XJ900の爽快チューン
2010年12月7日 - BELZER, MY EVERLASTING TOOLS   
     
ネットオークションで入手した3/8ソケットドライバー“7757”。ドライバーと同じ、略四角形断面の赤いグリップなのが嬉しい。
製造年代不明のDOWIDATのボックスソケット。細かなショット加工の後にメッキをした表面は、独特の質感を持っている。
1992年の南アフリカGP取材のときに、現地の工具店で買ったGEDOREのモンキーレンチ。製造国は不明。南ア製かも?
 久しぶりに工具を買った。ネットオークションで工具を買ったのは初めてだ。しかも中古品。それでも買わずにいられなかったのは、このソケットドライバーは、ベルツァーの最良の時代の製品だからだ。
 ドイツの工具メーカーといえば、日本ではハゼットとスタビレーが有名で、この2社以外のドイツ製工具(レンチ類)を見かけることはほとんどない。しかし、これら2社と並ぶ総合工具メーカーが、かつては3社あった。ベルツァー、ドヴィダッ

ト、そしてゲドーレである。
 この3社の歴史を書き出すときりがないので、超簡単に要約すると、GEDOREはドイツのReimscheidにあったDowidat家の3人のGebrüder(兄弟)
が設立した工具のメーカーであり、 GEbürder-DOwidat-REimscheidの頭2
文字ずつを合わせて社名にした。
 3兄弟のうち1人(Karl)は早く亡くなり、残った2人のうちWilliが独立してDOWIDATを創設。 Ottoが引き継いだGEDOREは今も健在である。
 一方BELZERは、 DOWIDATを併合し

てBELZER-DOWIDATという連合を作るが、この会社は BAHCOに買収され、続いてBAHCOを買収したSANDVIKに渡り、さらにその SANDVIKの工具部門が SNAP-ONに買収される(このときDOWIDATは分離して GEDOREに買収された)という数奇な運命をたどる。
 SANDVIKに買収された後も、 ダブルネーム“SANDVIK-BELZER”のロゴに名前を残していたのに、 SNAP-ON傘下となってからは BAHCOに統一され、BELZERのロゴの入った製品は作られていないようである。
最初期に買った3/8のボックスソケット(左)は、二面幅ごとに高さが異なるが、あとで追加した物(右)は同じ高さになっていた。
リアショックのプリロード調整になくてはならない“4108デュオグリップ”。装着には手間どるが、滑りを気にせず安心して作業可。
入手以来25年以上を経た今なお現役の“8000N”。上から3本目は先端を削り、厚さをキャブレターのジェットに合わせた。
 私がベルツァーを知ったのは、確か1982年頃だったと思う。行きつけの大阪・日本橋の大谷商店で、店主の大谷さんにいろんなお話をうかがう中で、優秀なドライバーの筆頭に挙げられたのがベルツァーだった。
 当時の私の基本工具セットは、コンビネーションレンチがハゼット化を終えたところで、+/−のドライバーはPB、3/8と1/2のボックスソケ
ットはKTC、L型六角棒レンチはPB、六角棒ソケットはハゼットのを買い揃えたばかり、ウォーターポンププ

ライヤーはクニペックス、ラジオペンチとニッパとモンキーレンチはバ
ーコというラインアップだった。
 種類を増やすだけでなく、すでに持っている工具をグレードアップしようとしていた私は、まず、+と−のドライバーに飛びつき、続いて、3/8のボックスソケットの 10〜19mmをベルツァーに置き換えた。
 そして“DUO GRIP”の名で知られるスロッテッドナットレンチも、清水の舞台から飛び降りた気持ちで、2本まとめ買いした。

 ベルツァーの製品は、とにかく高かった。だが、例えば−ドライバー
“8000N”シリーズの先端形状、3/8ボックスソケット“7400DM”の肉の薄さ、+ドライバー“8078”のフィ
ット感、デュオグリップ“4108”の安心感など、他では得られない優れた特徴の数々が私を虜にした。
 ただ、コンビネーションレンチやメガネレンチなどのデザイン(カタログで見ただけだが)は、どうも好きになれず、当時は見向きもしなか
ったのが、今になって悔やまれる。
1980年代初期の英文カタログ(左)と、同時期のDOWIDATの物(右)。真ん中は両者を合冊した1986年の総合カタログ。
スナップオンが欲しがったのは、この製造技術と設備では…という人もいる“1950・クロウフート”。あまりに高価なので未購入。
CuBe(カッパー・ベリリウム)を使ったノンスパーキングツールを多数作っていたのもベルツァーならでは。ひとつ買っときゃよかった。
 ベルツァーに限らず、ヨーロッパ製、中でもドイツ製の工具にぞっこんだった私にとって、1984年の渡欧(福田照男チームの一員として、オランダに本拠をおいてヨーロッパ各国のロードレースGPを転戦)は、ハゼットやベルツァーを買いまくるチ
ャンスになるはずだった。
 ところが、日本の工具専門店みたいに、いろんなメーカーの工具を一同に集めたような工具店はなかなか見当たらない。世話になったオランダ人のメカニックに“ハゼットやベ

ルツァーを置いている店”を尋ねても「なんでオマエはそんなに高いのを探してるんだ? オレは安くて良質なコレがお気に入りだぜ」と、見せてくれたのがゲドーレだった。
 そのとき初めて知ったゲドーレの第一印象は“ハゼットを少々雑にした感じ”であり、安くて良質と言われ、売ってる店を紹介してもらっても、買う気にはならなかった。ただその店はPBも扱っていたので、ボールポイントの六角棒ドライバーやオフセットドライバー、タガネ、ケガ

キ針、センターポンチなど、小物類は渡欧中にずいぶん増えた。
 行く前は買う気満々だったから、日本で手に入れたベルツァーのカタログを荷物に忍ばせ、毎日のように眺めていた。どうしても欲しかったのは、 3/8のフレキシブルボックスソケット“7410”と 1/2のボックスソケット“7800DM”、そして補充用の+/−ドライバー類だった。
 そして遂に、シーズンが終わり、マシンやスペアパーツを箱詰めしてロッテルダム港から日本に向けて発
1984年の渡欧中に買った唯一のベルツァー製品が、この“A7409LM”。土台部分のメッキの質感に惚れた(笑)。
年代により微妙に形状とロゴに違いがあるドライバーのグリップ。比較的新しい、尻が半球形の製品がお気に入り。
バーコ〜サンドビック時代のレンチのロゴ。昔の、製品の愛称(POLYGONやSUPER-BLOCKなど)の入ったのがホスィ(笑)。
送した後、遊びに行ったドイツのケルン近郊で“BELZER”の看板を掲げた工具問屋のような店を発見! 残念ながら“7410”も“7800DM”も在庫してなかったが、新製品と思しき3/8のロングパターンの 六角棒ソケ
ット“A7409LM”と、 補充用のドライバーを数本まとめ買いした。
 その後20年以上“7400DM”とドライバー類を愛用し続けながらも、それ以上ベルツァーの製品を増やすことはなかった。日本での入手は相変わらず困難だったことと、ボックス

ソケットもドライバーも非常に長持ちしたこと。その両方が原因だ。
 ところが、バーコによる買収を皮切りに次々とオーナーが変わり、ベルツァーらしくない製品が登場するのを見て危機感を感じた私は、再びベルツァー製品を買い漁り始めた。
 とある工具店では、残っていたドライバーを全部(といっても数本だが)を買い占め、また別の店では、使うアテがないにもかかわらず、デ
ィープオフセットのメガネレンチやコンビネーションレンチを衝動買い

したせいで、私の工具箱の中でハゼ
ットと双璧をなす所帯になった。
 ただ、常用しているのは、25年前と変わらず、+/−のドライバーとボックスソケットだけであり、その他はほとんど工具マニアのコレクシ
ョンといった感じである(笑)。
 容易に入手できるかどうかは別として、サンドビック時代以前に作られた“BELZER”ロゴ入りの新品が、未だ、少数とはいえ流通しているようなので、欲しい人は急いで入手したほうがよいかもしれない。
コレクションとしては貧相だが、使うアテのない工具を多数揃えるほどの金も根気も語学力もない(後ろのふたつは、今や必要)ので、これ以上、劇的に数が増える見込みはない。


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