スタビライザーを締めつけても左右のアウターチューブが上下にズレないようにした後は、同じく、その締めつけによって左右のアウターチ ューブ(上端部)が、内側に引っ張られたり外側に広げられたりしないようにしなければならない。 内側に引っ張られる=インナーチ ューブ間隔に対してアウターチューブ間隔が狭まる/外側に広げられる =インナーチューブ間隔に対してアウターチューブ間隔が広がる…だから、どちらの場合も、インナーチュ ーブ〜アウターチューブ間に無用な側圧がかかり、摺動抵抗が増加してフォークの動きが著しく悪化する。 私は、ここでもまた、22日に書いたような意地悪なテストをした。まず、22日の写真の状態からアクスルとスタビライザーを外し、左右のアウターチューブが単独で伸縮できるようにする。フォークスプリングは入っておらず、インナーチューブ頂部のキャップも取りつけていない。 この状態で、片側のアウターチュ ーブを、オイルロックが効く直前まで持ち上げて静かに手を離すと、ゆ っくりと自重によって降下し、伸び切ったところで止まる。私の場合は10秒前後だが、時間の長短はどうだ っていい。外から力を加えず、自重だけで、最初から最後までスムーズに動くことが大切である。 反対側のフォークでも同じことをし、そちらも同様に、上から下までスムーズに動くのを確認するとともに、そのときの動き方を覚えておくか、降下に要する時間を(体内時計でいいから)測っておく。 続いて、スタビライザーを取りつ |
| けた状態で同じテストをする。摺動抵抗は2倍になるが、重りの重量は2倍以上(アウターチューブ×2+スタビライザー)だから、無用な側圧が生じていなければ、単独のときよりも速く降下するはずである。 が、そんなのは夢物語であり、実際には、途中で引っかからなければ御の字で、ヒドい場合には、手を離しただけでは動き始めようとしないほど摺動抵抗が増えている。 で、これが、とりあえず“引っかかりなく最後まで降下する”ようになるまで、スタビライザーの取りつけ位置の微調整を繰り返した。 左右のフォーク間隔の基準はアンダーブラケットだから、スタビライザーの取りつけは、最もアンダーブラケットに近づいた位置、つまり、全屈状態で行うのは当然だが、それだけでは決してうまくいかない。 スタビライザー取りつけボルトを締めつけることにより、左右のアウターチューブが狭まる/広がる/ねじれるのには、両者の4箇所の接触面の微妙な傾きや荒れ、ボルト座面とその当たり面の傾き/荒れ/陥没/潤滑不良など多くの原因がある。 が、こんなのを、すべてクリアするのは無理である。再現性という観点からは、できるだけ理想に近づけておきたいが、とりあえず組み立てて問題がなく、次に外すまでの間、それがキープできればOK…と、割り切らなければ先に進まない。 この“理想に近づける”ために、以前から私がしてきたのは、アウタ ーチューブ/スタビライザーそれぞれの接触面にオイルストーンをかけて荒れを平し、ボルト穴の縁に面取 |
| りをし、4本の取りつけボルトをSTDの六角穴つきボルト(座面の面圧が高く、陥没を生じやすい)からフランジつき六角ボルトに交換する…などの諸対策だったが、今回、それらに加え、締めつけ時の座面の引っかかりによるズレを逃がすべく、フランジ下にプレーンワッシャを1枚追加し、それの両面にスレッドコンパウンドペーストを塗り、締め終わり付近のズレが極力起きにくくした。 今さら…ではあるが“ねじ締結と摩擦係数”と題する、興味深く、かつ非常にわかりやすいレポートを発見したので、一読をおすすめする。 さて、こうして、納得できるスタビライザーの取りつけができたあとは、ここまでの努力が水泡に帰さないように細心の注意を払いながらフロントホイールを取りつけ(アクスルを取りつけ)て、フロントフォークを完成させなければならない。 これについては、かなり長くなりそうなので、いずれどこかに書くとして、ここでの狙いは、やはり“フロントフォークの伸縮を妨げない” である。アクスル周りの構造によって手順は異なるが、どんな構造であ っても、アクスルの締めつけ(またはアクスルに対する片側アウターチ ューブの位置決め)が、左右のフォ ークに狭め/広げ/ねじれを与えないのはもちろん、昨日書いた“アクスルがスッと通り、スコスコ動く” ときの左右のアウターチューブの位置関係を崩してはならない。 ここを念入りに組み立てれば、フ ォークの動きが良くなるだけではなく、ホイールの回りが軽くなり、ブレーキのフィーリングも改善する。 |