XJ900の爽快チューン
2011年7月8日 - インターバルの今井さんによる試乗とフォークセッティングへの提案   
     
 数日前、インターバルの今井さんから電話があった。今井さんといえば、 2000年12月号から2001年6月号にかけて、BS誌に短期連載されていた“マン・マシーン・ポイントの研究”で知られる名チューナーだ。
「大阪の友人と比良山に登りに行くので、そっちに寄ります」というわけで、突然、この日にウチにやってくることになった彼に、あまりにもヒドい状態のタイヤで試乗してもらうわけにはいかない。この期に及んでタイヤ交換を急いだ理由である。
 ここには気安く書いているし、電話で話しても気安さは変わらないのに、実は今井さんとは初対面なのだ
った。たぶん、1984〜86シーズンの全日本ロードレースのパドックで会
っているはず…と、お互い、腹ごしらえに寄った近所のラーメン屋で確認しあい、ひとしきり昔話で盛り上がった後、ガレージに向かった。
 この日に訪ねてくることになっていたもう一人、つい最近、FZX750で20年ぶりに復活し、すぐにTRX850に乗り換えたリターンライダーの中爺くんも、間もなく到着した。
 中爺くんのTRXは、 押してみただけでわかるほど前後ショックのセッティングが変だった。前はスカスカで、後ろはパンパン。前オーナーが調整したのを、 中途半端にSTDに戻そうとしたのが失敗だったようだ。
 今井さんは、まず、中爺くんにリアスプリングのプリロードを抜くように指示し、続いて、自分でフロントフォークを伸縮させながら、伸び側ダンパーの調整をした。
 両方の作業が終わったマシンに乗
った中爺くんが近所を試乗している間に、整備台の上で外装パーツを外したままだったXJ900を 今井さんに見てもらいながら外装パーツを取りつけ、試乗の準備。そして、嬉しそうに戻ってきた中爺くんを横に乗せたクルマで、XJに乗った今井さんを近所のテストコースにご案内。
 折り返し地点までクルマで先導し

マニュアルどおりのSTDに戻したはずなのに、なぜか変だった前後ショックを、押した感じを頼りにリセッティングする今井さん。
たあと、今井さんは短いテストコースを数往復し、木陰にXJを停めた。一瞬、壊れたか…と思ったが(笑)、そうではなく、ただ、暑いので日陰に停まりたかったらしい。その場でしゃべりだそうとする彼を制してウチまで先導し、ガレージでゆっくり話を聞かせてもらうことにした。
 今井さんのインプレッションの要点をまとめると、スロットルを戻した瞬間のエンブレが弱すぎ、開けた瞬間のトルクの出方も緩慢すぎる。乗り心地はとても良いが、フロントフォークのばねレートの立ち上がりが急で、初期はもう少しレートを高く、奥はもう少しレートを低くしてはどうか…というものだった。
 それを聞いた途端、やはりこの人はスゴいと思った。私が迷わずにセ
ッティングを決めた箇所については何も触れず、迷った末にやってみた箇所にのみ着目し、そこに関する正確な現状の報告と、彼なりの解決案を提示してくれたからである。
 確かに、現状のキャブセッティングには唐突なところが皆無で、氷の上でも走れるんじゃないかというほどスムーズな反面、スポーティーな走りにおいては、駆動力やエンブレ

による制動力/車重/スプリングの反発力などが釣り合い、動的ディメンションが安定するまでの時間が長すぎると感じることがある。
 実は、これをつけているんです…と、最後にキャブに取りつけたあるシカケを見せた途端、彼は私の意図を理解してくれたが、やややりすぎの感なきにしもあらず…と自分で感じたほどだから、彼にとってはまさに“やりすぎ”だったのだろう。
 フロントフォークのほうは、もっと具体的に“こうしてみては?”という案と、そのための作業方法を教えてくれた。なるほど、それはいいかもしれない。最後の最後で妥協した箇所を、もう少し本質的な方法で改善してくれそうな気がする。
 それは、以前私が検討した方法と同じ考え方でありながら、実現の容易さという点で大きく異なり、すぐにでも試せそうなやり方だった。さすが、サスセッティングに関する膨大かつ実践的経験の持ち主である。
 今井さんの意見を採り入れたキャブと、提案を受けたフロントフォーク。それぞれのセッティングに、長い時間はかからない。遅くとも今月中には結果報告ができそうだ。


<  ひとつ前 ・ 目次 ・ 最新 ・ ひとつ先  >
 
ARCHIVESARCHIVES TUNINGTUNING DATABASEDATABASE HOMEHOME Network RESOURCENetwork RESOURCE    DIARY