XJ900の爽快チューン
2011年4月9日 - シールド型プラグコードを自作し、イグニッションコイル〜プラグを接続   
     
シールドをアースに落とすところを除き、ほぼ完成したプラグコード+プラグキャップ。左側の2気筒と右側の2気筒で、プラグコードの長さに大差が生じないようにしたので、左右は非対称。
 点火系のチューニングには、大きく分けて2つの考え方がある。ひとつはスパークプラグに火を飛びやすくするやり方、もうひとつは火を飛びにくくするやり方である。
 …てな暴論を書くのだから「そんなもん、飛びやすいほうがええに決まってるやないか、たわけが…」といった反論は想定内である(笑)。
 反論されるのも楽しみのひとつとはいえ、真の狙いはそこではなく、飛びやすいところに容易に飛ばすよりも、飛びにくいところに頑張って飛ばすほうが、結果として飛んだ火花は強力だと考えているからだ。

 で、私の場合、火を飛びにくくしているのがブリスクのスパークプラグで、そこに頑張って火を飛ばしているのがASウオタニのSPIIフルパワ
ーキットというわけである。
 このあたりの話は、 2008年の3月ごろのダイアリーに“進角特性(その1〜3)として書いており、とくに
(その3)に“スパークプラグに火が飛んで、圧縮された混合気が燃焼し始めるまでに、プラグとその周辺でどういうことが起きているか”とともに、沿面放電プラグ得失についてもまとめているので、興味のある方はご覧いただきたい。

 飛びにくいところに頑張って火を飛ばすというのは、大きな抵抗(電極間の隙間)に高い電圧をかけるということだから、低抵抗・低電圧のシステムと比べてリーク(漏電)しやすいという問題を抱えている。
 電気というヤツには“+と−の2点間の最も流れやすい経路を通る”
という性質があるから、スパークプラグの電極間隙間よりも抵抗の小さい経路があれば、そちらを流れてしまい、プラグには火が飛ばない。
 そこで今回のプラグコードの自作では、リークしにくさを重視し、絶縁性の高い線材を選択した。
     
プラグキャップに差し込む部分のみ、適合する外径のプラグコード(今回の改造前に使っていた物)を切り取って使用した。
高圧ケーブルの接続には、圧着部分のみにした丸型端子を使用。芯線を折り返した高圧ケーブルを絶縁材ごと差し込む。
     プラグキャップ先端のブーツは、STDよりガイシが細いブリスクに合わせ、スバル・インプレッサ用の純正品(右)に交換した。組み立てが終わった後、空気が通りそうな隙間をすべてMOS7でシールし、硬化してから次の作業(シールド装着)に移った。
シールドメッシュを撚りあわせたのでは美しく仕上げるのが困難と考え、メッシュの中に通したアース線。芯材は錫メッキ軟銅。シールドメッシュは、縮めると径が大きくなり、楽にワイヤーを通すことができる。メッシュはアラミド繊維に錫をメッキしたもの。引っ張ってメッシュを縮め、外側を透明の熱収縮チューブでカバー。アース線は、メッシュから出る部分のみ被覆を残した。
 絶縁性が高いというのは、例えばイグニッションコイル〜スパークプラグ間のプラグコードが、途中でフレームに触れている(もちろんコードの外皮が、である)ような場合、芯線(+)とフレーム(−)の間にリークが生じにくいということである。
 接近しているからリークするのであって、離せば大丈夫…という考えは、12ボルトには通用しても、イグニッションコイル2次側には通用しない。数万ボルトに達するスパーク電流にとって、水分を含んだ(通常の湿度の)空気は、良導体なのだ。
 だから、プラグコードの絶縁性を

考えるうえで重要なのは、いかにして芯線を外気から遮断するか、言い替えれば、芯線と外気の間を絶縁材で隙間なく埋めつくすかである。
 そんなもの、それ専用に作られたプラグコードを使えばいい…と、最初は考えた。ところが、これがなかなか手に入らない。前作はベスパやランブレッタの補修用プラグコードだったし、今回は結局、TV受信機の内部に使われる、定格50キロボルトの高圧ケーブルを使うことにした。
 この高圧ケーブルは、絶縁性に優れたポリエチレンに電子線を照射して網状の分子構造にした物を絶縁材

に使っており、 外径5.2mmという細さでありながら、プラグコードに使うには充分な絶縁性能が得られそうな気がしたのが選定の理由である。
 ただ、コード本体がいくら高い絶縁性を誇っていても、末端の処理をうまくしないと、そこでリークしてしまうから、高圧ケーブルの末端とアースの間に充分な隙間を設けたうえで、その隙間に接着剤を充填し、空気が入らないようにした。
 ここまでで、プラグコードとしての機能には問題がない。しかし、ただそれだけではつまらないので、コ
ードの保護を兼ねて導電性メッシュ
適度に張りのある高圧ケーブルのおかげで、途中のクランプは1カ所のみ。ベッド状のブラケット+ベルクロテープで固定した。アースはアースらしい色でいこうとしたが、目立ちすぎるので、黒いビニールチューブに通し、フィンに開けた穴にネジ留めした。
コイル側は、最初、このような状態だったが、シールド端部〜芯線露出部の距離が足りないと判明し、あとで作り直した。とりあえず4本のプラグコードをイグニッションコイルに差し込んだところ。このままでは嵌め合わせが弱く、抜け止めが欲しい。
チューブでシールドし、シールドをアースに落とすことにした。
 今回の改造でクランクケース背後にマウントしたイグニッションコイルのおかげで、 プラグコードがSTDよりもはるかに長くなっていることもあって、本来プラグコード用ではない(=抵抗成分が入っていない)高圧ケーブルのままでは電磁波を撒き散らす恐れがあり、その対策にはシールドで覆ってアースするのが最も効果的だと考えたからである。
 また、これにより、プラグコード同士、あるいはフレームやエンジン部材とプラグコードをどんなに近づ

けようと、外に向かってリークしない(リークするとすれば芯線〜シールド間である)から、取り回しの自由度は高く、整備中に触るときにもビクビクしなくていい(笑)。
 さらに、芯線に並行して長い距離でアース線を這わしたのと同等の効果があることから、ここに生じる容量がコンデンサーとして働き、プラグギャップでの放電特性に変化が生じるだろうことは想像に難くない。
 ものの本によると、容量放電の増大は誘導放電の減衰を招き、混合気の着火性にとっては決してよい方向ではないとのこと。しかし、私のマ

シンは、巨大な火花間隙を持つブリスクのプラグと、非常に高い2次電圧を発生させるASウオタニのSPIIコイルの組み合わせにより、誘導放電の能力は十二分に高いはず。
 それなら、火花間隙の絶縁破壊に威力を発揮する容量放電の強化は、必ずしも着火性を悪化させるものではなく、むしろ、トータルで見ればメリットがデメリットを上まわる可能性がありそうな気がする。
 今回の改造で撤去したカーマンのパワーブーストを上まわる効果が体感できれば、とりあえずは作戦成功と考えてよさそうだ。
プラグキャップの抵抗を測ったら、2メガオームの個体があり(通常は10キロオーム前後)、本体を割ってバラしてみたところ。
左の写真に見える黒い棒が抵抗素子と思われ、抵抗値を測るも導通がなかったので、手持ちの新品キャップに交換した。
内部のパーツを抜いているのに、なぜか2.34メガオーム。この件については、面倒なので、深く追求しないことにした(笑)。


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