たあと、今井さんは短いテストコースを数往復し、木陰にXJを停めた。一瞬、壊れたか…と思ったが(笑)、そうではなく、ただ、暑いので日陰に停まりたかったらしい。その場でしゃべりだそうとする彼を制してウチまで先導し、ガレージでゆっくり話を聞かせてもらうことにした。 今井さんのインプレッションの要点をまとめると、スロットルを戻した瞬間のエンブレが弱すぎ、開けた瞬間のトルクの出方も緩慢すぎる。乗り心地はとても良いが、フロントフォークのばねレートの立ち上がりが急で、初期はもう少しレートを高く、奥はもう少しレートを低くしてはどうか…というものだった。 それを聞いた途端、やはりこの人はスゴいと思った。私が迷わずにセ ッティングを決めた箇所については何も触れず、迷った末にやってみた箇所にのみ着目し、そこに関する正確な現状の報告と、彼なりの解決案を提示してくれたからである。 確かに、現状のキャブセッティングには唐突なところが皆無で、氷の上でも走れるんじゃないかというほどスムーズな反面、スポーティーな走りにおいては、駆動力やエンブレ |
| による制動力/車重/スプリングの反発力などが釣り合い、動的ディメンションが安定するまでの時間が長すぎると感じることがある。 実は、これをつけているんです…と、最後にキャブに取りつけたあるシカケを見せた途端、彼は私の意図を理解してくれたが、やややりすぎの感なきにしもあらず…と自分で感じたほどだから、彼にとってはまさに“やりすぎ”だったのだろう。 フロントフォークのほうは、もっと具体的に“こうしてみては?”という案と、そのための作業方法を教えてくれた。なるほど、それはいいかもしれない。最後の最後で妥協した箇所を、もう少し本質的な方法で改善してくれそうな気がする。 それは、以前私が検討した方法と同じ考え方でありながら、実現の容易さという点で大きく異なり、すぐにでも試せそうなやり方だった。さすが、サスセッティングに関する膨大かつ実践的経験の持ち主である。 今井さんの意見を採り入れたキャブと、提案を受けたフロントフォーク。それぞれのセッティングに、長い時間はかからない。遅くとも今月中には結果報告ができそうだ。 |