27日のところにある図で、フォークシリンダー内部のオイルの流れに着目すると、圧縮時は下から上に、伸長時は上から下に向かう(正立型フォークの場合)ことがわかる。 通常、フォークシリンダー頭部にはフォークスプリングが載っているだけで、出入りするオイルの流れを制御するようなシカケはない。 ここに、圧縮時のオイル(下から上へ)と伸長時のオイル(上から下へ)の流路を切り分け、圧縮時の流路にのみダンピングフォースを発生させるバルブを設ける…というのがレーステック製カートリッジエミュレーターの基本的な考え方である。 このためエミュレーターは、流路を切り分けるためのチェックバルブと、圧縮時のオイル流路を制御するリリーフバルブ、これら2つのバルブを合体させた構造になっている。 チェックバルブの構造は単純で、本体上部のリリーフバルブの周囲にある大きな開口部の下側にワッシャ状のプレートを配し、裏面に入れた弱いスプリングでそのワッシャ状プ |
| レートを浮かせているだけである。 圧縮時に下から上への流れが生じると、ワッシャ状プレートが開口部を塞ぎ、行き場のなくなったオイルはリリーフバルブに導かれる。伸長時に上から下への流れが生じた場合には、弱いスプリングを押し縮めてワッシャ状プレートが下がり、大きな開口部をオイルが素通りする。 素通りとはいえ、元々何もなかったところにチェックバルブを追加するわけだから、弱いとはいえダンピングフォースは発生する。 本来の伸び側オリフィスによるダンピングフォースを生かすためのチ ェックバルブではあっても、伸び側には“ほとんど影響しない”が“ま ったく影響しないわけではない”という点に注意が必要だ。 リリーフバルブのほうは、チェックバルブによって必ずここを通るように制御されたオイルが、その油圧によってスプリングを押し縮め、バルブを持ち上げ、できた隙間を通るときの抵抗によって圧側ダンピングフォースを発生させている。 |
| ここの流量は、元からあるフォークシリンダー底部の圧側オリフィスよりも少ないため、このバルブの追加により、元よりも大きな圧側ダンピングフォースが得られるうえ、オリフィスによる尻上がりな(作動速度の上昇に伴って急激にダンピングフォースが強まる)特性ではなく、スプリング+バルブによる比例的な特性を得ることもできる。 ただ、チェックバルブが伸び側ダンピングフォースに影響を与えるのと同様、リリーフバルブを追加したからといって、元の圧側オリフィスの影響が皆無にはならない(とくに高速作動時)ので、レーステックでは、カートリッジエミュレーターの装着と合わせ、圧側オリフィスの拡大/個数の追加を推奨している。 これらにより、大まかには、伸び側ダンピングフォースはフォークオイルの粘度により/低速作動時の圧側はリリーフバルブのスプリングのプリロードにより/高速作動時の圧側は同スプリングのレートにより、それぞれ調整が可能になる。 | |