全日本の開幕戦で行った、デジタルカメラのテスト顛末記
(ライディングスポーツ 96年6月号)

                       
 全日本の開幕戦の取材に鈴鹿へ行ってきた。取材
の他に、デジタルカメラのテストという大きな目的
があったからだ。デジタルカメラとはいっても、売
り出し中の普及機ではない。現状では最高峰に位置
するキャノンEOS・DCS1というスゴいヤツで
ある。どこがスゴいかというと、普及機が20〜30万
画素なのに対して600万画素という圧倒的な解像
度の高さを誇り、しかも性能には定評のあるキャノ
ンEFレンズ群が使える点だ。         
 600万画素といってもピンとこない(ピントが
こないのではないからご安心を>石田さん)が、コ
ンピューターのモニターはもちろん、プリンターの
解像度を軽く上回り、通常の雑誌のカラーページの
印刷解像度をさえ超えるレベルである。つまり、撮
った写真を実際に製版して印刷しない限り、解像度
の高さはわからないのだ。           
 というわけで、このテストでのボクの役目は、カ
メラから画像データを取り出してコンピューターに
保存するのがメイン。もし可能なら、それらの画像
を加工したり、電話回線で送信するテストもしてみ
ようということになった。           
 撮影は、本誌GPページでおなじみの石田二郎カ
メラマン。EOS・DCS1を引っ提げての鈴鹿入
りだ。失礼ながら石田さんといえば、デジタルやコ
ンピューターという言葉が最も似合わない雰囲気の
人だ。その彼が500ミリの望遠レンズをつけたデ
ジタルカメラで撮りはじめたからたまらない。  
 コースサイドやピットまわりで撮影してはプレス
ルームに戻ってカメラをコンピューターに接続し、
EOS・DCS1に内蔵された170メガバイトの
カード型ハードディスクから東芝BREZZAのハ
ードディスクにデータを転送する作業は、居合わせ
たカメラマンの注目の的だった。        
 が、残念ながら、60万画素の画像データを収め
たTIFF形式のファイルのあまりの大きさ(1カ
ットあたり18メガバイト!)のため、電話回線を用
いての送信実験は中止せざるを得なかった。毎秒2
万8800ビットのモデムを使い、電話回線の状態
が理想的だったとしても、1カットの画像データを
送るのに1時間以上かかりそうだからだ。ネットワ
ーク上に18メガバイト×カット数ぶんのデータを保
存できるスペースがないのも問題だった。    
 後日、石田さんが持ち帰ったEOS・DCS1の
内蔵ハードディスクから画像データを抜き取り、そ
れを元にトッパン印刷で製版・印刷したものを見せ
てもらった。1ページ大や見開き(2ページ)大に
伸ばしたものを見ても、デジタルゆえの問題点は見
当たらなかった。               
 このテストの後、さっそくBREZZAに改造を
施した。メモリーを40メガバイトに増設し、1・6
ギガバイトの内蔵ハードディスクを追加したのだ。
次回はぜひ、このマシンを使って、画素数を少なく
したり、データの圧縮が効くJPEG形式のファイ
ルに変換して、送信を含めてテストをしたい。雑誌
の原稿としてのクオリティーに問題がなく、送信時
間が現実的な長さであれば、電話のあるところだっ
たら世界中どこからでも、撮影後最短30分程度で、
誌面に使える写真が送れるからだ。       
 PC専門誌じゃないので詳しくは書かないが、今
回のテストを通じてもう一つ確認できたのは、本物
のDOS/Vマシンの互換性の高さだった。前夜に
SCSIボードを買い、とりあえず本体内部に取り
付けただけで鈴鹿入りしたにもかかわらず、電源を
入れただけで使えたり、3万円台で売っているE−
IDEタイプのハードディスクが、同じく、取り付
けて電源を入れるだけで使える状態になったのだ。
 話は戻って、デジタルカメラとPCを使った写真
の電送。少なくとも今シーズン中には1回くらい、
世界GPの現場からやってみたいと思っている。石
田さん、キャノンさん、トッパンさん、よろしくお
願いします。                 
                       


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