XJ900の爽快チューン
2011年12月26日 - 2本目組み立て終了。フリーピストンの位置は思案中
     
シムをセットしたダンパーピストンをロッドに通し、オネジ部分にロックタイトを塗る。シムを回転させずに締めつけるのは断念した。マニュアル指定の30Nmでナットを締めつける。緩めはバイスプライヤーで何とかなったが、締めつけはバイスがあると楽だった。
 今年最後の、ロングスパンで作業できる今日の昼間に、残りの1本を組み立てることにした。同じ作業を2回する場合の2回目は、スキルア
ップによる効率化が可能な反面、慣れによる気の緩みが生じやすい。
 そこで今日は、昨日と同じ手順のところで一呼吸置く意味もあって、細部の組み立てのようすを撮影しつ

つ作業を進めた。撮影するということは、それをダイアリーや誌面で公開するのが前提だから、手抜きできず、気を引き締める効果もあった。
 作業自体は昨日と同じ。まず最初にロッドをサブアッセンブリーで完成させ、次に本体にオイルを入れ、フリーピストン〜ロッドの順に挿入し、エア抜きの後、シールヘッドと

ダンパーシリンダー底部のキャップを取りつけるところまでである。
 で、まずは、シールヘッドをはじめとするスモールパーツをロッドに通し、シムをセットしたピストンを乗せ、二面幅17mmのセルフロックナ
ットを締めつける。昨日の1本目の組み立てにより、シムを回転させずにナットを締めるのは困難とわかっ
磁化による鉄粉他の吸着を嫌ったのか、底部が外気に通じる構造のため、錆びにくさを狙ったのか、ニードルはステンレス製。小さなOリングだが、グリスによる気泡の閉じ込めを避けるべく、溝にたっぷりグリスを塗って装着し、はみ出し分を拭き取った。ニードルをロッドの中穴に落とし込む。この底部を、伸び側ダンピング調整ダイアルを回すと上下するアルミの丸棒が押す。
たので、今日は無駄な抵抗をせず、すなおに規定トルクで締めつけただけ。ゆるみ止めのネジロック剤は、マニュアルに記載されたロックタイト242の代替新製品、243を使用。近所のコメリで手に入った。
 次は、ロッドの中に入るリバウンドアジャスターのニードルとチューブの挿入だ。ニードルの途中に嵌ま

るOリングの潤滑には、Super Lubeの高温・極圧グリスを使用した。
 このグリスは、リザーバータンクの内壁に最適の潤滑剤を探しまわって見つけた物だ。11月28日に書いたように、リザーバータンクの内壁にフリーピストンが接触してできたと思われる“カジリ”があったので、ここには、潤滑性だけでなく極圧性

と耐久性にも優れたグリスを使いたくなり、調査の末、これに決めた。
 Super Lubeの輸入元に電話をしたり、輸入元の紹介で、四輪用のオーリンズのオーバーホールやセッティングの権威であるエレガントスポーツ アジュールさんに電話やメールで教えを乞い、潤滑性/極圧性/耐久性に加え“垂れ落ちにくさ”に優
ダンパーロッドの上端にねじ込まれる筒。この下端穴とニードルとの環状隙間で、バルブをバイパスするオイルの流量を規制。ノズル先端の二面幅は9mm。ロックタイト243を少量塗り、四半世紀ぶりに使う9mmのコンビネーションレンチで締めつけた。
れているとの回答をいただいたので安心して良さそうである。
 Oリングを嵌めたニードルをロッドに挿入し、上からチューブ(ノズル?)をねじ込む。ここもネジロックが指定されているので、ロックタイトを極少量塗った。ここの締めつけに使った二面幅9mmのコンビネーションレンチは、TZをいじっていた

頃、ミクニのVM36キャブのフロートバルブシートの脱着に使用して以来四半世紀ぶりの登板である(笑)。
 これにて、ダンパーシリンダーに挿入する前にロッドに取りつけておかねばならないパーツは、すべて取りつけ完了。次はコンプレッションアジャスターの取りつけである。
 コンプレッションアジャスターに

ついては、10月26日にガス圧調整をしながらオーリンズのリアショックのバラし方を教えてくれた人が「メンドクサいので、触らないほうがいい…」と言っていたのに、恐いもの見たさで外してしまった(笑)。
 だが、バラしてみると、たいして面倒ではなかった。シールヘッド内部のパーツの交換のほうが、よほど
コンプレッションアジャスターの構成パーツ。オリフィス径の切り替え機構とチェックバルブを一体化した合理的な構成である。
筒の外側の汚れはピカールで磨き落とし、内部はパーツクリーナー原液(組成はキシレン20%他)に浸した綿棒で掃除した。
このあたりのパーツが真鍮製なのは、キャブレターのジェット類と同じく、高精度の機械加工を容易にするためだと思われる。
メンドクサい。構造を理解し、掃除もできたから、バラして良かった。
 この形式(4段階切り換え式)のコンプレッションアジャスターは、要するに、圧縮行程でシリンダーからリザーバータンクに流れ込むオイル通路内に設けたオリフィスの径を変える(円筒形バルブ側面の丸穴の大きさを選択する)ことで、圧側ダ

ンピングの強さを変えている。
 ただオイル通路中にオリフィスを設けただけでは、伸び行程でもダンピングが強まってしまうので、それを防ぐために、円筒形バルブにチェ
ックバルブ(ワンウェイバルブ)を内蔵し、伸び行程ではそれが開いて過剰なダンピングフォースの発生を抑えている。必要充分な機能を単純

な構造で得る設計の妙に感心した。
 ここに使われている3個のOリングには、AZのフードオイル(スプレ
ー)を塗って装着した。オーリンズのマニュアルで“ホワイトオイル”
が指定されているので、その意図を汲み、パラフィン系オイルということで、食品機械に使われるパラフィンベースの潤滑油にした。AZの製品
ダンピングアジャスターのオリフィス径セレクター。側面の穴から入ったオイルは、筒内を通過し、反対側の穴から出る。底部に嵌め込まれるチェックバルブのシートとボール(鋼球)。伸び作動時は底の穴からボールを押しのけてオイルが流入する。組み立てたところ。チェックバルブのシートは、外周に嵌め込まれたOリングで筒に勘合。中のボールは自重で底部に留まる。
に決めたのは、通販で最も安く買えるのがこれだったからだ(笑)。
 組み立ては分解の逆の手順で…では、まるで不親切なマニュアルのようなので、少々補足すると、組み立て前に、円筒型バルブがどの向きのときにオリフィスが最大になるかをチェックし、そのときの端面の切り欠き(調整ダイアルのD型穴に嵌ま

り込む)の向きをマークしておいたほうが良い。私のは、2本とも、オリフィスが最大(圧側ダンピングが最弱)のときに、切り欠きが本体上側エンドアイ方向に寄り、その状態で後ろから見ると、ダイアルの文字が正立するようになっていた。
 コンプレッションアジャスター・サブアッセンブリーの脱着には、本

来、専用のピンスパナが必要だ。しかし、見てのとおり、丸穴が8個開いた単純な造りだから、丸棒を突っ込んで捻れば事は足りる。
 3mm台のドリルの刃を2本、上下逆にして突っ込み、2本まとめてモンキーレンチで挟んで回すのは、バラしたときと同じ方法である。
 ここの緩み止めには、マニュアル
コンプレッションアジャスターの装着は、本体をバイスに固定して行った。この程度の作業時の固定用には充分なサイズだ。
直径3mm台のドリルの刃を2本、対向する穴に差し込んだところ。緩み止めには、最強のロックタイト“648”を薄く塗布。
2本のキリをまとめてモンキーレンチで挟み、締め込んでいく。穴の深さが充分にあるため、このやり方でもまったく問題なし。
指定の638ではなく648を使用した。638よりも648のほうが、より接着力が強いから、次に取り外すときにはネジ山がナメるかもしれない。しかし、オーバーホール時にも取り外さないことがあるほどの部分だから、気にせず648を使い、 さらに、締めつけた後にセンターポンチを打ってコーキングすることにした。
 ウチにある3本の個体のうち、あとから追加した1本(YA5220新)のみ、最初からここがコーキングされており、古い2本はされていない。コーキングをするようになったのを機会にネジロック剤の強度を下げた可能性はある。しかし、そこまで細かいことを気にしていると、いつまで経っても完成しない恐れがあるの
で、648+コーキングに決めた。
 コンプレッションアジャスターに続いて、エア抜き用のボルト(六角穴付きフラットヘッドスクリュー=
皿ボルト)を締め込めば、本体側の準備は完了である。ここで一旦、本体はビニール袋に入れて待機させ、フリーピストンの手入れと準備をする。フリーピストンというのは通称
3本のうち、最も新しい1本がコーキングされていたので、それに倣ってセンターポンチ(スプリング内蔵タイプ)でコーキング。コーキング終了後、ダウエルピンとスプリング+ボールを穴に挿入。調整ダイアルのストッパーと、クリックの位置決め用である。調整ダイアルを仮組みしてみたら、底部がコーキング時の“返り”に接触したので、返った部分をヤスリで平しておいた。D型に切り欠かれた軸をD型の穴に合わせて調整ダイアルをセットし、センターの+ネジ(皿ビス)を締め込めば取りつけ完了。
点検により、テフロンバンドが入る溝の底面に、錆による肌荒れを発見。修正と潤滑により再使用には問題なさそうだ。溝の幅に合わせて帯状に切った2000番のサンドペーパーを用い、荒れた部分を磨く。軽く表面を平しただけで作業終了。指先を温めて敏感にし、フリーピストンを回転させながら側面の荒れや角のバリをチェック。とくに異常は認められなかった。
で、オーリンズのマニュアルによると“ディバイディングピストン”である。リザーバータンク内でダンパ
ーオイルと窒素ガスをディバイドするからディバイディングピストン。そのものずばりのネーミングだ。
 そのフリーピストンが、昨日組み立てたYA5220新のは何ともなかったのに、今日のYA5220旧のには少々問

題があった。テフロンバンドが入る溝の底に、主に錆と思われる肌の荒れがあったのだ。今回は帯状に切った2000番のサンドペーパーで錆を落としてから組み込むとして、やはりここには、耐久性に優れ、垂れ落ちにくいグリスが必要だと痛感した。
 フリーピストンに嵌まるOリングは、他とは異なる緑色をしている。

これはおそらく材質が違うためで、組成はわからないものの、摺動性が高いことは、触っただけでわかる。この、1本のリアショック中で最も太いOリングの装着には、Oリング溝との隙間に埋まるグリスが気泡を含まないように気をつけた。
 これにて、組み込むパーツの準備はすべて終了。あとは、昨日と同じ
グリスの中に気泡が生じるのを嫌い、溝とOリングの隙間を埋めつくすべく、Super Lubeの多目的グリスをたっぷり塗り込んだ湯煎中のダンパーオイル。ネスカフェのビンに入っているのは昨日の余り。今回の使用量は左右合わせて300cc弱だった。オイルの注入前に、本体と中の空気をドライヤーで温める。オイルの流動性確保というよりは、湿気を飛ばすのが主目的。
手順で組み立てればいい。昨日、1本目を組み立ててみて、改良すべきと思われたのは、ダンパーオイルの湯煎の温度:もっと上げる、フリーピストンの底部にねじ込む作業用ボルト:もう少し長く、圧側シムをリフトさせるテフロンの切れ端:効果がないので使わない…などである。
 そこで今日は、湯煎の温度を上げ

(途中で熱湯を補充)たり、ドライヤーで温める本体の温度を昨日より高めにするなどしてオイルの流動性を高め、注入やエア抜き時の待ち時間を減らし、イライラを解消した。
 このあとの、フリーピストンの挿入〜コンプレッションアジャスター周囲のエア抜き〜ダンパーピストンの挿入〜エア抜き〜シールヘッドの

挿入…という一連の作業は、まったく昨日と同じようにしたつもりだったのに、たぶん、いったんサークリ
ップ溝を超えて奥まで挿入したときのシールヘッドの位置が深かったのが原因で、昨日の個体(YA5220新)よりも今日の個体(YA5220旧)のほうが、中に入っているオイルの総量が少なくなってしまったようだ。
オイルを満たしたリザーバータンクの側面に小ハンマーで振動を与え、コンプレッションアジャスターまわりのエアを追い出す。Oリングが筒内に入り、テフロンバンド溝が隠れない位置で縦樋を外す。この状態でテフロンバンドを嵌め、再び押し込む。フリーピストンが底突きした状態で深さを測る。結果はマニュアルどおり57mmだったが、組み立て後の指定位置は不明。
 組み終えた2本を比べてみると、ロッドの位置を同じにしてもフリーピストンの位置が違う。ロッドを全伸にしたとき、片方は底突きまで5
mmあるのに、もう一方は底突きしている。まあ、これは、エア抜きボルトを外してオイル量を調整すれば済むことだから大きな問題ではない。
 ただ、気になるのは、ロッドの出

し入れに伴うフリーピストンの動き方に差があることだ。ロッドの移動量に対するフリーピストンの移動量は2本とも変わらないが、片方のフリーピストンは往復ともスムーズかつ傾かずに動くのに対し、もう一方のフリーピストンは、出てくるとき(ショックユニットの圧縮時)の動きがスムーズではなく、一瞬とはい
え、最大1度ほど傾くことがある。
 古いほうの個体だから、タンク内壁に“カジリ”のあった5230旧ともども、タンク内が偏摩耗しているのかもしれない。この問題をどうするかは、フリーピストンの位置と合わせ、ゆっくり考えることにした。年内のガス圧調整は、アテにしていたところが休暇に入り、断念した。
塩の容器中でエア抜き中のダンパーピストン。シムの裏側から続々と気泡が出てくる。次にやるときは、ここで逆さにしたい。
めでたく2本とも完成したダンパーユニット。油断していたら年末年始休暇が始まってしまい、ガス圧調整は年明けに延期。


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