エンジンを始動した数日後、私の中学時代の同級生であり、レースメカ時代の最初の担当ライダーでもあるFクンから電話があった。「できたぞ。取りに来いや」とのこと。 Fクンが作ってくれたのは、去年の7月4日のダイアリーでチラっとお見せしたファンネルの根元に嵌め込んで、エアフィルター内に突き刺さす円筒形のダクトである。 ファンネルそのものは、Fクンが務める某オートバイショップの社長がビューエルでレースに出場していたころに作ったさまざまなチューニングパーツのひとつで、専門家のFクンがNCマシニングセンターで削り出したワンオフパーツである。 この形を見て、一目で気に入ってしまった私は、少々オーバーサイズなのを承知で譲り受け、いったん持ち帰ってこれに嵌め込むダクトの寸法を決め、ヤフオクで見つけた秘密基地で買った A2017(17S)のφ80mmの丸棒とともにFクンに預けた。 まるでエンジン始動に合わせたようなタイミングで出来たダクトは、ファンネル基部に楽に嵌まるのに、逆さにしても抜け落ちない絶妙の寸法に仕上がっており、予定どおり、ファンネルより少々重かった。 Fクンに感謝しつつ、ファンネルとダクトを持ち帰った私は、ここに |
| きてようやく、これらのパーツをどうやってエアフィルターケースに取りつけるかを考え始めた(笑)。 工作技術や予算、工期などを無視して理想を追求するなら、一眼レフカメラのレンズのようなバヨネットマウントがいいなあ…。それも、キヤノンのFLや旧FDレンズみたいに、リングでがっちり締めつけるタイプがよさそう…と、夢は膨らむ。 しかし、そこまでする必要がないどころか、何もせず、ただ突き刺しただけでも、恐らく抜け出すことはないはずだ。ダクトの外径に合わせて拡大したフィルターの穴がぴったりなのと、軟質材のフィルター側板がダクトを包み込むようにしっかりホールドしてくれるからである。 おまけに、通常は吸い込む方向に力がかかるし、バックファイアを生じたときにフィルターを後方に押し出す力がかかる可能性はあっても、ダクトを外向きに押し出す力がかかるとは考えにくい。 そんなわけで、ファンネルとダクトのマウントは、ほとんど気休めにすぎない、飾りのような物で充分だという気がしてきた。 そこで、飾りなら飾りと割り切って、しっかり押さえることよりも、メカニズムとしてのおもしろさと見た目のユニークさを優先して設計し |
| た。…と言っても、設計図があるわけではない。テキトーなチャンネルを2種類とアングルを1種類、端材入れの箱から出してきて、重ねたり並べたりしているうちにだいたいの構成が決まり、あとは膝上工房による得意の現物合わせ(見た目で手加減)でやっつけただけである。 少々こだわったのは、アルミのチ ャンネルまたはアングルから切り出した3ピースのうち、アングルで作 った“押さえ”の形状。ピカチュウの耳みたいに左右に振り分けた(真ん中を切り欠いた)のには、それなりの理由がある。ベタ当たりだと、結局、面の中の1箇所しか当たらない可能性が高いのに対し、両端当たりにすれば両方とも当たり、ガタが小さくなりそうな気がしたからだ。 ともかく、こうして無事に“飾り物”は完成し、ファンネルを取りつけて眺めてみると、やはりデカい! それに、この、いかにも走りそうな形状! そもそも形が気に入って譲り受けたのだから、あとはこれを生かすべくセッティングを詰めたい。 本来セッティングパーツであるフ ァンネルを交換せず、他をそれに合わせるなど本末転倒なのは承知のうえ。いかにも“走りそう”と感じた直観を大切にするのも、趣味のバイクいじりだから許されよう。 |