スポーツ性を捨てる気はないが、もしも乗り心地との二者択一を迫られれば、迷うことなく乗り心地を優先する。だが、足まわりのセッティングにおける私にとっての乗り心地とは“不快な衝撃が伝わらない”ではダメで“心地よく路面の感触が伝わる”でなければならない。 例えば上の写真のように、大まかにはフラットだが、細かなシワやひび割れがある箇所を通過するとき、どんな速度であっても不快でないのはもちろん、ジグソーパズルのようなブロックのひとつひとつをタイヤが踏んでいく感触が“心地よく”体に伝わり、それを楽しい、また通りたいと感じさせてくれるのが、足まわりのセッティングにおける大切な目標のひとつになっている。 真ん中の写真で、次の右コーナーに気持ちよく入るためには、手前からずっと舗装の継ぎ目と縁石の間の凹凸ベルトの上を走り、何メートルかは継ぎ目の上を通る。その次の左コーナーでは、イン側の継ぎ目〜凹凸ベルト〜継ぎ目を忙しく通過していく。ここでも同様に、そういう箇所を通るのが“苦にならない”レベルではなく、積極的に“楽しい”と感じられるのが、私にとって“乗り心地のよい”足まわりである。 下の写真は、手前から向こうに向かって上っていく坂の途中にある低いテーブルトップだ。ここは、足まわりの評価に走るコースの中で、最も過酷な箇所である。コーナーを立ち上がった後の長めの直線の途中にあるので、かなりの速度で、しかも加速しながら横切る。フロント分布荷重が非常に小さく、伸びきったフ ォークにいきなり大荷重がかかったかと思うと、直後にリバウンドスプリングが効くほど伸ばされる。 逆方向(下り)はもっと辛い。速度は上りよりも出ており、前輪分布荷重も大きい。そこに最初の“ダーン”が来て、続いて“ダダ〜ドン〜 ダダダダ…”である。 この下りで、高い速度から強めにブレーキをかけながらテーブルトップを横切って、底突きを感じさせないがストロークを使いきるのを、荷重セッティング面での目標にしている。が、それだけではやはり満足できず、大振幅ではあるが角の取れた波形が、心地よさに加え、高エネルギーをやりとりしている実感を味わわせてくれるのが目標である。 |
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