最近、アンダーブラケットからインナーチューブを抜くことはほとんどない。メンドクサいことをしたくないというのが一番の理由だが、ガレージにバイスがないので、抜いてしまうとインナーチューブを支えるのに苦労するからでもある。 そういった消極的な理由は別として、この方法には素晴らしい長所がある。ホイールという“重し”を外した状態でのフロントフォークの作動性がチェックできることだ。 これはとても意地悪なテストであり、実走行ではもちろん、フロントホイールをジャッキアップしたくらいではわからない微小な摺動抵抗の差が明らかになる。オイルとスプリングを抜いてスムーズに動けば、それらを入れて組み立て、ホイールを取りつけ、車重がかかった状態での動きが悪かろうはずがない。 で、今回のフォークシリンダー伸び側オリフィス面取りのときも、インナーチューブはアンダーブラケットから抜かず、左右のアウターチュ ーブとそれをつなぐスタビライザーもそのままだった。上の写真の状態で(アクスルは抜いて)フォークシリンダー取りつけボルト(フロントフォーク組み立てボルト)を外し、フォークシリンダーをインナーチュ ーブ上端から抜き出した。 オリフィス面取りを済ませたフォ ークシリンダーは、磁石で吊り下げてインナーチューブ上端から挿入。リバウンドスプリングとテーパースピンドル(オイルロックピース)を貫通し、フォークシリンダーの中心とアウターチューブ底部穴の中心が一致しているのをインナーチューブ上端から覗き込んで確認した後、底部のボルトを仮締めした。 ここで仮締めしかしないのは、底 |
| 部のボルトによってアウターチューブに固定されるフォークシリンダーとテーパースピンドルの2点を、最もインナーチューブが摺動しやすい位置に取りつけるためだ。底部のボルトを無造作に締めると、テーパースピンドルがアウターチューブに対して偏心して固定されてしまい、インナーチューブが深く入り込んだときに強く擦れ、テーパースピンドルに偏摩耗が生じたり、オイルロックが正常に効かなかったりする。 底部のボルトは仮締めのまま作動チェックをする。全伸位置から全屈位置まで、スコスコと非常に軽く動くのを確認。続いて、仮締めのままのボルトを正しく締めるための準備としてフォークオイルを入れる。油面調整はあとでするので、ここではテキトーに200ccくらいである。 変な音に気がついたのはこの直後だ。フォークオイルのエア抜きのために伸縮を繰り返している途中で、全屈から伸び方向に思い切り引っ張 ってみたのだ。いくら伸び側オリフ ィスの面取りをした直後とはいえ、手で引っ張って違いがわかるはずはないのだが、やってみたくなる気持ちはおわかりいただけると思う。 その瞬間“バコッ”という大きな音とともに、両手に、フォークの伸びにブレーキがかかったところで何かに追突され、再び動きだしたような感じの衝撃が伝わった。 びっくりした。これは初めて体験する現象だ。何がなんだかわからないまま、とりあえずもう一度同じことをしてみた。結果は同じく“バコ ッ”だ。さらにもう一度同じことをするのは芸がないので、そこからあとは、スタート位置を全屈だけではなく、いろいろ変えてみたり、引っ張る速度を加減してみたりした。 |