XJ900の爽快チューン
2011年10月8〜10日 - クラッチ/フリクションプレートを交換し、夜会と“ゆるゆる”ツーリングに   
     
YZF750SPのクラッチボス。品番はOW01やFZR1000と共通の2GH-16371-00で、インボリュートスプラインで勘合する。こちらはXJ900のSTDクラッチボス、58L-16371-01。角スプラインでジャダースプリング装着用の加工が施されたタイプ。
 YZF750SPのクラッチをネットオークションで落札したことは 9月28日
のダイアリーに書いた。で、そこから、まずはクラッチハブを移植することで、クラッチプレート/フリクションプレートを、XJ900よりも1枚ずつ多い8/9枚にできるようにしたうえで、クラッチプレート/フリクションプレートも全部、YZF750SPの物に交換しようと考えていた。
 もてぎから帰ってきて、まず手をつけたのは、クラッチプレートとフリクションプレートのファインチュ
ーニングだった。どちらのプレートも、新品装着後ほとんど走行していないのではないかと思うほど程度がよいので、摩擦面には何もせず、軸方向への動きやすさを狙った突起部摺動面の平滑化だけに注力した。

 クラッチプレートはクラッチボスの溝(グルーブ)に嵌まる突起の側面、フリクションプレートはクラッチハウジングの溝(スロット)に嵌まる突起の側面が、それぞれ、クラ
ッチ断続操作時の摺動面であり、クラッチハウジング(プライマリードリブンギア)〜クラッチボス(ミッション)の間の力のやりとりは、このわずかな面積(数は多いが)の接触面を介して行われている。
 こうした、面と面が接触し、摺動する箇所では、両方の面が平らであるのはもちろん、摩耗や傾きが生じたときに、点(または線)当たりになって応力が集中しないよう、面の縁の角には面取りを施すのがファインチューニングの第一歩である。例えば直押し式の動弁機構でカム山の

縁に面取りをするのも同じ理由による。もちろん、 私のXJ900のカムシ
ャフトは、これを実施済みである。
 交換予定のパーツに手を加える今回は、少々作業が長引いても、いつでもバイクに乗れるとあって、時間を気にせず、これまで以上に念入りに、良かれと思えることをすべてや
った。このダイアリーは整備教室じ
ゃないので(笑)、どこをどうしたといった細かな話は、いずれどこかでマニュアルふうにまとめてみたい。
 1日当たり30分程度の作業を繰り返して、数日がかりで8枚のクラッチプレートと9枚のフリクションプレートを仕上げ、さ〜て、いよいよ交換…と、 慣れた手つきでXJ900のクラッチをバラしたところで、とんでもない間違いに気がついた。
スクレッパーで摺動面の縁の角に面取りをする。シャーリング(打ち抜き)で製造されているから、角張った片面だけでOK。
フリクションプレート/クラッチプレートとも、形状と厚さは同じながら、表面に違いのあるYZF750SP用(左)とXJ900用。
フリクションプレートは、突起部の側面の3辺の角に面取りをした後、摺動面に軽くサンドスポンジ?を当て、平しておいた。
 取りつける予定のYZF750SPのクラ
ッチボスがインボリュートスプラインなのに、 出てきたXJ900のクラッチボスは昔ながらの角スプラインだ
った。ぎゃはは。笑いごとだ(笑)。YZF750SPのクラッチボスの各部の寸法を測定して“使える”と判断したとき、スプラインの形式が違うなどとは考えもしなかった。は〜、せっかく使えると思ったのに…。
 ダメなものはしょうがないので、これからどうすべきかを考えた。最善の策は、ミッションをXJ900S(デ
ィバージョン)の物(インボリュートスプライン)に入れ替えたうえでYZF750SPのクラッチボスを使うという、クランクケースの分割が必要な大仕事。次善の策は、 XJ900のクラ
ッチボスを加工し、フランジ部の形

状をYZF750SPと同じにすることだ。
 9月18日の写真のように ジャダースプリングの入る溝を持った XJ900用クラッチボスのフランジを、 9月28日の写真のYZF750SP用クラッチボスのフランジのように、平らに、同じ厚さになるまで削るだけだから、極めて簡単な旋盤仕事で済む。
 ディバージョンのミッションへの交換は次回のエンジンオーバーホールまで取っといて、今回は次善の策でやってみよう…。そう決めて、正確な仕上がり寸法を計算した。
 ところが、夜会の当日、所用を終えて電車で帰宅したら、クルマが2台とも出払っていて、バイクで夜会会場まで行かなければならなくなった。そこで、クラッチボスの加工はあとまわしにして、XJ900のSTDから

ジャダースプリングを外した(9月18日)クラッチボスに、YZF750SPのクラッチプレートを7枚とフリクションプレートを8枚組み込み、とりあえず夜会に行けるようにした。
 ここで、最近のクラッチ関係の仕様の変化を整理しておくと…
 9月18日以前:パーツはすべてSTDだが、 クラッチスプリングに1.5mm厚のワッシャをかませ、プリロードを増加させていた。
 9月18日〜10月7日: ジャダースプリングを撤去した以外はXJ900のSTDパーツの組み合わせ。プリロードは9月18日以前と同じ。
 10月8日以後: 他は上記仕様のまま、クラッチプレートとフリクションプレートをYZF750SPの物に交換。枚数はXJ900のSTDと同じ7/8枚。
10月8日の夜会に突然現われた薬師丸さんのRZ250R。興味深い改造が多く、昼間に観察/試乗したいマシンである。リアまわりは3MA(後方排気TZR250)のスイングアームと3XV(VツインTZR250)のホイールの組み合わせだった。
…というふうになり、図らずも、ジ
ャダースプリングの有無〜プレートの違い(枚数は同じ)…と、順を追
ってテストすることができた。
 で、ジャダースプリングの撤去による変化は、 9月28日に“操作感にわずかな差があるものの、慣れれば気にならず、他に弊害はない”と書いているのに、まだ慣れていないせいか、シフト操作をするたびにジャダースプリングの撤去を思い出す。
 走り込めば走り込むほど、操作感の差は“わずか”と言えるものではなく、むしろ“大きい”ことがわか
ってきた。ひとことで言うとシフトタッチに曖昧さがなくなり、カチッとした足応えになったのである。
 ミッションやシフターを何もいじ
っていないにもかかわらず、おまけ

にノークラシフトアップを常用しているにもかかわらず、である。
 ノークラシフトだからといってクラッチは何も仕事をしていないわけではなく、ジャダースプリングの働きによって微妙な滑りが生じ、シフト操作力のピーク値を低減する代わりにタッチを曖昧にする効果をもたらしていたのかもしれない。
 以前の“ぬるっ”と現在の“カチ
ッ”の二者択一なら“カチッ”のほうが好みだが、どこかをどうにかして中間のフィーリングにできるのなら“カチッ”を2/3“ぬるっ”を1/3混ぜたあたりが自分の好みにベストマッチするような気がする。
 しかし、ノークラシフトアップ時の操作開始〜完了間の時間は確実に短縮されているから、スポーティな

走りにはジャダースプリングなしのほうが適しているのは間違いない。
 シフトタッチの他にもうひとつ、ジャダースプリング撤去によって変化したのは、シフトダウン時にクラ
ッチを切っている時間が短くなったことだ。いや、それよりも“今までと同じタイミングで繋いだのでは遅すぎる”と言ったほうが正確か。
 なぜそういう変化が生じたのかはまだ理解できていない。切れはじめてから完全に切れるまでの時間と、つながりはじめてから完全につながるまでの時間が短くなったからかもしれない。アッシュのエンジンオイルを使いはじめたころ、同じようなことを感じたから、完全に切れた状態になるのが早かったり、半クラ状態での摩擦が小さくなっていたり、
10月10日の“ゆるゆるツーリング”に参加したokakenさんのBMW R100CS。点火&発電系電装を一新したばかり。R100系のシート下の空間の大きさは、いつ見てもうらやましい。大きなトレイの前寄りに端子台を脱着容易に設置。
いずれにしても、完全につながっていない状態では滑りやすくなっているのではないかと想像している。
 とにかく、シフトダウン時の操作は忙しくなった。今までだと、クラ
ッチを切ると同時にスロットルをあおって一瞬エンジン回転を上げ、シフト操作をしたあと、回転が下がってきたところを見はからってクラッチをつなげはよかったのに、それでは全然間に合わない。左手の動きだけで言えば、握ってすぐ(間を置かず)放すくらいでちょうどいい。
 これもまた、シフトダウンの操作開始〜完了間の時間が短縮されているから、スポーティな走りに適した変化である。ただ、のんびり走っているときでも、シフトダウン時の左手には忙しい動作が要求されるから

ちょっとなぁ…である(笑)。
 ところが、ジャダースプリングの撤去に続き、クラッチプレート/フリクションプレートをYZF750SPの物(3J2-16324-00/4FN-16321-00)に交換したところ、思いがけない変化が体感できた。ジャダースプリングなしの特徴はそのままに、半クラのフィーリングが良くなったのだ。
 以前と比べて、クラッチレバーのストロークも握っている時間も短いのに、クラッチの滑り/つながり具合が把握しやすく、クラッチレバーの短いストロークの中に情報がいっぱい詰まった感じなのである。
 ずっと前に、それまで使っていたブレンボのラジアルマスターを、今使っているベルリンガーのラジアルマスターに替えたときに感じたのと

似ている。微小なストローク/わずかな力の変化でクラッチの滑り具合をコントロール(する気になれば、または必要があれば)できそうだ。
 そして、これこそ3J2+4FNのプレ
ートの組み合わせの最大のメリットと思えるのは、コントロールなどしようとせず、ただ投げやりに(笑)クラッチレバーを放したとしても、極めてスムーズにつながることだ。
 正直言って、クラッチがこんなに奥深い(遊べる)ものだとは思っていなかった。ここまであれこれ試したのだから、クラッチハブを削ってプレートを増やす前に、ジャダースプリングありの状態でYZF750SPのプレート(3J2+4FN)を試したくなってきた。おもしろいから、しばらく続きそうな予感がする(笑)。


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