XJ900の爽快チューン
2011年8月1日 - 0.49-1.08kgf/mmのフォークスプリングを6周カットし、0.55-1.08に   
     
6周カットの後、サンダーで端面の整形を終えたフォークスプリングと、切り落とした部分、そしてプリロード調整用のカラーなど。
嫌いなサンダーをなるべく使わずに済まそうと、切断には金ノコを使用。やはりこれも、足で踏むのが最良の固定方法だと思う。
落とし込み仕様に使っていた小径(左)と、今回のスプリング短縮によって使えるようになった大径のカートリッジエミュレーター。
 私は2段バネが好きである。最大の理由は、ゆったり走っているときのマシンの挙動がわかりやすいからだ。トップギアで40〜50km/hの走行中などにスロットルを戻したとき、フロントフォークが“すっ”と縮んで、元の微小開度まで開けたときには“すっ”と伸びる。このときの伸び縮みの量が小さすぎると体感しにくく、姿勢変化をきっかけにしたブレーキングやコーナリングなどのアクションを起こしにくい。
 荷重変化に伴う伸び縮みの量はバネレートで決まる。下の図からも明らかなように、荷重変化の幅が同じ場合、バネレートが低いスプリングのほうが“たわみ量”の変化(ショ
ックの伸縮)が大きいからである。

 ところが、レートの低いスプリングでは、強いブレーキングなどで荷重が高くなると、容易に底突きしてしまう。底突きというのは、たわみ量が大きすぎてストロークを使い切
った状態ということができる。
 かといって、底突き防止を狙ってプリロードを大きくすると、低荷重時に伸び切りが生じやすくなり、路面追従性や乗り心地の悪化を招く。
 そこで、低荷重時にはバネレートが低く、高荷重時にはバネレートが高くなる、いわゆる“2段バネ”を使えば、下の図のように、ストロークが小さい(沈下が浅い)領域での荷重対ストロークの関係を変えることなく底突きを回避できる。
 こうした2段バネの特性とレート

計算の方法については 2009年3月12日のダイアリー、XJ900のSTDの2段バネについての実測値と単バネとの比較については 2009年3月17日18日のダイアリーに詳しく書いているので、ご覧いただきたい。
 さて、その気に入った2段バネではあるが、今回の大改造後の車重配分や乗り方の変化により、ヘタったSTDスプリングを新品のSTDスプリングに交換したにもかかわらず、1段目のレートを少々高めたくなった。
 前輪分布荷重が増えたせいか、あるいはスライドメタルを新品にして摺動抵抗が減ったせいか、大改造後は以前よりも走行1G付近でのフォ
ークの動きが大きく・速くなっている。キャブセッティングの変更によ
同じ荷重変化(2本の黒線の間)に対する“たわみ量”の変化は、レートが低いほうが大きく、レートが高いほうが小さい。途中からバネレートが高まる2段スプリングを使えば、限られたフォークストロークの範囲内で底突きを回避することができる。
り、スロットルの開閉に伴う車速変化の立ち上がりが緩やかになっているにもかかわらず…である。
 同じ荷重変化(変化前と変化後の荷重の差)に対する“たわみ量”の差が大きいということは、変化に要する時間が同じだとすると、ストロ
ーク速度が高くなるということだ。
 ストローク速度が高くなれば、当然、慣性力も大きくなる。ここでいう慣性力とは、フロントフォークが縮むとき、前輪の上に車体がのしかかってくる力…とイメージできる。
 で、先に書いた荷重の増加と摺動抵抗の低減に、ストローク速度の上昇による慣性力の増大が加わって、2段目に1.08kgf/mmという高いレートを持たせたスプリングとは思えな

いほど、ノーズダイブしやすい状態になっていたものと思われる。
 これを解消する方法は、いくつか考えられる。1段目、2段目、あるいは両方のバネレートを高める、
ォークオイル油面を高めてエアバネを含めた総合バネレートを高める
、圧側ダンピングを強くしてストローク速度を抑制する…などである。
 これらの中で、走行1G付近のストローク速度抑制に効果的なのは、1段目のバネレートの強化である。
 そこまでは、今回の大改造が終わ
って走り始めたころから、漠然と考えていた。ただ、1段目のバネレートを高めるといっても、具体的にどうすべきかは決めかねていた。
 そこへヒントをくれた…というよ

り、いきなり解決策を提示してくれたのが、7月8日にウチにやってきた
インターバルの今井さんだった。
 1段目のバネレートだけ高めるためには、フォークスプリングの、ピ
ッチの細かい側を何周か切り捨てるのがよい。今井さんが教えてくれたのは、その具体的な切り方と、切ったあとの端面の仕上げ方である。
 座巻きを作るためには線材(バネ鋼)を曲げなければならず、そのためには火を入れなければならない…と杓子定規に考えていた私に対し、彼は、とりあえずやってみるだけなら、切り口が巻きの中心線に対して垂直な面になるようにするだけで充分で、このスプリングなら、ピッチが細かく、半周以上を座面にできる
フォークシリンダー(ダンパーロッド)頂部の穴を左のように拡大し、従来はカートリッジエミュレーターを落とし込んでいた。STDスプリングはカラーなしで使われており、そのままではプリロード過多になるので、エミュレーターを落とし込んでいた。今回のスプリング短縮により、フォークシリンダーとスプリングの間にカートリッジエミュレーターを挟み込んで使えるようになった。
から、そのまま使い続けても大丈夫でしょう…と言うのだ。切断用のサンダーで切った後、研磨用のサンダ
ーで仕上げればよい…とのこと。
 今井さんのアドバイスによって迷いが吹っ切れた私は、さっそく、何周カットすればバネレートがいくつになるかを計算した。途中経過は省略するが、ほぼ、1周カットするごとに0.01kgf/mmずつレートが高まることが判明。きりのいいところで6周カットの0.55kgf/mmから試してみることにして、まずは、捨てずに残していた古いほうのスプリングを使
って施工〜装着〜試走をした。
 6周カットしたスプリングを用いて、乗車1Gにおける車高(沈下量
=サグ)を以前と同じに保つために

は、計算で求めた長さのカラーを入れなければならない。そしてその長さは、うまい具合に、大きいほうのカートリッジエミュレーターの本体の高さ以上になることがわかった。
 そうとわかれば、これを機会に、小さいほうのカートリッジエミュレ
ーターをフォークシリンダー頂部に落とし込むのをやめ、大きいほうのカートリッジエミュレーターをフォ
ークシリンダー上端面とスプリング下端面の間に挟んで装着する(これが本来の使い方)のがよさそうだ。
 圧側ダンピング調整は、勘を頼りにオリフィス径×個数とリリーフバルブスプリングのレートとプリロードを決め、大きすぎるオリフィスをハンダで埋め、別の箇所に2個のオ

リフィスを加工してセットした。
 ここまでやったあとの試走では、信じられないことが起った。何の変化も感じられないのである。フロントフォークの突き出しを1mm変えただけでも体感できるし、フォークスプリングを新品に変えたときも違いがわかった。それなのに何も違いがわからないというのは、ひょっとすると、0.49から0.55kgf/mmに高めたつもりだった増加分と同じだけ、ヘタリによってバネレートが低くなっていたのかもしれない。
 …というわけで、この先、新しいほうのスプリングを同じく6周カットして試すか、古いほうのスプリングをさらに切り増してみるか、しばらく悩んでから決断を下したい。


<  ひとつ前 ・ 目次 ・ 最新 ・ ひとつ先  >
 
ARCHIVESARCHIVES TUNINGTUNING DATABASEDATABASE HOMEHOME Network RESOURCENetwork RESOURCE    DIARY