2011年6月14日 - 操安性の変化、あるいはディメンションのツボについて考える |
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個人的に“トラクションのツボ” と名づけたポイント(またはエリア)がある。でも、それがどこにあるかは知らない(笑)。場所はわからないのに、そこを突いたことはわかる。だから“ある”と確信している。 トラクションのツボを突けるかどうかは、車体のディメンションによ って決まる。なので、突いたときの状態を“ディメンションのツボにハマった”と形容している。 ディメンションのツボにハマった …というのは、具体的には、直進中に加速しようとしたとき、駆動力によって車体が真っ直ぐ前へ押し出される感触が得られ、押し出される向きと進行方向(通常は路面と平行)が一致し、無駄なく・力強く車体が加速していくのが実感できる状態…と言えばいいだろうか。 逆に、ツボにハマっていないときは、スロットルを開けるとエンジン回転が高まり、ただなんとなく速度が上昇するのはわかっても、駆動力によって前に押し出される感触は得られない。いや、それどころか“方向が定まった力”の存在そのものに気づかないことが多い。 |
| 入手以来9年、98500kmに渡る長いつきあいの中で、私が“ディメンシ ョンのツボにハマった”と感じたのは過去に2回だけ。今回を含めてもたった3回でしかない。 2回目は、かわぐちさんのSRX600と2台でテストコースに出かけ、あ っちはキャブ、こっちは足まわりをいじっては交換試乗して互いのマシンを評価していたときのことだ。 途中でツボにハマった XJ900に試乗したかわぐちさんが「この、前に出る感じ、スゴいでんなあ…どこをどういじらはったんでっか? @_@」と驚いていたから“ディメンションのツボにハマった”と呼べる状態があるということは、私の勘違いや単なる希望的観測ではないはずだ。 しかし、過去の“ツボにハマった状態”は、2回とも長続きしなかった。ごそごそといじり続けているうちに、徐々にツボから外れ、気づいたときには、以前と変わらない普通のマシンになっていた。 「どこをどういじらはったんでっか ?」に対する答えは、残念ながら、今となってはよくわからない。初めてツボにハマったと実感したときの |
| メモを読み返すと、リアの車高(リアショックの全長)を調整している途中で“+4でも+5でもなく、+4.5がベスト”と書いている。そして、かわぐちさんが驚いた2回目は、リアのプリロードをあれこれ調整している途中だったから、リアの車高が影響しているのは確かだ。 ただ、リアショックだけを“そのとき”と同じようにセットしたところで“ツボにハマった状態”は再現できない。フロントフォークの仕様/ガソリン残量や乗車姿勢を含む車重配分/スロットルを開けてからの駆動力の立ち上がり具合/タイヤと路面の状況など、多くの条件がうまく重なったときにのみ、ツボにハマ ってくれるような気がする。 1年半の休車期間中、いろんなところに手を加えた今回は、いったい何が効いてディメンションのツボにハマったのか、路上復帰した当初はわからなかった。いや、正直に言うと、リアのプリロードを3mm増やしたのが原因かと思っていた。 今回の改造では、バッテリーなどの移設によるフロント荷重の増加、キャリパーピストンとディスクの変 |
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更によるフロントブレーキの強化、上下のスライドメタル交換によるフロントフォーク作動性の向上といった、主としてブレーキング時のフロント沈下量が増大する要素が多い。 で、それに備えてフォークスプリングを新品に交換し、カートリッジエミュレーターのオリフィスに細工をしたりバルブスプリングを変更したりし、フォークオイル油面を高めるという、フロントの沈下量増加を抑えるセッティングを施した。 これらの相乗効果によって、走行1Gでのフロント沈下量が減り、定常走行時には以前よりも前上がりの姿勢になることが予想されたので、上に書いたようにリアショックのプリロードを3mm増やしたのである。 こうした場合、本来はフロントフ ォークの突き出しを増やして対処すべきところ、 私のXJ900は、もうすでにフルボトム時のアウターチューブ(ダストシール)〜アンダーブラケット間の隙間が4mmしかない。厚さ6mmのストロークセンサーを使用しているから、これ以上詰めたくなく、等価でないのは承知の上でリアのプリロードを増やしたのだった。 |
| ところが…である。その後リアシ ョックのプリロードを減らしても、フロントのダンパーセットをいじっても、今回の“ツボにハマった感” は、一向になくならないのだ。 それどころか、フロントフォークのセッティングが進むにつれて、ブレーキングにおいても、前輪がしっかり&無駄なく車体を引っ張っている感触が得られるようになった。 ここで突然サッカーボールを例に挙げると、蹴り出す場合は、加える力の方向に最適の入力位置があり、方向と位置がマッチしていれば、効率的に蹴り出すことができる。 トラップの場合も同じく、ボールを捉える位置(ボール表面のどの位置を捉えるか)と力の方向(この場合はボールから受け取った力を逃がす方向)がマッチしていれば、短時間でボールを支配下に置ける。 これと同じようなことが、オートバイが加速したり減速したりするときにも言えるのではないか。そして今回の改造においては、力の方向には大差がない代わり、車体重心の移動によって、以前と同じ向きで同じ大きさの力に対する反応の仕方に違 |
| いが生じているのではないか。 まことに残念ながら、ここからさらに論説を展開できる知識も経験もない私にとって、推論と呼べるのはここまでで、あとは妄想家の寝言だと考えていただきたい(笑)。 上記推論のもとになった現象が、私のマシンに固有のものなのか、シ ャフトドライブ車に特有のものなのか、あるいはオートバイという乗り物にとって普遍的なものなのか。そのあたりも、何とも判断しかねる。 ただ、今回の改造後のニューマシンでは“駆動力や制動力を推進力や減速力に変換する効率”が以前よりも高まっているのは体感的に明らかで、跨がって加速しながらイメージしているのは、鼻先でボールを推しつつ“ぐ〜ん”とダッシュするイルカの姿で、減速しながらイメージしているのは水上スキーである。 直進時だけでなく、コーナリングの変化も大きい。強めにブレーキを残した旋回(以前はしようという気にならなかった)が楽になり、立ち上がりでは“開けて起こす”と“開けずに起こさない”の他に“開けて曲げる”が選択肢に加わった。 |
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