XJ900の爽快チューン
2009年4月12日 - GS1000まめしば号試乗記
     
 さて今日は、相模の国から変態オヤジツーリングに駆けつけてくださ
ったお二方を、家の近所の朝練コースにご案内し、その後、琵琶湖大橋までお送りすることになっていた。琵琶湖大橋から先は、昨日のツーリング後いったん岐阜のご自宅まで戻られて、今朝再び湖北経由で琵琶湖大橋までやって来られるyajiさんに引き継いでいただく予定である。
 朝7時すぎに、にえさんがウチまで迎えにきて、まずは4人で月ヶ瀬へ。となかいさん、がんちょさんの2名と湖畔の里駐車場で合流の後、となかいさんの先導により、月ヶ瀬
〜名阪国道・五月橋IC〜上野IC〜伊賀上野駅前〜信楽〜国道307/422号
〜大津〜草津〜守山…のコースで琵琶湖大橋に向かうことに決まった。
 今日はその中で、上野〜大津間の約35kmにわたってGS1000まめしば号に試乗する機会に恵まれたので、昨日の牛乳広場と名田庄の道の駅周辺での試乗と合わせて、同車の印象についてまとめておきたい。
 まめしば号、あるいはまめしばさんについて語るとき、キャブレターの話を避けては通れない。で、まずは、牛乳広場でのCR→TMRの交換前/
交換後の印象から書き進める。
 私は、CRキャブ装着車には、バイカーズステーション編集長のCB830Fを筆頭に、いろんなところでいろんなマシンに乗っており、最近ではBS誌2009年2月号に登場した沖本さんのXV750E改1100に試乗させてもらって感銘を受けたばかりだ。
 一方、 TMR装着車は、BS誌のレース用キャブ3種比較(2004年5月号)で編集長のマシンに乗ったのと、ク

ラブSRXのOh!磯さんのSRX6に乗せてもらった以外、あまり経験がない。
 CRを装着したまめしば号のエンジンは、とても優しい感じがした。開けやすさと、開けたときの神経質ではない反応が、そう感じさせた理由ではないかと思う。過去に経験のある“よく調教された”CR装着車が、わずかとはいえ感じさせた“もっさり感”がなく、かといって調教不良のCR装着車が持つ乱暴さは微塵もない。ストリートユースを前提にした適切な口径と、公道を実走しながらセッティングを詰めた成果だろう。
 続いてTMR。 もっとワクワクさせる“何か”を期待したのだが、全然そんなことはなく、やや拍子抜け。エンジンと乗り手と走る場所が同じなら、違うキャブでも印象は似ていて当たり前…という当然のこと(実現は難しい)に気がついた。私が今まで経験したり人から聞いたりしていた TMRの特徴というのは、ひょっとすると特徴などではなく、ただの調教不足だったのではないか( Oh!磯号を除く)という気がしてきた。
 とはいえ、 もちろんCRとTMRの違いはある。 まず、TMRのほうが低回転/低開度でのレスポンス/トルク感ともに優っている。 TMRよりもCRのほうが開けやすいと感じたのは、主にこの部分の差だ。その後の加速は、どこまでも一様に伸びていくかのようなTMRに対して、 CRはあるところまでプログレッシブにトルクが立ち上がり、あるところからゆるやかに伸びが弱まる感じだ。
 CR→TMRの順に試乗したから、 最初はこれがGS1000の特性なのかと思
ったが、どうやらそうではなさそう

だ。実際のトルク特性はどうだか知らないが、中間の盛り上がりのおかげで、加速中に開けすぎてもすぐに追いついてきてくれるのがCR、やや
“待ち”が入るのが TMRという気がした。これを逆手にとって、先回りして開度を高め“待ち”をうまく利用して駆動力を溜めておくこともできそうだが、私の手に負える状態ではないので、試してはいない。
 いずれにせよ、私レベルの下手っぴが、短時間の試乗でそこまで分析できたというのはスゴいことで、2種のキャブがそれぞれ群を抜いて高いレベルにメンテナンス&セッティングされていた証しである。
 続いて車体まわり。まず、最初に跨がってから牛乳広場を出るまでの間に、以下のことを感じた。
 転がりとロール方向への動きが軽い。両手両足の操作系パーツの位置が絶妙。見晴らしが良い。ステアリングヘッドの動きが良い。Uターンが非常に楽。見晴らしの良さ以外はすべて、日ごろのメンテナンスの成果であるはずで、広場を出るまでの印象が良くないマシンは、たいていその後の印象もあまり良くないものだ。その点、まめしば号は何の不安もなく、期待を持って表の道を峠に向かって走りだすことができた。
 車体まわりで最も印象に残っているのは高い剛性感だ。乗車姿勢はま
ったく異なるし、実際の剛性値にも大差があるはずだが、フラットな路面を軽く流しているときは、現代のスーパースポーツに似た(そしてたぶんそれらを超えた)無駄な動きのないスタビリティーの高さを感じさせてくれる。フリクションの小さな
桜舞い散る奈良県月ヶ瀬・湖畔の里駐車場に佇む、まめしばさんとGS1000。後方は同じく相模の国のooさんのRG500Γ。
ホイールベースと、リアタイヤから後方へのはみ出しを測ったのは、企業スパイではなく、整備台に乗るかどうかの判定のため。
ホイールベースは、XJ900が1480mm、GS1000が1500mm。どちらも、現代のマシンよりも大きく、重く、高く、長いが、狭い。
サスペンションに初期荷重の大きなバネを組み合わせた成果だろう。
 タイヤは、上に書いた車体の特性によくマッチしている。倒し込みから旋回にかけてのリーンアングルの増え方/舵角のつき方/旋回力の高まり方、この3者の関係が素直かつ変化がスムーズで、浅めのリーンアングル/小さめの舵角ながら、十分な旋回力を発揮してくれる。
 申し分のないタイヤなのだが、なんでもかんでも自分でやろうとして仕事を背負込みすぎた生真面目な中間管理職…みたいなところがあり、私が部下なら、たまには飲みに連れていってくれて、グチのひとつでも聞かせてくれればもっと人間的に親しめるのに…と感じるだろう。いやまあ、つまり、もう少し、している仕事の大変さとか自分の有能さを、乗り手に伝えてくれてもいいような気がした…というわけだ。
 牛乳広場から深見トンネル入り口
までの区間を、 CRとTMRでそれぞれ往復し、主にキャブの比較をしたあと、名田庄の道の駅から小浜方面への数kmの区間では、 TMR装着状態での高速クルージングを試してみた。
 ここで感じたのは、高速作動・微小ストローク時の衝撃吸収性の低さによる乗り心地の悪さだ。乗り心地は我慢するとしても、橋の継ぎ目などを横切るとハンドルが振れ、ハンドルを押さえ込むと車体が暴れる。
 旋回中よりも直進状態のほうが、そして、定常走行中よりも加速中のほうが症状が出やすかったので、伸び切り付近でフォークを動きやすくしてやるとともに、リバウンドストローク少し増やせば解決するかもし

れない。リアはフロントほどの固さは感じさせないが、もう少し全体に沈下量が増えれば良いと感じた。
 短時間でいろんな情報を収集し、分析しながら走っていた昨日とは異なり、今日は、田舎の市街地〜舗装林道的な細い山道〜里山を縫うアップダウンのある田舎道〜整備された3桁国道のゆったりクルージング〜
100km/h超のコーナリングが無理なくできる高速コーナーと、その気になれば楽に200km/hに届く見通しの良い直線を組み合わせた山間のバイパス…というルートを、合計35kmにわたって試乗することができた。
 昨日とは異なり、細かいことを気にせず、ゆったり走っているときのまめしば号には、意外に“柔”なところがあるのに気がついた。
 特筆すべき点は、極低速での直進性が非常に高いこと。安定性と書くと誤解されそうなので直進性と書いた。もちろん、直進性が高いから安定性も抜群なのだが、これは動きにくさからくる“どっしり”系の安定感ではなく、動きやすさに根ざした
“巧みなバランス”による直進性の良さ/安定感の高さである。“どっしり系”が速度の低下とともにフラつくのに対し、まめしば号は、両手放しでもエンストするまで直進するんじゃないかって感じである。
 これは、言うのはたやすいが、実現し、維持していくのは大変なことだ。前後サスペンションの各可動部がすべて漏れなく(一般的なレベルを超えて)良好に動き、ブレーキの引きずりがなく、ホイールベアリングの回転がスムーズで、しかもステアリングヘッドが軽く敏感に反応し

なければ、こうはならない。セットアップの方向は異なるが、マシンから体に伝わってくる情報の質と数には、私のXJ900や、にえさんのRZ250に似たところがあるように思った。
 ただし、情報の質と数は似ているが、まめしば号のピーク値が低いのは、おそらくタイヤによるもので、スポーツライディングにおける集中力を高めたい彼がこのタイヤを選んだのは正解だったと思う。
 残念だったのは、私のテストコースである国道422号の 甲賀〜大津市境付近での高速走行時に、昨日よりも乗り心地が悪化したように感じた点だ。名田庄よりも少々路面が荒れているのと、10℃近い気温差のせいでタイヤもフォークオイルも硬めだ
ったのが原因かもしれない。
 この区間で感じた美点は、高速走行中にさらに加速しようとしたときの、過不足のないスロットルレスポンスと強烈な加速感だ。昨日とは異なり、リアに10kg近い荷物を積んでいたのが良い方向に作用しているようで、そういった場面での直進安定性も昨日より高く感じた。
 欲を言えば、前後ともあと1〜2mmの範囲で車高/プリロードをいじってみると、さらに素晴らしい、ライダーが曲がろうとしない限り矢のようにスムーズに突き進む“ディメンションのツボ”が見つかるはずだ。
 “剛”のまめしば号が、現在の良さをキープしたまま“柔”の要素を採り入れようとし、逆のことを私が考えていた、まさにその最中の交換試乗は、2台のマシンとそのチューナーにとって、かけがえのない収穫だったのは間違いない。


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