XJ900の爽快チューン
2011年8月9〜10日 - 次号RACERSの取材で、カワサキZ系耐久レーサーを堪能   
     
フランスにおけるカワサキ車の輸入元だったシデムが1974年、エグリ製フレームにZ1エンジンを載せて造ったのがこのマシン。
 次号 RACERS(9月24日発売)で扱うのは、1980年代初頭のカワサキの耐久レーサー・KR1000と決まった。カワサキの取材といえば、ご近所の兵庫県明石市である。大改造中でバラバラだった去年の9月とは違い、今回はもちろんXJ900で行った。
 取材は、初日が当時のエンジニアのインタビュー、翌日が保存車両の撮影という、RACERSの一般的なメーカー訪問スケジュールである。これとは別に、後日、当時の関係者を尋ねる取材が予定されている。
 当初、次号で扱うのは1981〜83年

型のKR1000、合わせて3台のつもりで撮影に臨んだ。ところが、それらよりもうんと古い、カワサキがまだワークス耐久レーサーを開発する前のZ1000が目に留まった。
 見慣れたライムグリーンではなく黄色、KR1000ではなくZ1改、カワサキフランスではなくシデムカワサキから1974シーズンにヨーロッパ耐久選手権に出場したそのマシンは、バルセロナ24時間とボルドール24時間で優勝し、カワサキ初の耐久チャンピオンを得たマシンである。
“これを載せないわけにはいかない

んじゃないか…”と思ったのは、私だけではなく、その場に居合わせた取材スタッフ全員の意見が一致し、急きょ、この貴重なマシンのために誌面を割くことになった。
 だが、メインが3台のKR1000であるのは言うまでもなく、そちらの撮影と観察は、このシデムカワサキよりも念入りに行われた。私が持参したノギス、メジャー、三角定規などを駆使し、3台のKR1000の寸法を測りまくった人もいたりして…。それらの測定結果がどんなふうに誌面に登場するのか、お楽しみに。
ボディ材質はマグネシウムだが、シルエットは当時の市販車に多用されたBS34そっくり。負圧バルブは円筒形である。連結プレートを切り欠き、そこにダイアフラム室の大気開放通路を開口させている。私がBS36に施したのと同手法である。
 詳しいマシン解説はRACERS第11号をご覧いただくとして、撮影の合間に観察した4台のマシンの中で、私にとって最も興味深かったのが1981年型KR1000である。中でも、しばし釘づけになり、観察と触診(笑)にた
っぷり時間をかけたのが、ミクニ製と思しきキャブレターだった。
 耐久レーサーはもちろん、スプリントのTT-F1マシンでさえ、 当時は負圧可変ベンチュリー型キャブ(いわゆるCVキャブ)を使うのが珍しくなかったとはいえ、この1981年型KR1000に装着されているのは、どう

見ても STDのBS34をもとに、材質をマグネシウム化し、ダイアフラム下側室の大気開放通路を追加工したような珍しいキャブだったのである。
 XJ900に今のBSR37キャブを装着する前、 STDのBS36をいじり倒した私にとって、このテの旧世代のCVキ
ャブは、懐かしくもあり、また、今のBSR37いじりの参考にもなる。
 ダイアフラム下側室の大気開放通路は、後方からメインボアと平行にダイアフラム室に達する横長のスロ
ット状の穴で、その開口部を避けるために、連結プレートの下部に切り

欠きを設けている。 BS誌2006年9月号に載せた私のBS36改と同手法であり、目的が同じなら方法も似て当然
…と、今になって納得させられた。
 もうひとつ、BS36であれこれ試した(BSR37では つい先日まで試行錯誤していた)負圧ピストン底部のサクションホールは、バラして計測することができなかったので、ファンネルごしに指を突っ込み、中指の先をグッと負圧ピストン底部に押し当て、指の腹についた痕跡をノギスで測り、直径4mm×2個と判明。これも私のBS36高加速仕様と同じだった。


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