最近、ネット上で知り合った“つるりん”さんがクランクケース内の強制減圧に興味を持たれ、 BBSやブログであれこれやりとりをしているうちに、 自分がXJ900に装着している“吸気負圧を利用した強制減圧システム”について、ちゃんと説明していなかったことに気がついた。 バイカーズステーション誌の2005年10月号に書いた簡単な説明とバル |
| ブハウジングや配管に関する記述だけでは、とてもこのシステムの全体像はおわかりいただけない。あの記事には、そもそも、どこからどうや って負圧を取り出しているのかが書かれていないし、クランクケース内の減圧システムの成功の鍵を握ると言っても過言ではない油気分離についても、ほとんど触れていない。 そこで、良い機会なので、私の強 |
| 制減圧システムの全体像を、1)吸入負圧をどこからどうやって取り出しているか、2)内圧の出口となるクランクケースブリーザーからのオイルミストの流出をどうやって低減しているか、3)負圧ホースとブリーザーホースの間に入れたバルブの詳細。これら3回にわけて書いてみたい。第1回の今回は、吸入負圧の取り出しについて…である。 | |
XJ900のルーツとなったXJ650のエンジンは、元々、クランクケース内の気流に留意して設計され、同時代のライバル車と比べると、弱めのエンジンブレーキと軽やかなエンジンの回りっぷりが特徴だった。 そのXJ650〜750系にY.I.C.S.(ヤマハ・インダクション・コントロール・システム)が採用されたのは、日本仕様ではXJ750Eが最初で、続いて650もY.I.C.S.を装着した。 Y.I.C.S.の概要は、吸気バルブ直前の吸気ポート壁面に開口する副吸気通路を設け、となりあった気筒の副吸気通路を連結することで、吸気バルブが開いている気筒に向かって吸気バルブが閉じている気筒から混合気を送り込もうというものだ。 当時の資料(残念ながらウェブ上には公開されていない)によると、 |
| 主吸気通路に対して副吸気通路の方向を傾けることにより、副吸気通路から勢いよく斜めに吹き出した気流によって燃焼室内に渦流を生じさせ燃焼効率を高めるのが狙い。燃費の改善に大きな効果があった。 上に書いたY.I.C.S.の副吸気通路の開口部は、吸気バルブの直前にある。この近辺の主吸気通路は元々内径が絞られているため、吸気の流速が高まり、副吸気通路には大きな負圧が生じていると想像できる。 おそらく、負圧の大きさだけを考えれば、エンジン回転の上昇とともに大きくなっているはずだ。にもかかわらず、Y.I.C.S.の効果が低中回転時の燃費改善に顕著に現われているのは、細く長い連通通路を介しているからで、高回転時には副吸気通路や連通通路内の混合気の移動が間 |
| に合わず、結果としてほとんど流れていないのではないだろうか。 それなら、時間差をともなって同じような圧力変化を繰り返している隣接気筒を連結するだけではなく、仮にこの経路のどこか一部を大気に開放してやれば、大きな圧力差により、常に吸入する方向に流れが生じるのではないだろうか…。 だとすれば、吸気管中の適当な箇所(例えばインシュレーター中央部にあるバキュームゲージ/負圧式燃料コック用のニップルなど)から負圧を導いた場合よりも、高回転時に得られる負圧は大きいのではないだろうか。そう考えて、Y.I.C.S.連通通路端から導いたホースをクランクケースブリーザーホースに連結し、途中に逆止弁を設けた強制減圧システムを作った。 >その2へ | |