2011年7月21日 - 薄い混合気をきれいに燃やす方向でキャブと点火時期をセッティング |
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このところ、あまりにもエンジンの調子がいいので、ヒマを見つけては(主に、涼しくて道も空いている夜間に)走っている。だから、他にもたくさんあるはずの、やりたいことには、なかなか手が着かない。 走っているコースは、家の近所の国道や府道。とくに景色がよいわけではなく、楽しめるコーナーがあるわけでもない。そんなところを、ただただエンジンの鼓動と反応を確かめ、味わいながら走っている。 5月19日に車検を受け、 路上復帰してから2カ月近くかかって、ようやく、ニューマシンに適合したキャブレター&点火時期のセッティング |
| が煮詰まり、大改造前よりも格段に高い満足度に達したからである。 以前の私は、どちらかというと混合気を濃く/点火時期を遅らせる方向を好んでいたのに対し、今回は混合気を薄く/点火時期を早める方向にシフトしたのがよかったようだ。 “濃く遅く”から“薄く早く”への転機は、2007年の春から使っているこのキャブ(XJR1300用BSR37)の難関である“1800rpm(開度1/8近辺)でのツキの悪さ”にまたしても見舞われ、解決策を探る途中で訪れた。 このキャブだから…なのか、以前は気にしなかった細かいことを私が気にするようになったから…なのか |
| は別として、パイロット系の燃料吐出量曲線(山形)とメイン系の燃料吐出量曲線(山形)が重なる領域では、両者ともわずかに濃い(山が高い)だけでも、合わせれば濃すぎになり、わずかに薄い(山が低い)だけでも、合わせれば薄すぎになっているのではないだろうか。 また、2つの山それぞれの高さには問題がなくても、裾の勾配が緩い場合には重複領域で濃すぎ、裾の勾配が急な場合には重複領域で薄過ぎになるということも考えられる。 一昨年の11月から今年の5月までかかった大改造の一環として製作したエアクリーナーボックスやエアフ | |
\ 項目 \ 経過 \ | Fuel Level STD:0mm | Main Jet | Needle Jet Holder | Main Nozzle | Jet Needle | J.N. Clip Pos. | Suction Hole | Diaph. Spring Cut Out | Pilot Air Jet | Pilot Jet | P.S. Turns Out | Ign. Unit | P/U Adv. Diff. from STD | 大改造前 | -2mm | 115 | 5EA-10 | P-0 | 5DL39 | 4 | 2.5*1 | 8 | 145 | 17.5 | 1.75 | #1 | +5° | 1 | -2mm | 115 | 5EA-10 | P-0 | 5DL39 | 4 | 2.5*2 | 8 | 145 | 15 | 1.75 | #1 | +5° | 2 | -2mm | 115 | 5EA-10 | P-0 | 5DL39 | 5 | 2.5*2 | 8 | 145 | 15 | 1.75 | #1 | +5° | 3 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 5 | 2.5*2 | 8 | 145 | 15 | 1.75 | #1 | +7° | 4 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 3 | 2.5*2 | 8 | 145 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 5 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 3 | 2.5*2 | 8 | 130 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 6 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 2 | 130 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 7 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 4 | 130 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 8 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 5 | 130 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 9 | STD | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 5 | 145 | 17.5 | 1.75 | #1 | +8° | 10 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 5 | 160 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 11 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2.5 | 3*1 | 5 | 160 | 15 | 2.5 | #3 | +3° | 12 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 3 | 3*1 | 5 | 160 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 13 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-6 | 5DL39 | 2 | 3*1 | 5 | 160 | 15 | 1.75 | #1 | +8° | 最新 | -2mm | 135 | 5EA-10 | P-0 | 5DL39 | 2 | 3*1 | 5 | 160 | 15 | 1.75 | #3 | +10° | 5月19日の車検合格後、7月10日までの間の、キャブレター&点火時期セッティングの大まかな流れを示す表。 パイロットスクリュー戻し回転数やピックアップベースプレートの回転による進角度数の調整は試乗の途中 で停車して何度も行っており、試行セット数はこの表記載の数倍に達する。黄色地の欄がそのセットにおけ る変更項目を、太字がとくに効果の大きかった変更を示している。メインジェット以外、すべて絞る方向だ。 |
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ィルターケースの吸気口に取りつけたファンネルの効果による吸入抵抗の低減により、今回のセッティングは燃料の吐出量を増やす方向にすべき…と、最初は思っていた。 ところが、よく考えてみると、吸入空気量を決めるのはエンジンであり、いくら抵抗が減ったからといって、それが即、吸入空気量の増加につながるわけではない。 だから、空気量が増加→そのままでは混合気が薄くなる→薄くならないようにガソリンを増やす…というよりも、エアクリーナーから空気が流れ込みやすくなる→メインボア内の負圧が高まりにくい→負圧ピスト |
| ンがリフトしにくい→負圧ピストンをリフトしやすようにする…というのを、まず最初にすべきである。 で、そのために、負圧ピストン底部のサクションホールを 直径2.5mm ×1個から2.5mm×2個にし、 続いてジェットニードルのクリップ位置を4段目から5段目に変更してガソリン流量の立ち上がりを早めた。 これにより、そこそこ勢いのよい加速を 5000〜6000rpmあたりで止めてスロットルを急閉したときに一瞬加速するという典型的な“薄すぎ” の症状が収まったのと引き換えに、今度は、 3000〜5000rpmあたりで全閉から微開したときのツキが(一瞬 |
| だけ)よすぎ、身構えないとスロットルを開けづらくなってしまった。 ジェットニードルのクリップ位置の下げすぎ(テーパー開始位置を高めすぎ)なのか、負圧ピストンのリフトが早すぎるのか、いずれにしても、メインノズルからのガソリン吐出量の立ち上がりが早すぎる(パイロット系をいじってないだけに)のが原因ではないかと思われた。 そこで次に、メインノズル(ニードルジェット)をP-0からP-6に拡大するのと合わせてメインジェットを115番から135番に変更したうえで、クリップ位置を2段上げて3段目にした。これはなかなかよかった。 | |
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以前のエアクリーナーまわりの仕様だと、高回転域でエンジンの吸入量が増えたとき、空気の供給が追いつかず、結果的にガソリンばかり増量して“濃すぎ”になっていたと思われる 135番のメインジェットも、今回は何ら問題なく、 5000rpmあたりから上で全開にしたときの加速が明らかによくなっている。 このあたり(上表の3〜4)での問題点は、運転状況によって振動の出方に差がありすぎることだった。わずかなエンジン回転数の違いや微々たるスロットル開度の差によって振幅が増減したり波形が変化したりして、心地よい鼓動が一瞬で不快な振 |
| 動に変わったり、また戻ったり…。 以前、この不快な振動をなんとかしようと、キャブセッティングを繰り返したことがあった。だが、薄くして振動が低減したこともあれば濃くして低減したこともあり、あるいは点火時期を早めて低減したこともあれば増大したこともあり、結局よくわからないまま、それ以上追求するのをサボっていた。 しかし今回、キャブと点火時期のセッティングをしながら、杉浦利和 :著/自動車工学:編“点火装置の基礎と実際”鉄道日本社:刊(ISBN 4-88543-045-3)という本を 読み直し、圧縮された混合気の火炎伝播速 |
| 度が変われば最適の点火時期も変わるということ復習し、火炎伝播速度が高いときは点火時期を遅く、低いときは早くすべき…という、当たり前のことを再確認したおかげで、火炎伝播速度が高いのに点火時期が早かったり、速度が低いのに遅かったりした場合に、燃焼圧力がピストンの頭を叩くタイミングが適切ではなくなり、それが嫌な波形や不快な振動の原因になっているのではないか …と、これまでの体感を理論づけられたような気がしている。 ということは、ひょっとすると、振動が最も小さくなるキャブ&点火時期のセット=ベストセッティング |
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なのではないか…と、暴論と言われるのを承知で考え、とにかく一度、そのセンでセッティングを詰めてみようという気になった。仮に、少々出力や加速が犠牲になった(つまり一般に言うベストではなくなった)としても、速さより心地よさ、力感よりもスムーズさを大切にしたい私にとっては、それこそがベストセッティングに違いない。 ここ(上表の 9〜13あたり。11を除く)から先は、いじることのできない進角特性に合わせて、進角度数が大きい領域では火炎伝播速度を低めるべく混合気を薄くし、進角度数が小さい領域では火炎伝播速度を高 |
| めるべく混合気を濃くする方向に、いじることのできるキャブレターの側で歩み寄るという、本末転倒かもしれないセッティング作業〜ナイトランによる評価を繰り返した。 こうして、上表13欄のセットに達し、パーフェクトではなくとも、自分にとってファンタスティックと形容したいエンジン特性が実現した。 クラッチミートした瞬間に“ふわ っ”と車体が軽くなったかのような出足が味わえるトルク感、どんな回転域で全閉にしても(そこからアイドル回転に至るまで)まるでエンストしたかのような静粛さを保ったままのエンジンブレーキの感触、そし |
| て、このセットの持つ麻薬的な魅力は、 3000〜6000rpmにかけてのウルトラスムーズかつ二次曲線的な加速感であり、これが味わえるなら、他に少々問題があっても目をつぶっていい…とさえ思えてくる。 二次曲線的ということは、おそらくベストセッティングではなく、前半のトルクが痩せているせいで後半の盛り上がりが強調されているのだろうが、こういう演出は悪くない。 前半のトルク痩せは、負圧ピストンのリフトが早すぎ、メインノズル圧に対してベンチュリー断面積が過大になっているのが原因かもしれない。直径2.5mm×2個では動きすぎる |
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みたいなので、途中で3mm×1個にした負圧ピストン底部のサクションホ ールを、さらに小さい2.8mm×1個程度にするのがよいかもしれない。 だが、それをする代わりに、以前に一度試してすぐに撤廃したシカケを復活させてみようと思いつき、負圧ピストンのダイアフラム下側室の大気開放通路に取りつける“空気抵抗”を試してみることにした。 2個のエルボー(おそらくキャニスター兼用)と1個の3ウェイをホースでつないだ“シカケ”には、負圧ピストンの上昇時と下降時で効力を変えるべく、 NAGのクランクケース内圧コントローラーを取りつけ、3 |
| ウェイには直径4mmの穴を開けた。 負圧ピストン上昇時にダイアフラム下側室に吸い込まれる空気には小穴を通る抵抗がかかり、下降時は内圧コントローラーが開いてほとんど抵抗がかからない…と、考えただけで動作を確認したわけではない。 ただ、いずれの場合も、ある程度の長さを持ったホース内の空気が動かなければならず、その抵抗がダイアフラムにかかり、負圧ピストンの急激な動きを和らげ、バタつきを抑えてくれそうな期待はできる。 テストの結果、この“シカケ”には、実は、急開時の負圧ピストンのリフトしすぎを抑えるよりも、開け |
| 始めや閉じ終わりのショックを和らげるのに効果があると判明。氷の上でも走れるんじゃないかというほど滑らかな加減速が得られた。 ところがこの滑らかさは、このところのナイトランやツーリングではメリットになろうが、スポーツライディングではメリハリのなさとしてデメリットになる恐れがある。今井さんに指摘されたのも、まさにこの点で、今後の課題となった。 少し話は戻り、1カ月ほど前にASウオタニの魚谷さんに電話をした。雑誌記事や当ダイアリーの写真に頻繁に登場するSPIIのコントロールユニット。その筐体表面に貼られたス |
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テッカーが常に横を向いているのが気になるので、新しいステッカーをもらって貼り直そうと考えたのだ。 そのときついでに、進角特性に合わせたキャブセッティングに悩んでいる話をしたところ、 新製品のXJR 1300-3というのが出ていて、そいつの進角特性は、 私が使っているXJR 1300-1よりもうんと素直とのこと。「使ってみるなら送りますよ」とのお言葉に甘え、テストを開始した。 XJR1300-3は、 ポンづけしただけ(上表の11欄)でも、その良さの片鱗をうかがわせてくれた。ただひとつ、 3000〜6000rpmにかけてのウルトラスムーズかつ二次曲線的な加速 |
| 感が失われるだけで、その他はほぼXJR1300-1と同等か、 それ以上。これを使う前提でキャブをいじれば、少しの調整で、さらに満足度の高いセットが見つかりそうだった。 だが、その“少しの調整”の時間もなく、 今井さんにはXJR1300-1の最終セットで試乗してもらった後、XJR1300-3に換装して (再びポンづけのまま)翌日の“おかわりナイトラン”に臨んだのだった。 さらにその翌日、メインノズルをP-6からP-0に絞り、ピックアップベ ースプレートを回して 標準+8度から標準+10度に(全域の)進角度数を増やしたら、これが大当たり。上 |
| に書いた“少しの調整”は、たったこれだけで済んでしまった。 あとは連日、生まれ変わったニュ ーマシンにふさわしい上質なエンジンフィーリングを味わうナイトランばかりで、キャブ&点火時期いじりはピタリと止んだままである。 せっかく、混合気を薄くする方向で好結果が得られたのだから、この機会にHCとCOの測定くらいはしておきたいし、久しぶりにシャシーダイナモに載せたり、80km/h一定で高速道路を周回する“燃費チャレンジ” もしてみたい。30.42km/Lという最良記録を塗り替えるのは、現状のセ ットなら容易のような気がする。 |
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