ホテルから延々と下った道が湖面に達するあたりに
観光バスが何台も停まっていた。
脇を見ると、湖岸の林の中に、風格のあるホテルが見えた。
ホテルの背後には、かなり大きな遊覧船が停泊している。
この一帯は、ボクが考えていた以上に
人気のある観光地だったらしい。
湖にかかる橋を二つ渡ると対岸に出た。
急に写真を撮りたくなった。
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橋を2つ渡ったところから
対岸に停泊する遊覧船を望む。
右側に見えるのはSNCF
(フランス国鉄)の鉄橋で
エッフェル塔と同じ
グスターフ・エッフェルの設計。
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道端にクルマを停め
カメラをぶら下げて湖畔の道を歩いていると
同じようにカメラをぶら下げた観光客が何人もいた。
いい歳したオヤジが多い。
そのうちのひとりが林の中でキノコを見つけたとかで
子供のようにはしゃいでいる。
見せてもらうと
ウズラのタマゴ大の真っ白なキノコだった。
写真を撮り終え、先に進もうとして道に不安を感じた。
このまま進んでいいのかどうか…?
さっきの橋の上まで引き返し、工事をしていたオヤジに聞いた。
ミシュランの地図帳を見せると、オヤジは困ったような顔をした。
見開きの端から端までで400kmもある地図じゃ、話にならない。
で、聞きかたを変えた。道の前方を指差して
同じ指で地図上の地名を指差してみた。
これはオヤジにも通じた。
指差した地名は“CHAUDES-AIGUES”
オヤジの発音だと“ショッドアイゲス”である。
ここで早くも、針路は予定のルートを外れようとしていた。
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地方道[D13]を走り出して間もなく
Faverolles村にさしかかった。
道端にある標識に
“Chaudes-Aigues”の文字があった。
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ショッドアイゲスにむかう道は素晴らしかった。
牧草地の中をゆるやかに起伏しながら続く、プラタナスの並木道。
ときおり抜ける小さな村には、どこにも中心に教会があり
その近くにカフェバーや八百屋さん、ガソリンスタンドなどがある。
このあたりのゼラニウムは、ほとんどが濃い朱色。
壁にバラを這わした家も多い。
石垣に生える名も知らぬ花や
ガソリンスタンド脇の空き地に放置されている
ポンプの写真を撮ったりしながら
大好きなフランスの田舎道を、ゆっくりゆっくりドライブした。
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ガソリンスタンド跡と思しき
空き地にあった旧式のポンプ。
昔は日本にもこんな形のがあったけど
この色は、やはりフランスならでは。
メーターの目盛りはリットル表示。
ここはメートル法発祥の国である。
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1時間ほどでショッドアイゲスに着いた。
フランス語で“熱い”は“CHAUD”である。
山の中で“CHAUD”とくれば温泉に違いない。
思った通り、ショッドアイゲスは小さな湯治場だった。
小川に沿って細長く伸びる街並みの
真ん中あたりに広場があった。
道沿いの1軒の家がトンネルになっていて
そこをくぐると中庭みたいな広場に出る。
大きさは30メートル四方くらいだった。
真ん中が駐車場になっていたので、そこにクルマを停めた。
広場を見下ろすように
三色旗をはためかせた立派な郵便局が建っていた。
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広場に面した立派な郵便局。
反対側には土産物屋、パン屋
八百屋などがあり
郵便局の隣にはカフェバーがあった。
初夏の昼下がりの
時間の流れが止まったような
ひとときだった。
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下のほうには何軒かカフェバーがあった。
そのひとつの表に並んだ椅子に座り、コーヒーを注文した。
まったく英語は通じなかったが意志は通じた。
ゆっくりとコーヒーを飲んでから
向かい側にあるみやげもの屋で絵葉書を買った。
ここの郵便局から誰かに出そうと思ったのだ。
でも、住所は全部コンピュータの中にあるので
面倒になって、やめにした。
時計を見ると、午後3時をまわっている。
ヤバい。バルセロナまで、まだ400km以上ある。
クルマに乗ったボクは
それまでのペースがウソのように飛ばしだした。
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ショッドアイゲスからは
[D921]をEspalionまで行き
Lot川にかかる橋のたもとで
けしきに見とれた後
[D988]、[N88]、[A68]を通り
エアバス・インダストリーの本拠地
トゥールーズへ向かった。
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ロデス、アルビを通過し
トゥールーズからオートルートに乗った。
道端の標識には
[AUTOROUTE DES DEUX-MERS]と書かれている。
二つの海ってのは
大西洋と地中海を結ぶ道だからだろう。
右手に見えるのはピレネーの山々に違いない。
ここはもう、イベリア半島の付け根なのだ。
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