トリエステまで来ると
同じイタリアでも、建物の様式や自然の景観に変化がある。
ハプスブルク家の支配が及んだこの街には
オーストリア的特徴を備えた建築物が多い。
イタリアのようなくすんだ灰色ではなく、ベージュやカラシ色
ときにはペパーミントグリーンやピンクに塗られた建物が散在し
窓は大きくなり、アーチ形のものも見られるようになる。
街路はイタリアより広く、壁から突き出た看板は少ない。
その代り、大きなショウウィンドウからは
アコーデオンのようにテントが張り出している
道が広いのに、歩道上にカフェはほとんどなく
中庭や公園に面して設けられている。
在りし日のハプスブルク帝国に想いを馳せながら
アクセスするための電話を求めて駅を探していると、港に出た。
港の入り口に、規模は小さいが
シンメトリックでおごそかな広場を発見した。
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あとで写真を見ると
これはこれで
しっかりイタリア的だった。
イタリアを走りぬけて
ここまで来たときは
今まで見てきた街並みとは
おおいに雰囲気が違い
オーストリア的だと感じたのだが…。
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1辺を海岸通りに接した100×100メートルくらいの方形の広場には
海岸通りに面して2本のポールが立てられ
特大のイタリア国旗と
トリエステ市旗(だと思う)がはためいている。
日曜の昼下がりだからか、広場はひっそりと静まりかえっていた。
広場を取り囲む建物は
国旗がなければ
ウィーンのどこかの建物かと思うほどオーストリア的。
左手奥にカフェ、右手奥にホテルのレストランが
それぞれテラスを出している。
そろそろ昼食にしようと考えたボクは
真っ白のパラソルを並べたカフェのほうに向かった。
が、食べ物はチョコレートケーキしかなかった。
まあいい。ここんとこ毎日、いいものを食べすぎてたからなぁ…。
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墺・伊混合といった雰囲気の
広場に面したカフェテラス。
ケーキとコーヒーと
そして何より、注文の品を
ちっちゃなトレイに乗っけてくるのが
オーストリア的。
小さなボトルに入った
S.PELLEGRINOと
グラスにレモンを入れるのは
このうえなくイタリア的。
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ケーキを食べていると、急に
自動車進入禁止のはずの広場に何台ものクルマが入ってきて
一斉にクラクションを鳴らした。
驚いて振り返ると、正装した男女が集まっている。
広場の近くで行われていた結婚式が終わり
これから新婚旅行に出発するカップルを見送るようだ。
リボンで飾られたフィアット・クロマに乗ってきた新郎新婦は
ここでピカピカに磨かれた濃紺のメルセデス300Eに乗り換え
集まった人々に祝福されながら旅立って行った。
そうだ。この季節のヨーロッパは、結婚式のシーズンなのだった。
ジュン・ブライドも、この気候だったら爽やかでいい。
駅を探し当てたボクは、自動販売機でテレフォンカードを買い
公衆電話からアクセスを試みた。
1分ほどで切れるが、ホテルからのように
化け文字が画面を埋めつくすことはない。
業務連絡メールを落とし、返事をアップした。
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イタリアのテレフォンカード。
フランスのより薄く日本のより厚い。
左上隅にミシン目が入っており
ここを折り取らないと使えない。
これは、カードの向きを
わかりやすくするためで
イタリアにはこのテの
左上隅がカットされたカードが多い。
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何度つないでも、未読を落としているうちに
“NO CARRIER”になるので
溜まりつつある未読を読みたい気持ちをこらえ
途中で切り上げてクルマに乗った。
トリエステ湾を背にして坂道を登り
残り区間わずかのアウトストラーダに入ると
ほんの5kmほどで国境だ。
ま新しい標識に[SLOVENIE]の文字を見つけた。
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