ブリュッセルの環状線を抜けて
19時ちょうどにアールストで高速を降りた。
アールスト(Aalst)というのは
ベルギー北部に住むゲルマン系フラマン人の使用する
オランダ語とよく似たフラマン語の地名だ。
南部のワロン人が使用するワロン語(フランス語とほぼ同じ)では
Alostと表記される。
高速を降りてからは住所だけが頼りだ。
通りの名前の他に、チームが借りているガレージが
とある運送会社の倉庫内にあることがわかっていた。
どこかの売店で市街地図でも買えばいいのだが
高速の出口は町外れにあるらしく、商店など一軒もない。
通行人や道端に停まっているクルマのドライバーに聞きまくって
ようやく方角がわかった。高速の出口からそんなに遠くないらしい。
一度、前を通過して完全に町から出てしまい
あわてて引き返すというロスがあったため
高速を降りて30分もかかって
何とか運送会社の倉庫にたどり着いた。
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ウェリンから先も
引き続き[A4]を北に走ると
約100kmでブリュッセル。
市街地を取り巻く環状線に入り
ブルージュ方面に向かう
[A10]に乗り換える。
ブリュッセル〜アールスト間は
高速道路で約25km。
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間に合った! M嬢の所属するチームは
遠征前の最後の荷作りを終え
ガレージ内の片付けをしているところだった。
ボクとM嬢の約束など知るわけのない他のメンバーは
てっきりボクが取材に来たものだと思って歓迎してくれた。(^_^;
もちろん、表面的には取材を装うしかないわけで、(^_^;
実際にガレージの風景や出発の準備などをカメラに収め
選手に“こちらでの生活”についてインタビューしたりした。
チームの炊事係、兼、広報担当のM嬢は
すでにこの日の夕食が終わっていたこともあって
カタルーニャに着いて食材の仕入れをするまではとくに仕事はなく
みんなにコーヒーを配ったり自分の旅支度をしたりしていた。
ボクが到着したのがわかると
「せっかく来てもらったのに
急に今日出発すると決まったので…」と
彼女は申しわけなさそうにそう言うと
10×10×15cmくらいの紙包みを差し出した。
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包み紙に描かれた
レオニダスのマーク。
De vermaarde Belgische pralines
LEONIDAS
と、フラマン語で何やら書かれている。
住所は Jules Graindorlaan 43
1070 BRUSSEL とある。
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チョコレートだった。
地元では“ゴディバ”より美味しいと評判の“レオニダス”だ。
こういうのに弱いボクは、笑って許してあげることにした。
ま、元々彼女には何も悪いところはないのだが…。(^_^;
レース用のオートバイやパーツ
テントや生活道具を満載した2台のトラックに
それぞれ寝泊まりするためのキャラバンを連結し
長期レンタルのプジョー205を加えて
チームの出発準備は完了した。
日本人ばかり、総勢7名の大所帯だ。
これから2日がかりで、彼らはカタルーニャサーキットに向かう。
出発風景の写真を撮り、プジョーに乗り込んだ彼女の出発を見送ると
チームのボス・F氏に声をかけられた。
オランダGPにやってきたF氏は、カタルーニャには行かず
これからしばらく観光をして日本に帰るとのこと。
そのF氏に「いっしょに晩メシでもどお?」と言われて
“予定とはずいぶん違うなぁ…”と思いつつ
ボクはF氏の泊まるホテルに同行した。
アールストの街中、国鉄の駅の正面にそのホテルはあった。
1Fの中華料理屋を見て、悪い予感がした。
荷物を置きに部屋に行ったF氏は
2人の同行者を連れて戻ってきた。
その2人の顔を見た途端、思わず逃げ出そうかと思った。
2人とも、F氏とは別の、GPを走る日本人チームのボスだったのだ。
3人の酒豪が相手の食事だから
すすめられる酒を断るわけにもいかず
気がついたら、ボクは相当酔っぱらっていた。
4人とも完全にデキあがったところで、引率役のF氏が
「さて、そろそろ寝ますか
明日は朝からパリに買い物ですよ」と
ベロベロの残り2人を急かし
「じゃ、われわれはこれで…」と
3人揃って階上の部屋へと消えた。
路頭に迷うとはこのことだ。
とりあえず、駅前広場に違法駐車したままの
モンデオに乗り込んだボクは
そのままシートを倒し、酔いがさめるまで寝ることにした。
850km先のシャモニーが
まるで地球の裏側のように遠く感じられた。
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