XJ900の爽快チューン
2011年12月13日 - 戻ってきた! WPC+DLC、WPC+錫ショット、錫ショット   
     
 DLCとは、Diamond Like Carbonの頭文字をとったもので、ダイヤモンドのようなカーボンと和訳されることが多い。しかし、ダイヤモンドも炭素でできているのだから、沢庵のような大根てな感じの、やや外した感のあるネーミングだ(笑)。
 そのDLCのコーティングは、 薄く硬く、摺動性と耐摩耗性に優れている。反面、あまりにも表面が平滑で濡れ性が低いため、潤滑油との“なじみ”が悪かったり、Oリングやオイルシールなどのゴム製パーツとの相性が悪い(油膜が切れてスティックする)などの問題がある。
 そうした問題を解決し、 DLCの良さを失わず、Oリングやオイルシールと相性を良く(スティックしにくく)するには、DLCの前にWPC(微粒子ピーニング)をするのが良い…という話は、ずいぶん前に某サスペンションチューナーに聞いていた。
 で、リアショックのオーバーホールを機会にその話を思い出し、まずは不二WPCに電話をし、 社長の意見を伺った。それによると、フロントフォークのインナーチューブやリアショックのロッドの場合、 DLCだけではオイルシールやダストシールのスティックが激しく、乗り心地が悪くなるが、WPC+DLCにすることで改善するとのこと。WPC+DLCが最も摺動性が良く、次がWPCのみで、DLCのみの場合はそれよりも劣るらしい。
 ダンパー本体(シリンダー)とリザーバータンクの内壁については、

戻ってきた本体とロッド。ダンパーシリンダー内壁がWPC+錫ショット、リザーバータンク内壁が錫ショット、ロッドがWPC+DLC。
まず、 筒状のパーツの内側にはDLCができないという説明のあと、最適なのは二硫化モリブデンショットだが、オイルが汚れるので、二硫化モリブデンに近い摺動性を持ち、かつ極圧性に優れた錫ショットを薦められた。鉄を磨いただけの本体内壁にはWPC+錫ショット、 アルマイトの後にホーニング仕上げされたリザーバータンクの内壁には、寸法精度の低下を懸念して、 WPCなしの錫ショ
ットのみ…と、話がまとまった。
 3箇所3様の処理を終えて戻ってきたパーツの中で、私にとって見慣れないのは、やはり、WPC+DLCを施したロッドである。見るからに硬そうで、滑りやすそうでもある。

 さっそくテスト…とばかり、以前WPCから戻ってきたピストンに、 ピストンピンを通して傾けたのと同じように、水平にしたロッドにテフロンブッシュを通し、徐々にロッドを起し、どれくらいまで起せばブッシ
ュが滑り出すか、やってみた。
 ところが、残念なことに、スペアの無処理のロッドだと15〜20度程度で滑り出すのに、WPC+DLC処理のロ
ッドでは30度近く起さないと滑り出さない。同じ角度にして滑り速度を比較するとWPC+DLCのほうが速いから、抵抗が大きいわけではなく、スティックが原因だと思われる。
 ゴムとの相性もテストをし、最適の潤滑剤を選ぶ必要がありそうだ。
錫ショットしたリザーバータンク内壁。錫ショットの膜厚は、アルマイトの後に施されたホーニングのクロスハッチが見える程度。ダンパーシリンダー内壁はWPC(セラミックによる研磨)+錫ショット(溶着)。肌合いは、錫ショットをしたギアの歯面に似る。2007〜08年にかけてのエンジンオーバーホール時に、ミッションのシャフトやギア、スパイラルベベルギアなどに錫ショットをした。


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