2011年7月24日 - 鯖街道を楽しんだ後、朽木の試乗会でライバルを通じて自車を知る |
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久しぶりに鯖街道を走りたくなった。マシンの調子が良い証拠だ。レ ーサーに例えれば、鯖街道がサーキ ットで、甲賀/大津市境あたりの国道422号はテストコース。 個別項目のセッティングや評価はテストコースでできても、トータルパフォーマンスを実証し、味わえるステージは鯖街道(花折トンネル〜朽木の道の駅間)以外に考えられない。 日曜の早朝に鯖に行くと決めた私は、 BBSで予告した。2カ月前と同じく、XJ750Eのコンプライアンスさんや XJR1200のむらかみさんが来てくれるのを期待してのことだ(笑)。前夜の書き込みにより、YZF-R1のごんべえさんも来てくれるとわかり、さらに期待は高まった。 21日のダイアリーに書いたキャブ &点火時期のセッティングが一段落したところで生じてきた“本当にこれでいいのか?”という疑問を、他の並列4気筒マシンに乗せてもらって解消したかったのである。ライバルの出力特性と振動の出方を探るのがこの日の主な目的である。 以前の自車と比較して“断然良くなった”と思っていても、他のモノサシで測れば誤差の範囲内かもしれず、今回のキャブ&点火時期のセットが誤差のレベルにすぎないのかどうかを測るために試乗させてもらう …と言えばいいだろうか。 当日朝、予告よりも10分遅れて、家から表の道に出ようと一旦停止し左右を確認した視界の端にオレンジ色のBMW R1100Sが見えた。夜会仲間のkei-1さんだ。 停まってしゃべりだすと近所迷惑なので(笑)、気づかなかったことにして通りに出、そのまま走りだした。彼も、まるでそう |
| するのを申し合わせていたように、後ろにピタリと着いてくる。 国道163号から府道5号に曲がったところで、 今度はSRX400改600+がんちょさんの姿を発見。軽く手を挙げて合図をし、少々スピードを落として走行を継続。彼が後ろに着いたのを確認してから速度を上げた。 和束川沿いの道を走り、左〜右の深いS字を抜けた途端、ローソンの前にバイクが停まっているのが見えた。 こまきさんのFZ750だった。ここで早くも4台になった隊列を率いて、いつもと変わらない“ほどほど快走ペース”で、エンジンの反応や旋回性を確認しながら走る。 国道307号に出、すぐに422に左折してからは、コースレイアウトのおかげでペースは上がる。しかし、テストではなくツーリングなのだと自分に言い聞かせ、いつものような全開まじりの走行はせず、ほどよい緊張感を保ったハイペースなツーリングといった感じで駆け抜けた。 瀬田あたりでこまきさんがUターンしたあとは、湖岸道路〜琵琶湖大橋〜途中…と、道なりの走りで鯖街道へ。2カ月前に走ったときよりも20分近く遅いだけなのに、さすがにこの時期はガラガラというわけにはいかず、けっこうクルマがいる。 最初のお楽しみ区間である、木戸口の橋に向かうダウン&アップの途中で遅いクルマにブロックされたのは痛かったが、かまわず先を急ぐ。ネズミ捕りをよくやっている曙橋手前の直線では、追いついたワンボックス車に追従してやり過ごし、飛ばしても楽しくない梅の木の交差点あたりまでは適当に流し、そこから先は少々ペースを上げる。 |
| ただし、貫井と細川の2つの集落の中は、自分が安全だと思う速度よりもうんと遅く、いつものように、道端にいるおばあさんに手を振ったらにこやかに振り返してもらえる程度に減速して通過。間もなく道は大津/高島市境を越える。 その先の、栃生集会所をすぎてから発電所までの間が、ふたつめのお楽しみ区間である。とくに、集会所の先の左カーブを抜けたあたりで、前方に広がる景色の中を緩く直線的に登っていく道が、先のほうで左に曲がって丘の向こうに消えていくのが見えると、気分が高揚する。 その最初の左コーナーを、過去最高の速度、安定感、気持ちよさでクリアできたのは、重量配分の変化によってスタビリティーが高まったのと、それによる操安性の変化に体が慣れた。その両方のおかげだろう。 残念ながら、さらにその先の、緩く下りながら、右〜左と速度を落とさずリズミカルに切り返す連続コーナーではクルマの列に阻まれてしまい、少々フラストレーションの溜まるこの日の鯖街道だった。 朽木の道の駅では、ごんべえさんが先に到着し、われわれを待ってくれていた。挨拶もそこそこに、彼のYZF-R1を借りて走りだす。 ステアリングダンパーの効きすぎか、操安性は好みじゃないが、そこはエンジンフィーリングの確認が目的だからと割り切って、シングルプレーンクランク最終型YZF-R1エンジンの、低回転におけるトルク感とスロットルレスポンス、高開度から低開度にわたるいろんな開度で高回転にしたときの振動の出方などを試し味わわせてもらった。 |
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その後、スーパーカブ70に乗る明るい農村久保さん、XJ750Eのコンプライアンスさん、 XJR1200のむらかみさんが次々と集結。4気筒に的を絞っていた私は、 XJR1200とXJ750Eに試乗させてもらい、YZF-R1のときと同じようなテストをした。 印象的だったのは、勢いよく加速したときの XJR1200の振動の小ささと、 3000rpmあたりから全閉にしたときのXJ750Eの振動の心地よさ&エンジンブレーキの弱さだった。 人のバイクで近所を走っていたのは私ばかりではない。道の駅に集ま った7人が、それぞれ気になるバイクを借りては、思い思いの方向に走りだし、また戻ってくるさまは、まるで試乗会のようである。 そんなことをしながら2時間半ほど道の駅で過ごしたあと、まだしゃべり足りない面々を誘ってロフトカフェへ移動。XJ750Eの試乗中にこの店の前でUターンし、ここにカフェがあるのを思い出したからだ。店の存在は開店した当時から知っていたのに、入るのは今回が初めてだ。 壁面にびっしり貼られたクルマとバイクの写真を一目見れば、クルマ &バイク好きのオーナーなのはわかる。だが、私には(たぶんコンプライアンスさんにも)店内に置かれたALTECの The Voice of the theaterと、それを鳴らすためのアンプ類が気になって仕方なかったし、がんち ょさんやむらかみさんは、壁面に飾られた80年代のレコードジャケットを懐かしそうに見上げていた。 帰りぎわに記念撮影しましょう…と、オーナーが持ってきたカメラはニコンF。どこまでも80年代テイストに満ちたひとときだった。 |
| さて、この日の私にはもうひとつ用があった。朽木から琵琶湖に出てすぐの安曇川に実家がある同級生が帰省してきており、久しぶりに昼メシでも食いながらゆっくりしゃべろうぜ…てな話になっていたのだ。 で、みなさんとはロフトカフェの前でお別れし、朽木の三叉路を左に曲がって安曇川を目指す。ここからしばらく、琵琶湖沿いの平地に出るまでの緩やかな丘陵地を縫う県道23号もまた、私のお気に入りの道のひとつである。鯖街道(花折トンネル 〜朽木の道の駅間)より回り込んだカーブの多くも、ほとんどが高速かつ見通しがよいので気分がいい。 乗ったばかりのYZF-R1、XJ750E、XJR1200の印象と、 それぞれのオーナーによる わがXJ900への評価を思い出しつつ、あれこれ探りながら走 ってみて、今まで気づかなかったいろんなことに気がついた。 まずはスピード感。各車の速度計に狂いがないという前提で、 XJ900が最も遅く感じる。R1や1200より静かで、750Eより車体がしっかりしているのと、シフトダウンを伴う勢いよい加速をしない限り気にならない小さめの振動のおかげだろう。 次に、旋回初期のハンドリングが750Eと大きく異なっている。以前はそんなふうに感じなかったから、おそらく大改造による車重配分と動的ディメンションの違いが原因か。 ともかく、わが900は、 コーナー入り口で努めてハンドルを自由にしてやらないと旋回のきっかけをつかみにくい。とくに、スロットルを戻してフロント荷重が増えた状態で当て舵気味にコーナーに入ろうとすると、頑とした抵抗感を感じる。 |
| その代わり、やや腰を後ろに引き気味にし、両腕の力を抜き、ハンドルに加わる力を最小限にした状態で軽く内側に体重をかけてやれば、極めてスムーズに旋回を開始する。 そういえば、以前なら、強くはなくても確実に感じていたイン側のハンドルグリップからの“押し返し” が、ほとんど感じられない。 実は、この“押し返し”のないマシンに乗った(所有した)ことは過去に例がなく、これはこれで、前輪が仕事をしている手応えとして、あ ってもいい(手首が痛くなるようなのは困るが)と思っていたし、1970年代後半〜80年代前半のヤマハ車の特徴のひとつとさえ感じていた。 長年慣れ親しんだ特徴がなくなったのだから、もっと違和感を感じていいはずなのに、それもない。おそらく、路上復帰後すでに4000km近く走ったので、その間、徐々に新しい特徴に体が慣れていったのだろう。 あれこれ乗り方を試し、観察し、考えながら走っていると、安曇川まではあっという間だった。同級生の実家におじゃまし、そこからは彼のクルマで今津のホテルに向かい、ランチバイキング。むさ苦しいオッサンと一緒じゃなくて…と、相手も同じことを考えていたはず(笑)。 そのあとは、彼の実家に戻り、国道161号を南下して、 和邇のブルーカフェに寄り、店主の稗田くんといつものようにバイク談議。カワサキ車と並んでXJR1200/1300の入庫も多く、そのうち1台のクランクケースを前に、あ〜だこ〜だとケース内ポンピングロスについて話をしたり、別の1台のエンジンマウントをじっくり観察させてもらったりした。 |
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XJR1200/1300の“売り”のひとつがオーソゴナルエンジンマウントというヤツで、それのおかげで振動を体感させないシルキースムーズな乗車感を得ている…くらいのことは、カタログや雑誌記事を見て知っていた。だが、実物を子細に観察したのは初めてで、見た瞬間“むらかみさん、ズル〜い!”と思った(笑)。 むらかみ号の、あの、開けても閉じても常に心地よい鼓動のみ体感でき、嫌な振動をまったく感じさせないエンジンは、ひょっとするとこれのせいだったのか…。 ここで彼の名誉のためにつけ加えておくと、むらかみ号の乗車感は、初めて乗せてもらった3年前から今に至るまで、ずっと私の目標となっており、オーソゴナルマウントだから…というわけでは決してない。 エンジンについて言えば、オイルがSUNOCO RED FOXの10W-40、イグナイターがASウオタニ・SPIIフルパワ ーキットのXJR1200用 (現行製品のXJR1300-1と同等品)、クランクケース内の減圧にはレデューサーのツインリードを使用している。排気系はテックサーフのエキパイとノジマのサイレンサーの組み合わせ。 それらに合わせたセッティングを施し、完璧に同調のとれたキャブもまた、 彼のXJR1200の極めて上質で爽快なエンジンフィーリングに大きく寄与している。当初のミハラのフルパワーキットから、紆余曲折を経てケンソーのバクダンキットにたどりつき、エアクリーナーのフタを自作して吸気抵抗の調整をしているあたりがタダモノではない(笑)。 ドライブチェーンのメンテにもぬかりはなく、ほとんど週末ごとに洗 |
| 浄し、チェーンソー用のオイルを給油しているとのこと。メンドクサがり(だからシャフトドライブ車が好み)の私には、とても真似のできないマメさである。清掃・給油と遊び調整をきっちりしているのが、あの良好なシフトタッチの元らしい。 今日の試乗では、そのむらかみ号を目標に煮詰めてきた(振動低減に取り組んできた)XJ900のキャブセッティングに効果があったのを確認するとともに、足りない部分を明確に把握することができた。勢いよく加速したときの振動をもう少し抑える(波形をスムーズにする)ことができれば、振動に関しては、むらかみ号に負けない上質なフィーリングが得られそうな気がしている。 しかし、同時に、車体まわりの圧倒的なパフォーマンスの差を見せつけられたのも事実だ。以前に試乗させてもらったときに感じた、高速旋回時の驚くべき安定感(どっしりではなく、極めてナチュラル)に、さらに磨きがかかっている。 これと同種の安定感は、BS誌の長期試乗車749S(パワーハウスの中野さんが足まわりをセッティングし、ピレリ・ディアブロ・スーパーコルサを履いていた)で高速道路を走ったときにしか感じたことはない。 むらかみ号のタイヤは、以前の試乗時がディアブロ・ストラーダ、今はエンジェルSTである。高速旋回時の安定感は、タイヤと車体のマッチングのよさが原因だとしても、今回感じた、走りだしてわずか10メートルほどでわかる良好な“転がり感” は、それだけでは説明できない。 各部の入念な整備によるフリクシ ョンロスの小ささを加味しても、ま |
| だ言い表わせない何らかの理由があるはずだ。インターバルの今井さんが連載していた“マン・マシーン・ポイントの研究”を参考に、シート屋さんに特注したシートの影響もあろうが、それだけでもなさそうだ。 ひょっとすると、フレーム、スイングアーム、フロントフォークなどの剛性バランスと前後ショックのセ ッティングが、タイヤの特性と絶妙にマッチしているのかもしれない。 XJR1200の車体は、 決して剛ではなく、むしろ柔だ。なのに無駄な動きを感じないのは、やはり、タイヤも含めたバランスが良いからだろうか。もっと柔なXJ900は、 むらかみ号よりも無駄な動きが目立つ。 この無駄な動きはしかし、抑え込もうとすると破綻を来す…と、まったく根拠がないにもかかわらず、直感的にそう思う。いよいよ、20数年来の懸案である前後ホイールのワイド化&タイヤのラジアル化か…と、またしても難事業が脳裏をよぎる。 が、すでにパーツ構成まで決めたワイド&ラジアル化はとりあえず措いといて、もっと別のアプローチがあるのではないかという気もする。 900の次に手がける予定の 750Eについても、コンプライアンスさんの新しいシートが大いに参考になったし、自車を含む並列4気筒4車イッキ乗りでわかった750Eのよさを生かす方向で手を加えたい…と、新たな目標ができた。650のクランクと750のピストン&シリンダーを組み合わせるのも楽しいかもしれない。 いずれにせよ大仕事は冬にし、夏 〜秋はニューマシンを満喫したい。この日の燃費は22.31km/Lで、 これは自慢してよい数値だと思う。 |
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