XJ900の爽快チューン
2009年4月11日 - 2009年第2回変態オヤジツーリング・交換試乗会つき
     
グローリーホール前の道端に並んだ参加車両の一部。フェンスの向こうは名神高速・京都南インターの出口車線である。
高速をくぐり、春爛漫の桂川沿いの道を、渡月橋目指して動きだした。
 台数の多いツーリングでは、先頭は最後尾を過度に気にせず、最後尾は先頭を無理に追わず、各人が無理のないペースで走りつつ、仮に途中で同行者を見失っても、まったく不安を感じることなく次の集合場所に向かって走れなければならない。
 気持ちの余裕は安全につながる。珍しく下見をし、ルートマップを作
ったのも、後続の不安をなくせば、参加者全員が気持ちの余裕を増せると考えたからだ。市街地を避け、桂川沿いの道を選んだのも狙いは同じで、見通しが良く、信号も少ないので、少なくともここを走っている間は、隊列のどのポジションにいても全体を見わたせると考えたからだ。
 さらに、より安心感を高めるために、先頭の私とアンカーを務めてくださった“となかい”さんの間で、信号待ちで追いついたら、となかいさんが手を上げ、それを確認したら私が手を上げる…というサインを申し合わせた。これはとても有効で、“みんな揃ってる”という安心感を持って走り続けることができた。
 3月7日のツーリングが、あまりにも楽しく、ご参加いただいた方々にも好評だったので、私には珍しく、早々に次の企画を練った…というと聞こえが良いが、とりあえず日にちだけは1カ月前に決めた。
 ちょうどその頃、ネット上で知り合った“まめしば”さんが ETCを取りつけた…と、彼自身のブログに書

さんだ。11日の午前0時すぎに京都東ICに着いたまめしばさんとooさんは、そこから遠くない場所で喫茶K保さんが営む福祉施設で宿泊の後、XV750Eに乗る喫茶K保さんの案内により、無事集合場所に到着された。
 そのときすでに、集合場所にお借りしたグローリーホールの駐車場と向かいの道端には20台近くの変わっ
いていた。土日なら往復2000円の高速代で来れるから…と、冗談半分で次のツーリングにお誘いした。
 紆余曲折の末、瓢箪から駒ならぬ冗談からまめしばが実現の運びとなり、ご近所のooさんとともに、金曜の夜にこちらに向けて出発された。
「うちにお泊まりやす」と、ナイスなご提案をくださったのが喫茶K保
たバイクが並び、オーナーと思しき変なオヤジたちがたむろしていた。
 ここに集まった台数は、21台とも23台とも言われているが、正確な数は誰に聞いてもわからない。
 予定の8:00に遅れること数分、変わったバイクに乗る変なオヤジ(オヤジっぽい女性1名を含む)の集団は、京都名物ラブホ街を抜け、名神
桂川の堤防上を延々と嵐山まで続く“抜け道”にて。信号の左手には桂離宮の庭が広がる。手前はRZ250の“にえ”さん。
ウソのように空いていた渡月橋からの眺め。手前の山は古くから多くの歌に詠まれた小倉山。左奥に法輪寺の塔も見える。
 桂川沿いの道を走りながら“天は変態オヤジに味方せり!”と叫びたい気分だった。おまけにこの日は、花見のピークの週末なのに、時間が早かったせいか嵐山に着いてもクルマは少なく、あの渡月橋の上で青信号なのに停車し、後続車が来るまでに写真が撮れるほど。ここでは交通事情も変態オヤジの味方だった。
 そんなわけで、拍子抜けするほどすんなりと嵐山を通過し、あまりに道が空いているので広沢池の畔で臨時停車。ここで隊列を整え、ひと山越えて、いよいよ周山街道に入る。
 高尾の観光駐車場でトイレ休憩の後は、抑えるべきところはしっかり抑え、そうでないところは気持ちよく走るという、いつものペースで牛乳広場を目指す…はずだったが、どうやらこの日は“そうではないところ”にある緩めのコーナーでのペースが少々高くなっていたようだ。
 いつもはブレーキをかけずに入っている緩めのコーナーにブレーキをかけて入っている。つまり、手前での速度がそれだけ高くなっているのだ。安全マージンを削っているわけではなく、より高い速度/強いブレ
ーキングにおいて、以前と同じ安全マージンをキープしているのだ。
 やはりこれは、カートリッジエミ
ュレーターの装着によって、中高速作動域での圧側ダンピングフォースが強まり、高い速度からの強いブレ
ーキングが不安なくできるようにな
ったおかげとしか考えられない。
 そんなわけで、思ったより早く、道の駅“美山ふれあい広場”(仲間うちでの呼び名は“牛乳広場”)に着いた。ここでさらに3名が合流し総勢25名程度に膨れ上がった変態集団は、ガラガラだった牛乳広場の一角に陣を構え、変態オヤジツーリングの恒例行事になりつつある、おなじみの交換試乗会が始まった。
 私はもうすでに、ここに集まったマシンの半数近くに、以前どこかで試乗させてもらっているから、ここでは遠慮気味に、 SSさんのFZ750、まめしばさんのGS1000、SDRのKさんの友人のVTR1000F、以前乗り損ねた
ほりさんのSRX600、 yajiさんとOクンの2台のXJ750E(この2台は以前にも何度か試乗しているが)の合わせて6台にしか試乗しなかった。
 SSさんのFZ750は、 さすが元ドーバーレーサーだけあって、スパルタンな印象だ。足まわりは前後ともサンダーエース(YZF1000R)のものに換装されている。走りだす前から、このマシンの実力を引き出すのは諦めており、いつもの自分のペースで楽しませてもらうことにした。
 エンジンは…というか、キャブセ
ッティングは“私の乗り方”では、全閉から開け始めのツキが乱暴で、4000〜6000rpm あたりのトルクが痩せた感じがしたが、回転を高めに保ち、スロットルを開けていく速度を速めてやれば、前者は気にならないレベルに収まるはずだし、後者のトルク痩せは、そこまで回転を下げなければ大丈夫だ。 6000rpm以上はストレスなく回ってくれるから、気持ち良くサーキットを走れるはず。
 足まわりは痛く気に入った。フロントブレーキは、私が今まで乗ったどのマシンよりも私好みだ。効力/特性とも、群を抜いた“ベスト”と言い切りたい。これと比べれば、バイカーズステーション2007年12月号の“1000cc最速車4台徹底比較”で乗った4台など、効きは悪いしタッチは不快といった感じだ。
 フロントフォークの剛性感もスゴい。元々39mm径のインナーチューブを48mmに拡大しており、どれだけブレーキをかけてもビクともせず、し
っかりとタイヤを路面に押しつけている。ひょっとすると、この程度のフロントフォークは他にもあるかもしれないが、上記のブレーキと組み合わせたトータルのパフォーマンスは、やはり、このマシンでなければ味わえないと思う。目指す方向は異なるが、今後の爽快チューンに大きなヒントを与えてくれた。

国道162号に面した高雄観光駐車場にてトイレ休憩。何の打ち合わせもなしで、こんなに整然と並ぶと気持ちがいい。

牛乳広場で、SSさんのFZ750を取り巻く変態オヤジたち。ここを基地に、約2時間にわたって交換試乗会が繰り広げられた。

CRキャブで遠征を開始し、ここでひととおり試乗が終わった後、持ってきたTMRに交換するまめしばさんと彼の愛車。

私のXJ900に初試乗するまめしばさん。スロットルはほとんど開けなくても、ゆっくりクラッチをつなげば大丈夫ですよ〜。
 続いて、まめしば号を含む4台のマシンに試乗させてもらい、多くの方にXJ900に試乗していただいた。
 まめしば号には、この場でキャブ交換前のCR仕様/交換後のTMR仕様の両方に乗せてもらったのだが、名田庄でも乗り、翌日の朝練でも再試乗させてもらったので、12日のところでまとめて報告させていただく。
 もう1台、とても楽しみにしていたのがyajiさんのXJ750Eである。去年の4月12日、朽木の道の駅で初めてお会いしたときの悲惨な状態から一進一退を繰り返し、何度か、ご本人の口から“直った宣言”があったものの、実は少しも直っておらず、かといって原因がわからないのでツ
ーリング中の修理もできず、周りのみんなも頭を抱えていたのだった。

段増し”をしようとした。
 ところが、誰もフックレンチを持
っておらず、断念しようとしたところ、むらかみさんが「そんなん、手でできますわ」と言うではないか。半信半疑のまま、まめしばさんらが車体を持ち上げ、むらかみさんが抱きつくようにスプリングに体重をかけ、にえさんがアジャスターを回すと、あれま、いとも簡単にプリロード調整ができてしまった。
 牛乳広場での2時間少々は、前回の青土ダム湖畔での3時間よりも長く感じた。前回、11台ものマシンに試乗し、頭の中がオーバーフローしそうになったのを反省し、今回は試乗台数を絞ったからかもしれない。
 あるいは、とても寒く、風が強か
った前回とは異なり、暖かい春の日

足まわりをYZF1000R・サンダーエースのパーツで固めたSSさんのFZ750・ドーバーレーサー。最高のブレーキを味わった。
抑えた。3〜4台ならなまだしも、20数台のバイクが連なってハイスピードで駆け抜けるさまは、民家が点在するうららかな田園風景には似合わない。開けさえすれば速く走れるところで飛ばすより、ゆったり流しながらマシンとの対話を密にしたほうが、より深く“変態オヤジツーリング”ならではの楽しさを味わえるのではないかと考えている。
 ところが、前回3月7日のツーリング後“今度は原因がわかって修理したから大丈夫”的な連絡があった。
“ほんまかな? 今回も、狼少年ならぬ狼オヤジとちゃうんか〜?”と思いつつ、こわごわ発進してみたところ、何と、ゴギゴギもグラグラも跡形もなく消えており、よく整備されたボール&レースタイプのステアリングヘッドらしさを感じさせる操舵系の動きになっていた。ただ、もう1台のXJ750Eと比べ、明らかに尻下がりの姿勢が不自然に思えた。
 そのとき、その場でできる修理や調整は、即実行に移すのが変態オヤジツーリングの習わしである。yajiさんが見当たらないが、そんなことにはおかまいなく、周りにいた数人に声をかけ、とりあえずその場でできる“リアショックのプリロード1
差しのおかげで心身ともゆったりできたからかもしれない。試乗の合間に山里の春の景色と空気を満喫し、ツーリングの楽しさを噛み締めていたのは、私ひとりではないはずだ。
 予定の12:00になったので、 再び隊列を整えて牛乳広場を出、名田庄の道の駅に向かう。出発後まもなくさしかかる九鬼ケ坂は、今回のツーリングルート中、最もタイトな峠道である。いつもは、いくつかのコーナーで止むを得ず1速に入れてしまい、不快な思いをするのだが、今日は1回だけで済んだ。ここではいつもより安全マージンを多くとっていたはずなのに、コーナリング速度はむしろ、少々高まっていたようだ。
 九鬼ケ坂を下りてから、県境の堀越峠までの間は、とくに直線区間において、いつもよりかなりペースを
 最後の長い直線が終わり、堀越峠の登りにかかると、周囲の景色は一変する。ここからは、緩い登り坂の中速コーナーが連続する、いわゆる走り屋好みの(私は苦手の)ワインディングロードである。
 ここはロール方向に積極的に体重移動をすればうまく走れる…と、想像だけでなく、実際にやってみた経験からもわかっているのだが、今ここでそれをしてしまうと、せっかく見えかけてきた“旋回性の高いマシン造り”を見失いそうなので、まめしばさんをはじめとする数人に後ろから突かれているのはわかっていたが、頑として自分のスタイルを崩さなかった。名田庄の道の駅まで、あと数kmなんだから、もっと早めに進路を譲れば良かった…と、今になって少々反省している。
大先輩の久谷さんもR100Sで駆けつけてくれ、豪快なコーナリングを披露してくれた。未だ現役、64歳の峠オヤジである。
OクンのXJ750Eを“寄ってたかって”修理中。にえさんがフォークとホイール、私がマスターシリンダーの点検/調整を担当した。
 名田庄の道の駅には、予定どおり12時半頃に到着。ここで各自昼食をとってもらいながら、交換試乗の続きやセッティング、修理など、思い思いにすごしてもらうはずだったのだが、そこは三度の飯よりバイクが好きな変態オヤジ集団である。そそくさと食べ物を腹に掻き込むと、牛乳広場の続きが始まった。
 参加者のブログを見わたしても、ここで撮った写真がほとんどないのは、いかにみんな試乗と修理に熱中していたかの証しである。電気系に不調を来していたtetsuさんのGX750は、ここで名医・コンプライアンスさんの診断を受け、応急処置の後、完全治癒への処方箋をもらった。
 名田庄の道の駅から小浜側には、交通量が少なく、道幅が広く、カーブが緩く、見通しの良い区間が続いている。以前、ここでむらかみさんのXJR1200に試乗し、 高回転でのウルトラスムーズなエンジンフィーリングと、高速域での安定感と過不足のない旋回性に感銘を受けた。
 で、その後長らく試乗していなか
ったむらかみ号に、このあたりでもう一度乗せてもらいたくなり、上記のコースを往復した。エンジンは相変わらず、ほれぼれするような回り方をし、車体は以前の良さをそのままに“わかりやすさ”加わっている感じだ。むらかみ号に限らず、変態オヤジが手がけるマシンはどれも、時間の経過とともに、どんどん良くなっていくようである。
 名田庄からあとは、途中合流を狙
っている人もいそうにないので、予定よりやや遅れて出発した。ここか

ら先は、上に書いたような非常に走りがいのある区間である。迷いそうな箇所もないので、数台に先行してもらい、私は第二集団に入った。
 たまには前車の走りを見ながらのツーリングもいいもんだ…と思っていたのに、クルマを抜くのに手間どるうちに先頭集団と離れてしまい、結局セカンドグループのトップにな
ってしまったのは少々残念だった。
 小浜市内の渋滞を避けるべく、国道から右折して、いつものように若狭西街道に入る。ここから先は再び先頭を走り、国道27号に出たところで半数が給油。私も、ここで満タンにしておけば明日いっぱい走れそうなので、好きになれないシェルではあったが、ここで給油した。朝、集合場所に向かう途中で給油してから209km走行し11.55L消費。 18.1km/Lだから、いつもと変わらないが、今日の走りのペースを考えると、もう少し良くてもいいような気がする。
 スタンドを出る前に、全員に“予定していた熊川の道の駅では停まらない”と伝達し、 国道27号から303号に入り、 途中で抜け道をして367号へ。そして、予定より1時間弱遅れて朽木の道の駅に着いた。
 ここから先、京都市内へは鯖街道で約1時間で行けるが、帰りを急いでいた大阪組は湖北を回って木之本から北陸道〜名神高速…のルートで帰路につくことに。残りは鯖街道を南下し、となかいさん夫妻は途中越で別れて湖東方面へ、その他は京都市内で夕食をとってから解散することで相談がまとまった。
 ところが、これで終わらないのが

変態オヤジの変態たるゆえん。鯖街道〜大原〜江文峠〜静原〜市原〜堀川通〜新油小路…のルートで市内に入り、京都南ICに近い食堂の駐車場に入ったとき、市内の信号待ちからOクンのXJ750Eと交換していたまめしばさんが「どうもフロントフォークの動きが…」なんて言うものだから、さっそくチェックが始まった。
 調べてみると、フロントフォークの動きが悪いだけでなく、ブレーキもひきずっていた。フォークの動きは、フロントアクスルの締めつけをやり直して(アクスルホルダーを緩め、数回ストロークさせて位置決め後に締めつけて)かなり改善した。
 ところがブレーキは、それだけでは直らず、別のところに原因があった。ベルリンガーのマスターシリンダーにありがちな、レバーのピボットボルトの締めすぎによるピストンの微妙な戻り不良だとわかるまで、少々時間はかかったが、大阪まで高速に乗って帰っても、何とか“引きずり→発熱→パッド焼損&ディスク変形”を回避できそうなところまで修理ができ、みんな、一仕事終えた爽快な気分で食卓を囲んだ。
 食事の後、むらかみさんは京都市内へ、にえさんは大阪方面へそれぞれ向かい、私は、ウチにお泊まりいただくことになったooさんとまめしばさん、 そして奈良のkei-1さんを含む4人で、通い慣れた道をGARAGE
80へと向かったのである。
 私には走り慣れた道をつないだだけのコースなのに、まるで初めての道のように新鮮で、楽しく、心満たされるツーリングだった。


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