XJ900の爽快チューン
2009年3月17日 - フロントフォークセッティング(その3)乗車1Gの姿勢を合わせ、単バネを試す
     
 XJ900のSTDスプリング(フロントフォーク沈下量換算75mmまでは0.49
kg/mm、その後は1.08kg/mmの2段レ
ート)と レーステックの0.78kg/mmの2本の荷重とたわみ量の関係を作図したのが右のグラフである。
 青線で示したXJ900のSTDスプリングには61mmのプリロードがかかっているから、フォークが伸びきった状態での荷重は30kgとなり、青線はそこからスタートし、ピッチの細かい部分が密着する75mm(スプリングの総たわみ量は 75+61=136mm)までの間は、荷重が0.49kg増えるごとに沈下量が1mm増加していく。
 その途中の45mmが乗車1Gの沈下量で、このときの荷重は(45+61)×
0.49=51.9kgである。レーステックの0.78kg/mmを使って、 同じ乗車1Gの沈下量を得る(乗車1Gでのマシンの姿勢を同じにする)ために、先に求めた51.9kgの荷重に釣り合うたわみ量を51.9÷0.78=66.5mmと計算。フロントフォークが45mm縮んだときに、その中のスプリングの総たわみ量を66.5mmにするためのプリロードは66.5−45=21.5mmと求めた。
 21.5mmのプリロードをかけるためのカラーは、トップキャップを外してスプリングを抜いた状態のフロントフォークにメジャーを突っ込み、インナーチューブ上端〜フォークシリンダー上端(スプリング接触面)間の距離を測定し、その値からスプリングの自由長を引き、プリロード(21.5mm)を足した寸法にした。
 グラフを見ると、乗車1Gで交差する2本の線は、沈下量102〜103mmあたりでもう一度交差している。これを見て安心した。2本の線が交差せずにどんどん離れていくようだと、荷重と姿勢の関係が現状とは大きく隔たってしまい、今回レーステックの 0.78kg/mmを試す目的である“とくに不満のない純正の2段レートスプリングの代わりに使えるか”の評価ができなくなってしまう。

縦軸が荷重、横軸がフロントフォーク沈下量。青線がXJ900のSTD、赤線がレーステックの荷重とたわみ量の関係を示す。
 沈下量102〜103mmあたりで交差したあとは、純正のほうが高荷重設定ではあるが、このあたりから先はエアばねのレートが急上昇する領域だから、グラフに見える程度の差は、油面の上下によるエアボリュームの調整で充分にカバーできるはず。とりあえず、STDの168mmよりも18mm高い150mmにしてテストを開始した。
 第一印象は“ほとんど変化なし”だった。乗車1Gの姿勢が同じになるようにしたのだから、この結果には満足した。続いて、ブレーキがよく効くような気がした。さらに、乗り心地の悪化は体感できず、スロ
ットルを戻したときは以前よりもフロントまわりが高く、開けたときは低くなっていることが判明した。
 コーナー入り口でのマシンの状態がどうであれ、倒し込んでしまえば一様に、以前よりもやや強めの内向性と、以前よりかなり高めの接地感を感じさせながら旋回していく。
 旋回中のスロットル開閉やブレーキングによる変化は、リーンアングル/舵角とも、以前より小さめ。以前は、立ち上がりでスロットルを開けながら、わずかに体重を外にズラ

せば自然にRが大きくなるとともにマシンが起きてアウトに向かい、内にズラせばリーンアングルはそのままに旋回力が高まったのに、今度のは良くも悪くも、旋回半径/リーンアングルとも変化しにくい感じだ。
 体感的な違いが最も大きかったのは切り返しで、以前よりはるかに小さな入力/短い時間で行える。
 重箱の隅に首を突っ込めば、こういった違いがあるとはいえ、自分の体内のフロントフォークセンサーの感度が低いときに、黙って交換されていたら“何かちょっと、いつもと違うけど、何だろう…?”といったレベルの差でしかないとも言える。
 だが、 この状態で200km、油面を20mm下げて 200km走り回ってみて、何だか面白くなかったのも事実。エンジンは相変わらず絶好調で、リアサスの動きも過去最高、しかも絶好のバイク日和にもかかわらず、去年の 5月3日6月10日のような“乗ることで心身が癒される感じ”が得られなかったのだ。そこで、今後の煮詰めの方向を見出すために、もう一度STDスプリングに戻し、 その良さを体感/分析することにした。


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