テストには最適だ。 目的を済ませた後、娘とショートツーリングをした。こわごわ乗っていたポッケとは異なり、自分で運転してどこかに行くのが楽しくてしかたがないようだ。たかばたけ茶論で昼食代わりのお茶をした後、奈良奥山ドライブウェイの新若草山コース を頂上の駐車場まで往復し、さらに遠まわりをして家に帰った。 家に帰ったところで雨が降りだしたので、結局この日は超低速/微小ストローク領域でのテストしかできなかったが、24日のテストで感じた“動きにくさ”も“違和感”も感じず、エミュレーター装着前とまったく変わらない、極めて良好な作動性/路面追従性と合わせて、リーンアングルと舵角の自然でスムーズな関係を取り戻すことができた。 今後は、中速作動時の減衰力を上乗せする方向に向かう予定である。 | |